ビッグデータを使わず、少ないデータでAI活用が可能な新しいAI技術「スパースモデリング」を使った京都発のスタートアップ。株式会社HACARUS 藤原健真【起業インタビュー164回目】|起業サプリジャーナル

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ビッグデータを使わず、少ないデータでAI活用が可能な新しいAI技術「スパースモデリング」を使った京都発のスタートアップ。株式会社HACARUS 藤原健真【起業インタビュー164回目】

公開日:2021.05.28

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ビッグデータを使わず、少ないデータでAI活用が可能な新しいAI技術「スパースモデリング」を使った京都発のスタートアップ、HACARUS(ハカルス)。これによって、これまでAIの恩恵に預かることの出来なかった企業の多くの業務が改善されている。これまでに数多くのAIスタートアップが生まれているが、着目されることのなかったその技術は、どの様にして取り入れられたのか?起業家藤原氏に話を伺いました。

 

 プロフィール(株式会社HACARUS 代表取締役CEO 藤原健真氏)

1999年 カリフォルニア州立大学卒業

2000年 株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメント入社、「PlayStation」の開発に携わる。

2004年 株式会社ディメンションズを設立(デジタルサイネージ事業)

2006年 株式会社スプラシアを設立(動画共有サイト)

2011年 Coworkify Incを設立(コワーキングスペースの運営を効率化するシステム)

2014年 株式会社HACARUSを設立

 

 株式会社HACARUS(ハカルス)について

ー 事業内容について、教えて下さい。

HACARUSは、独自のAI技術「スパースモデリング」を使ったデジタルソリューションを提供している会社です。近年、どの業界・産業にも取り込まれてきているAIですが、私たちは、その中でも【医療 / ヘルスケア】【製造業】の2つの業界に特化をしてサービスを提供させていただいております。

 

ー 実際の現場では、御社のAIがどの様にして活用されているのでしょう。

はい。まず医療現場においては、医師の診断をAIによってアシストすることを弊社のAIで提供しています。具体的には、レントゲンや内視鏡動画における画像診断、そこからの解析を私たちのAIを使ってサポートするという内容になっており、こちらについては既に京都大学・神戸大学との共同研究もスタートしています(※)

 

次に製造業の現場ですが、これも「人間の目で見て判断する」という業務、つまり”検査”の部分をAIで置換することをサポートしています。例えば自動車業界においては、車1台につき約3万点の部品があると言われていますが、全ての部品に「ヒビ割れがないか?」「塗装はちゃんとされているか?」「強度に問題はないか?」を確認した上でパーツとして実装されています。2021年現在、いまだに検査内容を人の目によって確認しているということは珍しくありません。この外観検査の部分に、私たちのAIを組み込んで業務を効率化させるということを支援させて頂いています。

 

※参考記事 

・HACARUSと京都大学、子宮頸がんの予防・早期診断AI支援システムの共同研究を開始

・HACARUSと神戸大学、 肝細胞がんのMRI画像解析と診断支援AIの共同研究を開始

 

 ビックデータ不要のAI技術「スパースモデリング」について

ー 御社のAI技術「スパースモデリング」についても伺いたいのですが、これはどういった技術なのでしょうか?

まず、AIを支える技術として皆さんが思い浮かぶのは「ディープラーニング(深層学習)」かと思います。AIにまつわる大手企業もスタートアップも、ほぼこの技術を用いて何かしらのソリューションを提供しているのが現状ですが、この「ディープラーニング」を実際の現場で使うにもそれなりのハードルがあり、大前提としては【ビックデータを保有している】企業ではないと現場にAIを取り入れることが難しいといった事情がございます。

 

例えば、先ほど話した自動車業界では年間数件しか出ない不良品のデータを集めて、AIに学習させようとすると膨大なデータを集めるのに数十年もかかってしまうなんてこともあり、(AIを)使いたいがデータが足りない」ということは実際によくあります。

 

ー 「ディープラーニング」の場合、ビッグデータを保有していない企業は現実的に導入が難しいということですね。

仰る通り、そこで弊社が使っている「スパースモデリング 」という技術が活躍します。

 

スパースモデリングは【少ないデータからAIが作れること】を特徴としている技術です。スパースという言葉の意味は「スカスカ」とか「まばら」を意味しますが、元々はAIに特化した技術ではなく、最初に着目された事例は、統計学におけるデータ処理の文脈から生まれた手法でした。データとして不完全、つまり欠損したデータから精度の高いデータを作成することに優れ、その結果を数学的に証明出来てしまうことから、解析性の高さもディープラーニングより優れていると言われます。

 

実は、膨大なデータから結果を導くディープラーニングは「なぜそうなったか」を説明できません。しかし、私たちのスパースモデリングは、その根拠を出すことを可能にしています。なので、医療現場や製造業など、万が一の際に明確な理由を答えられる必要がある現場でこの技術が重宝される理由でもあります。

ー すごい技術なんですね!聞く限りは「ディープラーニングよりすごい!」と思ってしまいそうですが、逆にそれぞれの技術で一長一短はあるのでしょうか?

そうですね。ディープラーニングがスパースモデリングより優れている部分は、沢山あります(笑)簡単に申し上げると、ビックデータがある場合・取得できる場合ではディープラーニングの方が立ち上がりは早いです。あとは、言葉を理解して自動でレスポンスを返す様な「自然言語処理」のような分野は、ディープラーニングのほうが得意であると言われています。

 

ただ繰り返しになりますが、全ての企業がビックデータを保有している訳でもないので、その辺りは”ディープラーニング”と”スパースモデリング”の効果的な使い分け方法なども提案させていただいています。

 

ー スパースモデリング自体、今回初めて聞いた技術なのですが、国内でこの技術を用いて開発を行える会社が少ない理由は何なのでしょうか?

そもそも、この技術を知らないというのも一つあるかと思います。データサイエンティストでさえも知らないケースもある様な、まだまだマイナーな技術でして、元々AIに特化して開発されたものではないのも大きな理由です。私たちも4-5年間基礎的な研究をしてきて、スパースモデリングを使った開発環境を整えてきたということもあり、そもそも使用するにあたっての敷居がまだまだ高いのが現状です。

 

スパースモデリング技術をより多くの方々に届けるというのも我々の使命だと思っておりまして、現にスパースモデリングに関するコードの一部を一般に公開したり、弊社所属のデータサイエンティストが積極的に技術記事を公開したりしています。

 

 ヘルスケアアプリの会社から、AIスタートアップへの転身。

ー 起業することの意識についてはいつ頃からお持ちだったのでしょうか?

元々は起業には全く興味のない人間でしたが、キッカケになったのはアメリカの大学にいったことでした。私がいた当時は「ドットコムバルブ」のど真ん中。YahooやGoogleが生まれたタイミングでもあり、3~4年生の時は全員が起業モード、就職活動そっちのけで事業計画書を書いては投資家にプレゼンするということが盛んに行われていた環境でした。そんな中にいたこともあって、私も「いつかは自分も・・」と思う様になっていました。

 

そこから一旦は大企業に就職しますが、会社にも親にも「3年キッカリで辞めます」と伝え、宣言通り入社して3年後に初めての起業をしました。

 

ー 藤原さんは今回で4社目の起業となり、これまで様々な分野でも会社を立ち上げてきてもいますよね。

はい。いずれの会社も幸いにも上場企業に事業売却をしてイグジットしてきた形となっています。ただ外から見たら、デジタルサイネージをやったり、動画事業をやったり、コワーキング向けのシステムを作ったり、と「一体コイツは何がやりたいんだ」と正直思われるかもしれません(笑)

 

ただ私の拙い経験から申しますと、その時の【時流に乗る・世の中のニーズにあるものに乗っていく】というのも起業においては非常に大事だと考えております。ちゃんとした事業と経営者を持っても、時流に合っているか・合っていないかもその後のスケールに大きく影響してくると考えています。

 

ー なるほど!そんな中で、HACARUSの事業はどの様にして生まれたのでしょうか?

HACARUS(ハカルス)という社名の由来は、「人間の身体を測る」から来ています。

当初はヘルスケアのアプリを手がける会社として立ち上がっており、我々自身の課題を解決する為に「スパースモデリング」を用いたAI技術を取り入れたことが最初のきっかけでした。当時の私たちもスタートアップという立ち上がって間もない状況下で、ビックデータを持っていない私たちが、どうサービスにAIを取り入れるか?というのは非常に悩みどころでした。そんな時に少ないデータからでも起用できるスパースモデリングは、正にピッタリのソリューションでした。

 

残念ながらヘルスケアアプリの事業自体は数年で撤退となりましたが、その中で使っていた技術を医療・製造業の現場向けにアップデートしていくことで、現在に至るという経緯なんです。

 

ー 「スパースモデリング」は、元々自社のサービスに取り入れられていた技術だったんですね!

 

 今後について

ー 中長期的な展開についてお教え下さい

医療・製造業分野に特化をした事業軸は変わらず、それぞれにAIで支援できる範囲を広げていきたいと考えています。医療分野においては、薬をつくる「創薬」の部分へのAI支援を通して、R&D(研究開発)の効率化に貢献していきたいですね。製造業においても、マテリアルズインフォ―マティクス(MI)と呼ばれる材料開発の分野にAIを提供し、テクノロジーを通じて新材料の効率的な探索に取り組みたいと考えています。

 

ー なるほど。最後に、記事内でお伝えしたいPR事項などあれば教えて下さい。

先ほどお伝えをした今後私たちが伸ばしていく分野、「創薬」と「材料開発(MI)」にAIを絡めた展開に興味を持って頂ける人材を積極的に募集しています。製薬会社や材料メーカーの研究開発に従事されている方で、今やっている業務にAIを絡めた分野に興味をお持ちの方がいれば、是非お声かけください。

 

ー 勢いのあるスタートアップでの勤務に興味のある方がいたらマッチしそうな環境ですね!今後の展開も楽しみです。今日はありがとうございました。

こちらこそ、ありがとうございます。

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