本を通じて人と出会うマッチングサービス「Chapters」を運営する株式会社MISSION ROMANTIC。効率やマッチング率を求めた先に、個人の細分化を徹底したマッチングサービスとは裏腹に、Chaptersはほとんどの個人情報を開示せず、”同じ本を読んでいる”という事実だけでユーザー同士をマッチングさせていく。探している一冊を求め、同じ本の前で男女の手と手と触れ合ってしまう、そんな甘ずっぱい青春の一ページの様な出会いを創出する、ちょっと変わったサービス。理屈なきロマンチックを追い求め、そしてカタチにしていく起業家 森本氏にお話を伺いました。
プロフィール(株式会社MISSION ROMANTIC 代表取締役 森本萌乃氏)
1990年東京生まれ、株式会社MISSION ROMANTIC代表/書店主。
2013年に新卒で株式会社電通に入社、4年間プランナーとして従事した後My Little BoxとFABRIC TOKYOへ二度の転職を経験、企業在籍中にパラレルキャリアにて自身の会社を創業。Chaptersのプロトタイプ「MISSION ROMANTIC book」を1年間全てアナログで運用、半年のChapters β版運営を経て、2021年6月にChapters bookstoreグランドオープン。「出会い方」にフォーカスし、物販から始まる新しいマッチングサービスを実現中。
株式会社MISSION ROMANTICについて
ー 事業内容について、教えて下さい。
本を通じて人と出会うマッチングサービス「Chapters bookstore(チャプターズ書店)」の企画と運営をしています。
ー 「Chapters」とは、どんなサービスなのでしょうか?
Chaptersは、”本棚で手と手が重なる様に出会いたい”というコンセプトから始まったサービスです。オンライン書店という形態を通じて2つの出会いを創出しています。
・新しい”本”との出会い
・同じ本を読んでいる”人”同士の出会い
ユーザーは、まずはじめに選書された4冊の本の中から1冊を選びます。この時、選んで頂く内容にはタイトルも著者も記載しておらず、【本をイメージしたビジュアル・テーマ・推薦文】の3つから読みたい本を決めて頂きます。そこから自宅に届いて、はじめて自分の読む本と出会う、一つ目の出会い。そして、同じ期間内に同じ本を読んでいるユーザー同士で”アペロ(ビデオチャット)”を行い、生まれる二つ目の出会い。そこでお互いの気が合えば、連絡先を交換できるという流れになっています。
特徴としては、ユーザー同士はビデオチャットに入るまで、その人の顔も分からないし、定性的な情報もほとんど知らない状態で会う様になっています。明確に分かっているのは、「同じ本を読んでいる」という、それだけですね!
ー え!お会いする方のことをほとんど知らずにビデオチャットに入るんですか?
はい、ユーザーから見える相手のプロフィールは、およそ3つだけです。
・人生で心に残っているベストブック3冊
・住んでいる地域
・年代
今のマッチングアプリでは、かなり細分化されたセグメントでユーザー同士の出会いを効率化させていますが、Chaptersは、【不確かさ】を大事にしていて、あえてボカした情報のまま会う機会を設定してます。この【不確かさ】を求めるようになった背景は、過去にマッチングアプリを使っていた私が、出会うまでの自分自身の期待値コントロールに悩まされた原体験が大きく影響していますね。
ー 確かに!今のマッチンサービスの傾向とは真逆ですね。実際にどんな方々が登録されているのでしょう?
ユーザーの7割が「これをキッカケに読書を再開したい」というエントリー層になっています。傾向としては、(面白い本なら読みたい)とは思っているものの、中々それを自分の言葉では具現化出来ずに本との出会いから離れている人が、読書の再開と共にサービスに興味を持ってくださっています。
ー 毎月レコメンドされる4冊の本の選定は、どの様にしているのでしょう?
提携している書店・懇意にして下さっている出版社からのオススメを私が一度、味見という形で全て読んでから、そこから4冊の選定と推薦文を書いています!カテゴリーは、小説を中心に全て文庫本です。
ー 全ての本に目を通されているんですか?
はい!なので毎月30冊くらいの読書はしていて、土日はずっと本を読んでいます(笑)
「脆さ」が転じて、ロマンチックになる。マッチングサービスの真逆をいくプロセス設計の意図
ー 既存のマッチングサービスと比較をすると、労力と時間のかかる出会いだと感じますが、この出会いまでのプロセスは意図して設計しているのでしょうか?
例えるなら「待ち合わせ」をする感覚に近いのかな、と思っています。
私は「待ち合わせ」という行為が好きなのですが、待ち合わせって、(もうすぐ会える)と(もしかしたら相手が来ないかもしれない)といった期待と不安が入り混じっている行為だと思うんです。だから楽しくって、ちょっと切ない。
Chapters内でも、そういったことが勿論あって、その「脆さ」が転じてロマンチックになっていくものだと感じてます。効率や確実性を求めるのであれば、既存のマッチングサービスを利用するのがベストな選択だと思いますが、Chaptersでは自分ではどうすることも出来ない、そういった脆さをある程度許容して、自分の予感に賭けられる人にサービスを提供したいと考えています。
ー なるほど。正しい情報にすぐリーチできる環境になり過ぎて、しばらく忘れてた感情です。本が売れないと業界的には嘆いている分野でもありますが、リアルな書店さんからの反応はどうなんでしょうか?
実際に、南浦和にある書店でChaptersの棚をつくらせてもらう取り組みがスタートしています。お客さんからの反応も良いとのことで、これからもリアル書店との取り組みは増やしていきたいです。ユーザーに楽しんでもらう選書がサービスの肝だと思っているので、そのノウハウとアセットはこれから本屋さんの売り場作りに活用出来る様、徐々に拡げていきたいです。
人生のターニングポイントは、金曜ロードーショー!?
ー 起業することの意識についてはいつ頃からお持ちだったのでしょうか?
新卒で広告代理店に就職し、そこからもっとユーザーに近づくビジネスがしたくて転職をしたのですが、ふとした時に世の中にモノが溢れ過ぎていることに気がつきました。そこから、もっと届け方や触れ合い方の”演出”に興味を持つ様になっていき、次第に「人と人」「人とモノ」の出会い方を創出するようなことをしたいと思う様になりました。はじめはそういったことをビジネスとしてやっている会社への転職を考えたのですが、やっている会社が見当たらなかったので「(プロジェクト的に)まずは始めてみよう」と立ち上げたのがMISSION ROMANTICのスタートです。
ー 素敵な社名には、どんな想いを込めたのでしょう?
よく会社を立ち上げた際には、ビジョン・ミッション・バリューが必要だ!なんて言われますが、私も始めは人並みに一生懸命考えたんですけど全然思い浮かばなくて(笑)そのかわりと言ってはなんですが、やっぱり私は【理屈のない素敵なモノをどれだけ沢山生み出せるか】にしか興味がないと感じたので、それを言い当てる「ROMANTIC(ロマンチック)」という言葉が出てきた時に『コレだ!』と思い、そのまま社名にしました。
ー そこから「Chapters」は、どの様にして生まれたのでしょう?
MISSION ROMANTICを立ち上げてから直ぐは、会社経営もやってみたい・事業をやりたい・もっとお客さんに近づきたいと、色んな気持ちが横並びに走っていてサービスも中々定まらない時期がありました。そんな時に金曜ロードショーで、映画「耳をすすませば」の本から生まれる出会いシーンをみたときに「コレだ!」と思い、その時にChaptersの構想が生まれました。
冗談でなく、金曜ロードショーは、ほんとに人生のターニングポイントです(笑)
ー 金曜ロードショーが人の人生を変えていたなんて、初めて聞きました(笑)これまでのキャリアを活かして、他の仕事もやっていくことも考えたりはしなかったのでしょうか?
はい、創業からずっとChapters一本でやってきています。
私個人のタイプとして、サイドビジネスで日銭を稼ぎにいくとそっちに走ってしまうなと感じていて、事業を収益化するまではサイドビジネスをしないと決めて、今は貯金を崩しながらギリギリやっています。これはやってみての感想ですが、辞めることを決めていくと気持ちよく生きられる様に思います。この人生を選んで不満は全くないです。不安は超ありますけど(笑)
ー 不安はあるけど、不満はない。いい言葉です!
今後について
ー 中長期的な展開について、お教え下さい。
年内に追加機能をリリース予定です。今よりもっとユーザーの求めるものにサービスを近づけていけたらと考えていますので楽しみにしていてください!
長期的には電子書籍を入れた展開なども考えていて、そうなってくると日本に住む方だけではなく、世界に住んでいる日本人同士がChaptersを介して、繋がれる世界観が出来上がってくるので、将来的にはインターナショナル版のリリースもやりたいです。
ー 最後に、記事内でお伝えしたいPR事項などあれば教えて下さい。
現在、MISSION ROMANTICでは一緒に働く人を募集しています!
直近でビジネス継続の目処が立ったりユーザーが増えてきたこともあり、まずはインターン生を募集したいと思っています。応募条件は、「本が好き」「Chaptersが好き(思想に共感している等)」ですね。一緒にサービスを大きくしていける、当事者意識のある方の応募があれば嬉しいです。興味のある方は、是非お気軽に問い合わせ下さい。
ー 色んな経験が出来そうですね!例えば、「こんな人が良いな〜」などはありますか?
うちのチームの特徴なのですが、ピンチの時にヘラヘラ出来るタイプがいいですね笑。普段の仕事は誇りと責任を持って自分のベストを出す、それは当たり前で。危うい時ほど笑えたり協力できる人と働きたいです。仕事は有り余るほどあります!
ー なるほど(笑)ピンチの時にヘラヘラ出来る方がいましたら是非ご応募ください。本日はありがとうございました。