チャットツールや各種クラウドサービスをはじめとするITツールによって、日々便利になっていく私たちの仕事だが、必ずしもそれが全ての業界で享受出来ているわけではないと今回取材をした起業家 澤村氏は話してくれた。同社がターゲットにしたのは、DXという言葉の影で、それを推進し切れなかったレガシー産業の方たちだ。「私自身が非ITな人間だからこそ、非ITな業界の方がどんなツールを欲しているかが分かる」という、とにかくシンプルで簡単なやさしいDXを推進する情報管理ツール「Stock」についてお話を伺いました。
プロフィール(株式会社Stock 代表取締役社長 澤村大輔氏)
1986年生まれ。早稲田大学法学部卒。新卒で、野村総合研究所(NRI)に、経営コンサルタントとして入社。その後、株式会社リンクライブ(現:株式会社Stock)を設立。代表取締役に就任。2018年、「世界中の『非IT企業』から、情報共有のストレスを取り除く」ことをミッションに、チームの情報を最も簡単に残せるツール「Stock」を正式ローンチ。2020年、ベンチャーキャピタル(VC)から、総額1億円の資金調達を実施。2021年、東洋経済「すごいベンチャー100」に選出。
株式会社Stockについて
ー 事業内容について、教えて下さい。
チームの情報を最も簡単に残せるツール「Stock」を開発・提供しています。
ー チームの情報を最も簡単に残せるツール「Stock」とは、どんなサービスなのでしょうか?
Stockは、“チームの情報も簡単に残す方法がない”という課題から生まれたサービスです。特に、ITの専門知識がないチームでもすぐに使えるという特徴を持っていて、サービスで出来ることも、チームの情報を 「ノート」 単位で情報を記載・ストックしていく機能に、「タスク管理」や「メッセージ機能」を取り入れた非常にシンプルで簡単な内容になっています。そういったシンプルな機能に特化したサービスが、DXやITツールの導入にお困りな企業様に受け入れられ、これまで広告宣伝費をかけずに約10万社の企業に利用を頂いております。
ー 10万社?すごいですね!サービスの対象となっているのは、どういった業種・業態の方たちなのでしょうか?
実際、我々のサービスを利用頂いている顧客でいうと、ほとんどが『非IT企業』の方たちになります。例えば、士業の方や老舗のコンサル会社、病院や内装工事の方々に利用頂いています。
ー なぜ、そういった方々に「Stock」は受け入れられているのでしょう?
私たちのサービスでは、始めからサービスのコアユーザーを「非IT企業の方々」に設定し、サービスを考えているので、“とにかくシンプルで簡単なものにする”という精神をメンバー全員が共通認識として持っています。社内の開発・改善基準の合言葉として、【40度の熱が出てても、0.5秒で分かるか?】という言葉があるくらい、その点を徹底的にサービスの設計に活かしております。逆を言うと、40度の熱が出てても、0.5秒で分からないモノはサービスに反映されません。
ー すごい社内の合言葉ですね(笑)インパクトあり過ぎます。
非ITな社長に聞く。既存ツールが非ITな企業・ビジネスパーソンに受け入れられない理由をどう見るか?
ー Stockでやっていることを、一般的には、チャットツールとクラウドファイル管理の併用にて各社対応しているのかと思います。その2つのサービスの併用で起きている問題についても教えて下さい。
はい。まず、Slackをはじめとするチャットツールでは、情報が流れていってしまう為、後から探そうと思うとすごく大変な点や様々な情報が入り乱れる為、必要な情報を取り損ねるといった問題があるかと思います。また、 Google DriveやDropboxをはじめとするファイル共有サービスにおいては、作成する方も、それを見る方も、そして更新する方も大変なので、なかなか浸透しないという問題がそれぞれの現場にあるかと思います。加えて、そもそもファイルデータの共有なので、PCを前提とした管理手法がスマートフォン向けには合ってないという課題も存在しています。
ー 既存のITツールが、非ITな会社やビジネスパーソンに受け入れられない理由を、澤村さん自身どんな風に見ているのでしょうか?
一番のネックは、そういったツールをつくる人が、ITに詳し過ぎるという点がそもそもの課題なのかなと感じます。私自身、今はこうしてSaaSスタートアップの代表をしていますが、元々は非ITな人間です。親族全員がスマホを使う中、一人ガラケーを使っていたくらい新しいモノを取り入れることに疎かった人間です。語弊を恐れずにいうと、(ITが)好きじゃないし、興味もないので、そういった意味でも非ITな企業が既存ツールに抱えている課題や、「難しいものを取り入れたくない」という気持ちが痛いほど分かるのです。そういう人間が、同じ様な思考を持つユーザーに向けてSaasプロダクトを開発しているというのが、既存ツールの中では全く違ったポジショニングなのかなと感じます。
ー 確かに!お話を聞いていて感じたのは、既存のサービスは、ベースのITリテラシーとそれらを整理し→活用する力の2つが必要なので、それを社内で旗を振って推進できる人材の有無と、メンバーがそれを活用できるリテラシーの有無が、非ITとITに強い企業の分かれ目なのかとも改めて感じました。
正に、それは仰る通りですね。
事業アイディア100本ノックから生まれた、新たなペイン(課題)がサービスに。
ー 起業することの意識についてはいつ頃からお持ちだったのでしょうか?
大学生の時、サイバーエージェントの藤田晋さんの書籍を読んで、世の中にインパクトを与えられる起業家という存在を知り、そこから興味を持ち始めました。
ー そこから実際、どうやって起業に至っているのでしょうか?
大学生の時は、ITベンチャーでインターンをしていたのですが、そこで自分の至らなさに気づき、このままスグに起業をするのではなく、もう少し経営全体のことを知ろうと思い、新卒では経営コンサルの会社に就職しました。そこから、フリーランスを経て、共同創業者の大道と起業をしています。
ー そこから「Stock」が生まれた経緯についても教えて下さい。
立ち上げ当初は別の事業をやっていましたが、内容的にコンサルティング要素が強く、自分たちがやりたいと思っていた「より多くの人の課題を解決する」ことからはズレていた為、0からサービスを考えることを“事業アイディア100本ノック”というカタチで実行し、とにかくその時いたメンバー全員でアイディア出し合いました。
ー おお!すごい。Stockは、その内の1アイディアだったのでしょうか?
いえ。アイディア100本ノックの中の案には入っておらず、結論から申し上げると、出したアイディアも全てボツでした(笑)。ただ、その時のやり取りを全てSlackでしていたのですが、アイディアについて1つ1つ議論していく内に、情報が全て流れていくことにお互い気がつきました。そこで「これを、もっと簡単に残せないか?」ということで今度はパワーポイントで資料化するのですが、作成しても後から全然見ないということもあり、その他色々なツールでそれを解決する方法を調べるのですが、クリティカルにそれを解決してくれるツールが存在しなかったんです。
当時は全員ヒマだったこともあり、3日間という制限の中で社内用ツールとして、Stockの原型になるプロトタイプを大道に作ってもらったんです。出来上がったプロトタイプを触って、それがあまりにも便利過ぎて驚いたのと、私たちの様な課題を抱えている人が実はもっと存在するのでは?と思って、101個目のアイディアを考え始めることを直前にして、これを事業として展開していくことを決めました。
ー なるほど!そこからStockがスタートしたんですね。スタート当初から企業の反応は良かったのでしょうか?
サービスを創った私たちは、当初めちゃくちゃ企業から褒められると思っていました。知り合いのツテを辿り、30社にプロトタイプのStockをプレゼンしにいったのですが、内29社からは「既存のサービスでいい」「こんなのいらない」等、散々な言われ様でした(笑)。ただ、内1社からは『お金を払ってでもスグに使いたい』と言ってくれたんです。この時の意思決定は、すごく悩みました。その時に、Y Combinatorの創業者が言っていた「100人のLikeを獲得したプロダクトではなく、1人のLoveを獲得したプロダクトが、結果として世界を変える」という言葉を思い出し、この少ないながらも1社から貰えたラブと、自分たちも強烈に欲しいと思っている、計2社からのラヴを徹底的に追及しようと決めて、Stockは現在に至るという経緯なんです。
ー そんな経緯があったんですね。結果的に、そこから10万社にまで拡大するって本当にすごい話ですね!
今後について
ー 中長期的な展開についてお教え下さい。
現在は、SMB(Small and Medium Business)企業を中心としたサービス展開をしている我々ですが、これからは大手企業への展開、そして世界にも展開していきたいと考えています。「世界中の『非IT企業』から、情報共有のストレスを取り除く」というミッションを掲げていますが、このペインに国境はないと感じます。
このサービスを始める時に色々な方から「情報共有のサービスで、世界に出るのは無理だ」と言われました。つまり、アメリカで流行ったモノをローカライズして使うのがこの業界なんだ、ということですね。私はそんなことはないと思っていますし、現にそこから溢れている企業が私たちのユーザーであるとも感じます。我々がいいと思えるミッションとプロダクトを持って、最終的には世界に出ていきたいし、自分たちならそれを出来ると信じて、今後も事業の拡大と改善を続けていきます。
ー 日本発のビジネスサービスが海外で流行るみたいな事例をあまり見かけることがないので、その展開はとても楽しみです!最後に、記事内でお伝えしたいPR事項などもあれば教えて下さい。
これまで広告宣伝費をかけずに、ここまでコツコツやってきましたが、導入企業も10万社を超えて、会社としてもアクセルを踏むフェーズに来ました。現在、多方面で絶賛採用を募集しておりますので、興味のある方は是非ご応募をお待ちしています!
ー いいですね!これからの御社の展開もとても楽しみです。本日は有難うございました。
こちらこそ、ありがとうございます。