外部への報告を目的とするため、ほぼすべての企業が様々な法律の規定にそって実施する財務会計とは違い、経営層などが自社の経営管理指標として行う社内向けの会計「管理会計」。本来、組織の未来を担う重要な指標として数字をもとにした戦略立案に割くべき時間が、実態は数字を集める〜まとめる作業に現場は膨大な時間を割いていると、今回取材をした起業家山本氏は話す。企業によってもやり方が違う管理会計の”効率化”と”標準化”を目指す、予実管理クラウド「DIGGLE」についてお話を伺いました。
プロフィール(DIGGLE株式会社 代表取締役 山本清貴氏)
早稲田大学ファイナンス研究科を修了。10年間以上にわたり米系ERPベンダーにて、会計・CRM・SCMなど業務系アプリケーションのセールスに従事。その後、デジタルマーケティングスタートアップにてセールスを率い、予実管理に苦しむ。その経験からDIGGLEを創業。
DIGGLE株式会社について
ー 事業内容について、教えて下さい。
経営管理プラットフォームの「DIGGLE(ディグル)」の企画・開発・運営をしています。
ー 経営管理プラットフォームの「DIGGLE(以下、ディグル)」とは、どんなサービスなのでしょうか?
ディグルは、経営管理フローの最適化と経営情報の一元化により、業務効率化と組織間のコラボレーションを促進し、迅速で質の高い意思決定を支援する経営管理プラットフォームです。経営管理業務における、予算策定・予実突合・見込管理・レポートといった工程をサービス上で一気通貫で行うことで、予実ギャップの要因把握・アクションの早期化と業績の着地予測精度の向上を実現します。
・経営データの一元化
・組織間のコラボレーション
これらの価値を一つのサービス内で提供する、経営管理プラットフォームがディグルとなっています。
ー 従来これまでの経営管理業務では、どの様にしてそれらの情報を収集〜集計されていたのでしょう?
多くの企業では、現在でもExcelやスプレッドシートなどの表計算ツールを使っていることがほとんどです。ただ、数字を集計する作業が膨大であることに加え、その過程で多くの人の手を介することもあり、最終的な数字が合わないといったミスが発生したり、そもそもそのミスに(集計過程で)気がつけないといったことも多々あります。
事実、私たちのサービスを導入する過程で既存で使っているExcelを確認させて貰うと、ほぼ100%何かしらのミスがあります。
ー なるほど、数字を集めるという段階でもそんなことが起きているんですね。
はい。またそれ以外にも、従来のやり方で経営の意思決定を遅くしてしまっている要因は、その”スピード”にあります。
ー それは、どういうことでしょう?
月次の決算が締まるのに、どんなに早い会社でも3営業日、一般的に6〜8営業日かかると言われています。そこから予測の数値を入力し、予実表を完成させる必要があります。その数字を元にした次の打ち手を考えるとなると、ゆうに二週間を費やしてしまい、それだけでも既に翌月の後半に差しかかっているのが現状です。
また、経営企画部のメンバーの方々もこういった数字を集計する作業に時間を取られ、本質的な未来を決める打ち手の立案や検討に満足な時間をかけられていないといった課題も出てきています。会社の戦略を定め、その進捗を把握し、翌月以降の方向性を決める組織に属するメンバーの方々の能力を、自動化が可能な作業に、多くの企業が充ててしまっていること自体も経営における損失なのではないかとも感じます。
ディグルでは、これまで無駄に発生してしまっていた時間を大幅にカットし、経営における意思決定の”質”を向上させる役割をプラットフォームとして提供しています。導入頂いた企業からは「2日かかっていた作業が30分に短縮された」「集計作業が自動化され、メンテナンスコスト等がなくなったことで、人件費1人分程度のコスト削減ができた」といった意見から、『経営の意思決定やPDCAが短期で回せる様になった』や『期中でも攻めの意思決定がスピーディーに行える様になった』などの経営に対する、ポジティブなインパクトが残せているコメントを多数頂いています。
集計作業におよそ10日、本質に向きにくい業務の構造的な課題を山本氏に聞く!
ー 経営の意思決定を行う前段階で、その様なことが起きていたことを知りませんでした!経営管理フローの中で、そういった本質に向かない業務のジレンマが起こる構造の問題を山本さんはどう捉えているのでしょうか?
企業規模が大きくなればなるほど集計作業に時間がかかってしまうことに加え、管理会計は、財務会計と違いレギュレーションやルールが個社ごとにも違う為、そこをシステム化することの難しさが結局人的作業に頼ることになってしまっているという風に私は捉えています。
ですが、昔は「個社ごとに違う営業戦略をクラウド化するなんて無理だ」と言われていた営業に関するデータがSFAツールに集約されたり、今では大手の企業も財務会計をクラウド化していたりといった変化が起きている中で、この管理会計に関する情報もディグルの様なサービスを使って、効率化と統一化を図る流れが必ず起きるとも感じています。
ー 確かに、そうですね!この経営管理領域のSaaSをこれまであまり聞かなかった理由についてはどうでしょうか?
補足をさせて頂くと、私たちのサービスがローンチする前から、実は管理会計のシステム自体は存在していました。ただし、その当時主役であった外資系のシステム会社のソフトウェアは、個社ごとにカスタマイズする必要があった為、多くの企業が簡単に導入できる費用感にはなっていませんでした。
後は、流れ的には全ての企業に法律上、義務付けられている財務会計の効率化とクラウド化が普及するのが先だと思いますので、その普及が一般的になった今、この管理会計領域にもようやくSaaSの日の目が当たってきたといったところでしょうか。
ー なるほど!どちらも納得です。
起業する気もない外資系サラリーマンから一転。予実管理実務に触れ、DIGGLE起業へ
ー 起業することの意識は、いつ頃から持っていたのでしょう?
起業をしたのは43歳の時でしたが、それまで私は外資系のIT営業の世界に長くおり、起業をすること自体、全く考えていませんでした。
ー きっかけとなったのは、何だったのでしょうか?
サービスが生まれた経緯ともリンクする話ですが、起業をする直前の会社で動画系のスタートアップに営業マネージャーとしてジョインをしています。そこで予算策定をはじめとする予実管理実務を初めて経験するのですが、そこで現在経営管理に関わる多くの方々が経験をする、大量のExcelと日々向き合うという実務的な煩雑さを目の当たりにします。週次での予実報告のための作業に追われる日々がはじまり、営業マネージャーなのに営業に出れなくなっていたんですね。当時あまりに手間だったので、手軽に使える予実管理ツールを探していても使いたいと思えるサービスが見つからず、この領域に関するクラウド化の遅れを感じました。
元々、営業として販売していた領域であっても、営業当時は自分自身がこの領域に対するペインを深く理解しておらず、その時はピンときていませんでしたが、実務を経験することでこの領域に対する課題の深さを実感しました。それで(この領域なら勝負が出来るかも・・)と思い、会社を起業をしました。
ー なるほど。
それと、もう一つ起業の後押しとなったのはCTO 水上との出会いもありましたね。水上と私は、前職が一緒で年齢も20歳くらい離れており、当時の会社内でいえば、おじさん営業と若手エンジニアという立場です(笑)私自身、見つけた課題の深さは理解が出来ても、営業出身の人間なので、それをどうシステムとして実現するのかは全くイメージが出来ておらず、それを水上に相談をしました。「自分なら半年あればプロトタイプがつくれます」と言ってくれたのが印象に残っています。頼れるエンジニアの存在も起業をするにあたり、大きく背中を押してくれた要因になりました。
今後について
ー 中長期的な展開についてお教え下さい。
直近では、予算の申請から承認までをシステム上で完結させる機能などの実装も控えており、経営データの一元化と組織を横断したコラボレーションの実現を可能にする機能を順次拡張していきたいと考えています。
少し概念的な話もありますが、私たちはプロダクトビジョンに【組織の距離を縮め、企業の未来の質を上げる。】というビジョンを掲げています。このビジョンに基づく、未来をここ3年くらいで実現したいと考えていますが、従来ディグルの様なツールは、”経営企画の為の効率化ツール”として見られています。しかし、我々が本当に目指しているのは、“全社を巻き込んで予実管理体制を構築するプラットフォーム” です。更に長期的には、管理会計というルールのない業務のプロセスの標準化にも、これからディグルに集まる膨大な企業のデータを元に着手していきたいと考えています。
ー 最後に、記事内でお伝えしたい事項もあればお願いします。
エンジニア、経営コンサルタント、PMM、マーケティング、プリセールスなど多方面での採用を絶賛強化中です!社内には、元々経営企画部出身でこの課題に共感を抱いてくれてジョインしてくれたメンバーなど様々なバックグランドを持つメンバーが集まってくれています。私たちが闘う、この予実管理領域クラウドの市場はまだまだ黎明期の市場です。これからのデファクトスタンダードになるサービスを一緒に創りましょう。
ー ルールの存在しない世界の”標準”をつくるという、やり甲斐はとても魅力的ですね!本日はありがとうございました。
こちらこそ、ありがとうございます。