コロナウイルスの影響で、多くの企業が事業停止や、事業規模の縮小に追い込まれています。影響が長期化し、経営が苦しくなる企業は今後もさらに増加していく可能性が高そうです。
そのような状況の中、従業員の雇用を守るため「雇用調整助成金」の活用を政府は推奨していたわけですが、制度が複雑すぎて申請をするためのハードルが高く、政府が想定していたほど、雇用調整助成金の申請件数は伸びませんでした。
そこで、政府は雇用調整助成金の大幅な緩和・拡充に乗り出していますので、本稿では、2020年6月4日現在の最新情報をお伝えしたいと思います。
小規模の事業主の特例
雇用調整助成金の申請書類の作成は、総務担当者がおらず、事業主が自ら人事労務手続を行っているような中小企業でとくにハードルが高いものでした。
そこで、政府は、従業員数がおおむね20人以下の事業主への特例として、5月19日に、大幅に簡易化された申請書式を発表しました。詳細は、厚生労働省の「雇用調整助成金申請マニュアル」を確認して頂きたいのですが、筆者の私見としても、かなり思い切った形で簡素化されており、ようやく事業主が利用しやすい助成金になったという印象です。
出勤簿やシフト表、賃金台帳など、勤怠や賃金支払いの事実を証明する書類は引き続き必要となりますので、各社の実情に合わせて準備をお願いします。ただし、本来であれば、法定の要件を満たした出勤簿や賃金台帳でなければならないところ、目下は緊急対応のため、不正受給で無いことの確認ができれば、様式は問わないとされています。
小規模事業主以外も一定の簡素化
上記の小規模事業主に当てはまらない事業主に関しても、申請書類に関して一定の簡素化が図られています。
具体的には、休業計画届の提出が必要無くなったこと、エクセル版の申請書式に計算式が埋め込まれて助成金の申請額の記載が楽になったこと、休業した日を1日ずつ記載するのではなく、従業員別に合計日数だけ記載すれば良くなったことなどです。
上限額等の引き上げ
雇用調整助成金の1日当たりの上限額は、6月4日現在、1日あたり8,330円です。5月27日に閣議決定された第二次補正予算案では上限額を15,000円まで引き上げることとされており、6月中には国会で最終決定される見通しです。
また、助成金の助成率(厳密には異なるが、イメージとしては、会社が支払った休業手当の額に対する国の助成金による補助率)は、中小企業が9/10(解雇等を行った場合は4/5)、大企業が3/4(解雇等を行った場合は2/3)ですが、中小企業で、行政からの休業要請に基づいて休業を行った場合など一定の条件を満たす場合は、助成率は10/10とされています。
なお、上記の第二次補正予算が国会で承認されれば、中小企業の助成率は、解雇を行わなかった場合には、無条件に10/10に拡充される見通しです。
緊急対応期間の延長
このような申請書類の簡素化や、支給額の拡大などの緩和措置を受けることができる緊急対応期間は、6月7日現在の情報では、4月1日から6月30日までとされています。
しかし、コロナウイルスの影響はまだまだ続いていますので、この緊急対応期間は9月30日まで延長される見通しです。
直接払いの制度
雇用調整助成金の支給申請が大幅に簡素化されたとはいえ、雇用調整助成金は、事業主がいったん休業手当を従業員に支払ったうえ、事業主が国に助成金を申請するという仕組みですので、足元の資金繰りが厳しく、休業手当を支払うことができない事業主は、雇用調整助成金を利用することができません。
そこで、国は、勤務先経由で雇用調整助成金の恩恵を受けられない従業員のために、直接払い制度を新設する予定です。コロナの影響で休業をしたにも関わらず、勤務先から休業手当を受けられなかった従業員本人が、国に直接申請をすることで、休業手当に相当する金銭補償を受けられるような仕組みになります。
6月4日現在、正式発表はされていませんが、政府内での検討は進んでおり、近日中に正式発表となる見通しです。
まとめ
以上のように、雇用調整助成金は、どんどん簡素化および拡充をされておりますので、是非、積極的に活用を検討してみてください。