加齢と共に大きくなる「髪」に関する悩み。近年では男性・女性を問わず、日本人の悩みの種となっている「薄毛」。データでは、薄毛に関連する育毛剤やカツラといったマーケットの市場規模は4,000億円を超えるとも言われているが、そんな大きくなった市場が故に「正しい情報と適切なソリューションが悩みを持つ人たちに提示されていない」と今回取材をした起業家 金澤氏は語る。大手製薬会社のキャリアを捨て、個人の悩みの種となるコンプレックス市場でスタートアップを立ち上げた同氏にお話を伺いました。
プロフィール(株式会社エムボックス 代表取締役CEO 金澤大介氏)
武田薬品工業株式会社にて、マーケティング、営業等に従事。同社退社後、株式会社キュアアップにて禁煙アプリの法人向けサービス立ち上げに参画する傍ら、家業の薬局・介護、介護福祉施設を経営。医療・ヘルスケア業界において、複数業態での経験を通じて、テクノロジーを使って患者さんに寄り添ったサービスを届けたいと考え、M-boxを創業。早稲田大学MBA修了、薬剤師。
株式会社エムボックスについて
ー 事業内容について、教えて下さい。
株式会社エムボックスでは、専門医監修のもとに開発された日本初のAGA(男性型脱毛症)管理アプリ「HIX」の開発・運営。そして、ヘアケア製品として一般用医薬品・サプリメントの開発・販売を行っています。
ー 日本初のAGA(男性型脱毛症)管理アプリ「HIX」とは、どんなアプリなのでしょうか?
HIXは、AGAのセルフケアを支援するスマホアプリです。
ユーザーは自身の髪の写真をアプリ内にアップロードし、幾つかの問診に答えて頂くと、AGA専門医が監修した対策プログラムに基づき、効果的な対策方法をアプリから提案します。さらに、HIXではそこから医薬品やサプリメントなどのホームヘアケア商品を購入することも出来ますし、追加のお悩みがあればチャットを通じてカウンセラーに相談することも可能です。
ー ユーザーひとり一人の薄毛状態の診断から対策まで、どの様にして行っているのでしょうか?
AI(人工知能)がアップロードした髪や頭皮の写真を元に、独自の画像判定技術で薄毛の進行度を判定します。現状では毛髪診断士が診断結果の最終確認を行い、ユーザーへ診断結果を返しています。また、ユーザーの画像判定結果と問診結果を踏まえ、AGA専門医と共同開発した対策支援プログラムにそって、ユーザー毎に効果的な予防や対策方法を提案しています。つまり、診察に例えると、「診断」と「治療方法の決定」の部分を自動化していることになります。
ー そもそも日本人の薄毛市場って、現時点でどれくらいの規模があると言われているのでしょうか?
データでは、約1,200万人が悩んでいると言われ、それに付随する育毛剤やカツラなどのヘアケア市場は約4,400億円とも言われています。
ー 6人に1人くらいの割合ですね。明日は我が身ということで、他人事には思えない状況です・・実際アプリの利用には料金がかからないですが、サービスのビジネスモデルとしては、どの様になっているのでしょうか?
ヘアケア商品の販売と提携クリニックへの送客が現時点でのキャッシュポイントになります。提携クリニックは、医師の質や料金体系の明確さなど安心して紹介が出来る先を厳選して掲載しています。ちなみにHIX経由の受診予約は、初診料が無料となるなどユーザーにとってもメリットある内容となっています。
ー 薄毛商品とは思えない、シンプルでカッコいいデザインも特徴的ですね!
悩んでいる人が科学的にエビデンスのある情報や商品にたどり着きにくい、構造的な課題に気付いた。
ー 起業することの意識についてはいつ頃からお持ちだったのでしょうか?
私の両親も自営で会社をやっており、それを側で見てきたこともあってか大学生の時にはハッキリ持っていました。
ー そこから実際に、起業された経緯についても教えて下さい。
大学を卒業して武田薬品工業株式会社に入社し、最初は「3年くらいで起業しよう・・」と思いつつも、様々な成長機会や新しい仕事を経験させてもらい、中々踏み出せずにいました。
きっかけとなったのは、ある大型製品の上市プロジェクトを国内マーケティング部門でメイン担当をしていた仕事でした。国内だけでなくグローバルで同時展開していくことを目指した大型の新製品でしたが、発売直前の治験結果により、そのプロジェクト自体が解散してしまうという出来事がありました。
かなり熱量を込めてやっていた仕事ではあったのでショックと言えばショックでしたが、自分の中では、その出来事が一つの転機の様に思え、「(起業するには)きっとこのタイミングなんだろう」と思い、会社を辞める決断をしました。
ー その時には、「HIX」のサービス構想は既にお持ちだったのでしょうか?
いえ、全く思っていなかったです。ただ自分自身のキャリアからも、やるなら医療・ヘルスケア分野とは決めていました。
構想が生まれたキッカケは、オープンネットワークラボというアクセラレータープログラムに参加したことでした。その時、出した最初のビジネスアイデアは「服薬支援のプラットフォーム」でしたが、このアイデアはメンタリングを受けていく中で課題がそこまで深くないということが分かり、そこから事業をピボットして着目したのが、個人のコンプレックスにまつわるパーソナルケア領域でした。
ー その個人のコンプレックスというのが、薄毛だったんですね!
はい。エムボックスの創業前に薬局の会社を起業しているのですが、その薬局に来る患者さんは皮膚系の病気や悩みを抱える方が多かったこともあり、外見に影響する身体症状を抱える方の(悩みの)深刻さや、人に話しづらいが故にインターネットの誤った情報・医薬品に頼って、症状を悪化させてしまう方を数多く見てきました。
特にネットの世界では、SEOや広告で、正しい情報があってもそれにモヤがかかってしまう状況になっていて、悩んでいる人が科学的にエビデンスのある情報や商品にたどり着きにくい構造的な課題があることに気づきました。インターネットの普及により、正しい情報にたどり着きやすい状況のはずが、現実はそれによって悩んでいる人を数多く生んでいたのです。その課題解決のスタートとして、まずは日本人男性1,200万人以上が悩みを持つ「薄毛」に焦点を当て、テクノロジーによるアクセス性の向上と科学的根拠のある正しい情報と商品を届けられるサービスとして、HIXは生まれました。
ー なるほど。確かに個人のコンプレックスに絡む様な検索ワードは広告も多く、受け手も何が正しい情報なのか?判断しにくい状況ですよね。
今後について
ー 中長期的な展開について、お教え下さい。
薄毛に悩む人たちのファーストチョイスになれる様、サービスのUXを高めていきます。まずはその為に、ユーザーが自宅での継続的なセルフケアとして使ってもらえるサービスへの昇華を目指し、その次のステップとして、アプリ内からオンライン治療まで出来る機能を実装したいと考えています。
近年では、男性のスキンケアが身だしなみの一環として認知を広めつつありますが、薄毛予防でもそんな世界観をつくっていける様、精進していきます。将来的には、薄毛領域にとどまらず、また別にパーソナルケア(=コンプレックス)領域にも事業を展開することを考えています。
ー 最後に、記事内でお伝えしたいPR事項などあれば教えて下さい。
弊社では現在採用を強化しています。まだ世の中にないサービスの開発にご興味のあるエンジニアの方や、医療・ヘルスケア領域のバックグラウンドをお持ちで、新規事業に興味のある方がいれば是非一緒にやりましょう。ご連絡お待ちしております!
ー 次なるパーソナルケア領域の進出も楽しみです!本日は有り難うございました。
こちらこそ、ありがとうございます。