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雇用調整助成金のポイント「平均賃金」とは?

公開日:2020.05.08

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コロナウイルスの影響が深刻化し、また、政府の緊急事態宣言を受け、休業や時短勤務を実施する起業が増えています。

 

休業手当の支払い基準

我が国の緊急事態宣言は、休業等に対して法的強制力は持たず、あくまでも企業が自粛に協力するという形をとっていますので、労働基準法上は、原則として、企業から従業員へ休業手当の支払対象となります。

 

休業手当は、休業期間中の従業員の生活を補償するための手当で、平均賃金の60%以上の支払いが必要とされています。ところが、企業経営者や人事担当者の方からは、「そもそも平均賃金とは何なのかが良く分からない」という質問を受けることが少なくありません。

 

そこで、本稿では「平均賃金」について、できるだけ分かりやすく解説をさせて頂きたいと思います。

 

平均賃金の原則的な考え方

平均賃金は、大原則としては下記の計算式により求められます。

「過去3か月分の賃金の総額÷当該賃金の支払い基礎となった歴日数」

 

たとえば、毎月の賃金が、末締め、翌25日支払の会社で、7/25支払分の給与に対する平均賃金を算出する場合、

「(4/25支払賃金+5/25支払賃金+6/25支払賃金)÷(31日+30日+31日)」

という計算式になります。

 

より具体的に言えば、上記の例で、残業代なども含め、4/25支払賃金=35万円、5/25支払賃金32万円、6/25支払賃金40万円であれば、

「(35万円+32万円+40万円)÷(31日+30日+31日)=11,630.43円」

となりますので、この11,630.43円が平均賃金ということになります。

 

そして、休業手当は、平均賃金の60%以上の支払が必要なので、11,630.43×60%≒6,979円が、休業手当1日当たりのミニマム額ということになります。

 

ここまでの説明ですと、そこまで複雑には見えないかもしれませんが、日給者・時給者には例外があります。

 

日給者・時給者の場合の例外

①「過去3か月分の賃金の総額÷当該賃金の支払い基礎となった歴日数」

②「(過去3か月分の賃金の総額÷当該賃金の支払い基礎となった実働日数)×60%」

①と②の2通りの計算を行い、それを比較して、大きいほうの金額が平均賃金となります。

 

時給者の方の7/25支払分給与の平均賃金を求めるとして、4/25支払賃金=15万円(実働18日)、5/25支払賃金19万円(実働22日)、6/25支払賃金13万円(実働10日)であれば、

①の計算式は、「(15万円+19万円+13万円)÷(31日+30日+31日)=5,108.69円」

②の計算式は、「(15万円+19万円+13万円)÷(18日+22日+10日)×60%=5,640円」

となり、大きい数字である②の計算結果が平均賃金として採用されます。

 

このように、日給者や時給者の場合は、常に2通りの計算式を比較しなければならないことが大きな手間になります。

 

その他の大変なこと

それ以外にも、平均賃金を求めるには大変なことがいくつかあります。以下のような場合には、単純に3か月平均を求めることができないので、それぞれの事情に応じた、特別な計算を行わなければなりません。

 

  • 新入社員などで入社後3回分の給与明細が無い場合
  • 3か月の間に、育児休業や介護休業、休職期間などがある場合
  • 3か月の間に、休業期間があった場合
  • 給与体系に月給制と時給制が混じっている場合

 (例:リーダー格のアルバイトに、責任者手当が月極で支払われている)

 

また、平均賃金は、直近3か月の賃金を使うので、毎月再計算が必要になるということも、大きな手間になってしまいます。

 

雇用調整助成金対応としては

目下、コロナ対応で、雇用調整助成金の支給を受けるため、平均賃金を計算しようとしている企業も多いと思います。

 

しかし、この緊急時に、限られた時間の中で、平均賃金を正確に計算するのは非常に大変です。完璧に自動計算してくれるソフトも、筆者の知る限り存在しません。

 

そこで、実務上の対応としては、

月給者:「その月の月給÷その月の所定労働日数」

時給者:「その月のシフト通り働いた場合の賃金÷その月シフト通りの労働日数」

で、暫定的な平均賃金を求めるということが考えられます。

 

支給率も、60%ではなく、70%や80%など、高めにしておけば、労働基準法上の休業手当の下限を下回るリスクは少なくなるでしょう。

 

このように、多少休業手当の支払は多くなってしまいますが、雇用調整助成金で、休業手当の少なからずの部分が国から補償されることを前提に、簡便・迅速な休業手当の支払を検討してみる価値はあると考えます。

 

直近3か月の残業が多かった従業員は、上記の計算式によっても、労働基準法上の平均賃金を下回ってしまう可能性がありますが、助成金の審査の仮定で指摘を受けた場合、差額の追加支給を行えば、雇用調整助成金は支給決定されます。

 

まとめ

このように、平均賃金の計算は非常に複雑ですので、計算に手間取り、休業手当の支給や、雇用調整助成金の支給申請が遅れてしまっては本末転倒です。

 

労働基準法上の休業手当である「平均賃金の60%」は、あくまでも下限を示したものであり、これピッタリの額にする必要はありません。そのことをご理解いただいた上、できるだけ迅速な形で、休業手当の支払いおよび、雇用調整助成金の申請を進めて頂けましたら幸いです。

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投稿者について
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榊裕葵

東京都立大学法学部卒業後、上場企業の海外事業室、経営企画室に約8年間勤務。独立後、ポライト社会保険労務士法人を設立し、マネージング・パートナーに就任。「社員から信頼される会社作りをサポートする」を経営理念として、顧問先の支援に当たっている。

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