「食べ物」の未来は深刻だ。2050年、世界の人口はほぼ100億人にのぼると言われ、それを地球全体で支える食料確保の問題や、今の私たちの食生活を支えている家畜からでる温室効果ガスの問題など課題は山積みである。課題解決に取り組むこともそうだが、現在の私たち自身の食生活も変化せざるを得ないことを今から頭に入れておくべきだ、と今回取材をした起業家 白坂氏の話を聞いて感じた。「身体にも地球にもいい循環を作っていきたい」と話す、大豆ミートブランドSOYCLE(ソイクル)がつくる、美味しくて未来にもいいお話を伺いました。
プロフィール(株式会社上向き 代表取締役 白坂大作氏)
健康産業・事業プロデュース業等の経験を経て起業。事業の大きなテーマを「社会課題の解決×デジタルテクノロジー」と位置づけ、株式会社ボーダレス・ジャパンが運営する「ボーダレスアカデミー」にて本格的なビジネスプランに着手。「環境に配慮したライフスタイルを日本のスタンダードに」の実現に向け、大豆ミートブランドを中心とした事業展開をしている
株式会社上向きについて
ー 事業内容について、教えて下さい。
発芽大豆を使った大豆フレークブランド「SOYCLE(ソイクル)」を展開しています。
ー 発芽大豆を使った大豆フレーク「SOYCLE(以下、ソイクル)」とは、どんな商品なのでしょか?
ソイクルは、いわゆる大豆ミートの一種ですが、従来のモノと大きく違うところは、植物性油脂の製造時における副産物ではなく、発芽させた大豆から作っていることです。それにより、大豆ミート特有のにおいや異風味が少なく、栄養価・うま味が高いのが特徴です。特にタンパク質の量では、100gあたりの牛肉と比べて約4倍近い量を持っているなど優れた栄養価が際立ちます。ブランド名は、大豆を意味する「SOY」に「CYCLE(循環)」をかけた造語となっており、ブランドを通じて、身体にも地球にもいい循環をつくっていきたいという意味を込めています。
ー ホントですね!お肉と比べ、高タンパクで低脂質なんですね。普段の料理には、どの様に使えばいいのでしょうか?
例えば、フレーク状のソイクルであれば、トマトソースに入れればそのままミートソースの様になったり、カレーに入れればキーマカレーの様になったりと、「ひき肉」を使う料理のお肉の代わりとして使うことも出来ますし、ブロック状のソイクルであればそのまま炒め物と合わせたり、唐揚げにしたりと、お肉と同じレシピで使うことが可能です。
また従来の大豆ミートでは、水戻しやお湯戻しという工程の中で、大豆ミート特有の青くささを取る作業を行うのですが、ソイクルは初めからその青くささを持っていないので、そのまま使用することも可能です。一部では、大豆ミートは下処理をして濃い味付けをしないと美味しく食べられないので逆に身体に悪いのでは?といったネガティブな議論も存在していますが、ソイクルであれば普段の味付けそのままに料理で使うことが可能です。
ー なるほど。大豆ミートにも、そんな手間や課題があったんですね。今、ソイクルの様な代替ミートが注目されている背景には、どんな理由があるのでしょうか?
注目される理由の一つとしては、やはり「環境問題」が挙げられます。既存の私たちの食生活を支える畜産業の出す温室効果ガスと、車や交通インフラが出す温室効果ガスはおおよそ同等のレベルとも言われています。また、それだけではなく2050年の地球全体の人口は100億人近くまで増えるとも予測されており、いま現在普通に食べているお肉の需要と供給のバランスが崩れる時代が、もうそこまで来ていることも要因の一つに挙げられます。お肉の供給に合わせて生産量を増やそうとすれば、それによって広大な森林伐採を要し、森が減り、さらにそこにメタンガスを多く出す家畜が飼われるという悪循環が生まれるなど、未来に向けた地球全体の課題が、代替ミートに注目が集まる大きな要因になっているかと思います。
ー 日本国内では、どれくらいの市場規模になっているのでしょう。
日本国内の市場規模でいうと、まだ30〜40億円程度ですが、世界では今後10年で約1兆9000億円まで成長するとの予測も出ています。
ー 食のシフトチェンジがこれから起こっていくかもしれないんですね。
「この子の為に事業をつくって、この子の為に起業家として生きる」。起業初年度に息子にみつかった、ステージ4の癌
ー 起業することの意識は、いつ頃から持っていたのでしょう?
22歳で社会人になってから、ずっと考えていました。自分の人生は、自分がオーナーだ!という意識と、人に決められて動くのではなく、自分で決めたいタイプの人間なので(笑)いつか起業したいと思いながら働いていました。ただ、その目的をずっと探していましたね。「自分は、何をやるべきなんだろう」と。
ー なるほど。その目的と「SOYCLE(ソイクル)」が生まれた経緯についても伺っていいでしょうか?
会社設立という意味での起業は、2019年にしています。社名にある「上向き」には、今日より明日をよりよくしたいという思いを込めていて、設立当時から何か社会的な課題に対してアプローチする事業を展開したいと考えていました。最初の半年は、通販事業やコンサルをしながら売上を立てていたのですが、2020年3月、当時1歳半だった息子に小児癌が見つかってしまったんです。発見された時はステージ進行もかなり危険な状況まできており、起業をしたばかりではあったものの、家族の一大事に仕事どころではなくなり、8ヶ月ほど休業することを決めたんです。
結果的に、現在は息子の癌も完治し今は病気をしたことがウソなくらい元気になっているのですが、腫瘍を摘出し、病院で先生から「いい方向に向かえそうです」と言ってもらった時、「この子の為に事業をつくって、この子の為に起業家として生きる」と自分の中でスイッチが入ったんです。
ー 起業をしたばかりのタイミングで、そんなことがあったんですね。
そこから何をやるかを考えた時、事業の方向性として検討したのは二つでした。一つは、「健康に留意したもの」。冗談ではなく、息子は生かしてもらえたんだと感じています。その生かしてもらえた命に対して、何が出来るのか?を考えた時、二つ目の「これからの地球や、今地球が抱えている環境問題」に目がいく様になりました。これからの未来をつくっていく健康と環境、この二つの課題にアプローチ出来ることはないか?と考えていたときに、大豆ミートに出会ったんです。ソイクルが生まれたのは、そこからですね。
商品が売れることをゴールにはしていない。ソイクルは、一つのきっかけであればいい
ー ではソイクルでは、今後未来の地球環境などもうたっていくのでしょうか?
冒頭、ソイクルでは「身体にも地球にもいい循環をつくっていきたい」と話はしたものの、事業を始めて日々痛感するのは、環境をテーマにした時の解決手段って一つではないんです。これを解決すれば、地球の環境問題全てがクリアになるといった魔法の杖なんて存在しなく、色々な方面からの課題にアプローチして、その積み重ねが、やがて大きな成果になっていくんだと感じます。
なので、勉強をすればするほど「ソイクルだけやっていても(環境問題は)解決は出来ないな」と痛感するばかりです。だからこそ、ぼくらがやっていかなければいけないのは商品をキッカケに、環境配慮の意識を持ってもらうことでもある、と。
ー なるほど。
だからこそ、商品が売れることをゴールにしてはいけないなとも感じています。勿論、事業をやっている以上そこを目指すのですが、役割としては、ソイクルを通じて、環境問題を知ってもらう、「メディア」的な役割も今後果たしていかなければいけないと感じています。現在、定期便を購入してくださっている方には、Eco Friendry Lifestyle+(プラス)というマガジンをお付けしているのですが、その中では我々とはまた違ったアプローチで環境問題を考えている商品の紹介をしたりしています。こうして商品を通じ、エコフレンドリーな考えを持つ人が増えてくる、そして同じ様な課題に対してアプローチしていく仲間のことも少しずつ知ってもらう、ソイクルはそんなキッカケもユーザーに提供していけたらと思っています。
今後について
ー 中長期的な展開についてお教え下さい。
まずは、ソイクルを中心とした自社商品をどんどん拡大していきたいと考えています。ソイクルを、大豆ミートではなく、大豆フレークとうたっている点は正にそこにあって、色々なものに使える可能性を感じてもらいです。直近では、チョコレートクランチタイプのソイクルをつくってみたり、これからソイクルの新しい展開を皆さんにもお届け出来るかと思います。
そして、私たちは会社でドリーム(Dream)という独自の指標を掲げているのですが「2030年までに420万人が参加をするエココミュニティをブランド発信でつくる」という目標も定めています。私たちの様な思想や環境配慮の意識を持ったブランドを食料品〜ライフスタイルまで取り揃え、エコフレンドリーな考えを持つ方たちにそれを共有し、買えるような仕組みやコミュニティを個人、企業間問わずにつくっていきたいです。
ー 最後に、記事内でお伝えしたいPR事項などもあれば教えて下さい。
7月1日から都内では新宿のマルイにてポップアップが開催されます。そこでは、実際にソイクルを試食・購入することも出来ますので、「まずは食べてみたい」という方がいましたら、この機会に是非足を運んでください。翌月の8月にも、有楽町にて同様の出展が決まっています。今後は、小売店への卸展開など、少しずつ皆さんのお手に届きやすい環境も整えていきますので是非ブランドのSNSなどもチェックして頂けると嬉しいです!
ー 東京でのポップアップは多くの人に興味を持ってもらえそうですね!とても楽しみです。本日はお話ありがとうございました。
こちらこそ、ありがとうございます。