モンゴルレザーをD2Cで展開するレザーブランド「HushTug」。品質の高いレザーと使い勝手の良いベーシックな商品展開に加え、それらを低価格で提供していることがユーザーのニーズをがっちり掴んでいる。アパレル業界未経験で同ブランドを立ち上げる起業家 戸田氏の戦略は極めてシンプル!そのデザインや価格帯にも反映されているブランドの戦略や、モンゴルとの出会いについて伺いました。
プロフィール(ラズホールディングス株式会社 代表取締役 戸田貴久)
1990年、鳥取県出身。岡山大学経済学部卒業後に鳥取銀行に入行するが1年で退職。その後、上京しITベンチャー企業で下積みを経験。2015年1月に当社を創業。2017年5月に単身でモンゴルに移住。日本では見たこともない経済格差や社会問題を目の当たりにし解決の糸口を模索する。事業を通じてモンゴルの問題を解決することを決意。同年11月に事業売却で得た資金でモンゴルレザーブランドHushTugを立ち上げる。モンゴル現地に自社工房を設立し職人の採用と教育に力を入れ雇用の拡大を目指している。発展途上国ならではのトラブルを職人たちと力を合わせ解決しながら『モンゴルに新しい産業を創る』をミッションに日々活動中。
ラズホールディングス株式会社について
ー 事業内容について、教えて下さい。
モンゴルレザーを使ったレザーブランドの「HushTug(ハッシュタグ)」というブランドをD2Cで展開しています。自社でモンゴルに工場を持ち、仕入れから生産までを一括して、現地で行なっています。
ー ブランドの特徴についても、教えてください。
プロダクトの特徴でいうと、大きくは2つあります。
1.ブランドを前面に出さない”超シンプルなデザイン”
2.SPAによる、”価格”を抑えた商品展開
まず、一点目の「超シンプルなデザイン」についてですが、私たちの商品はブランド名すら刻印されていないアイテムがほとんどで、パッと見ただけでは、どこのブランドか分からない様になっています。
これは、私自身が上京してきて、ビジネスバックを買おうと思った時の購買体験にも紐づきますが、「ブランドが付いているバックは高いし、ブランド色が強いバックは自分がブランドに着られている感覚がして違和感を感じる」。そう思って、ブランド色のないバックを探せば、それが見つからない、という経験をしたのを原点に。超シンプルで、持つ人の邪魔をしないプロダクトを作ろうと考えました。実際、その「パッと見ただけでは、どこのブランドか分からない」という”特徴が無い”という特徴が、ユーザーにも評価されています。
※商品の一例:ロゴマークもなくシンプルなデザインが逆に目を引く
そして二点目の「価格」については、従来革製品と比較しても、2/3から半額程度の価格帯で商品を提供出来ています。この背景としては、仕入れから生産までを全て自社でやっているので、製造から販売のプロセスに中間業者を一社も介在させていません。デザイナーすら自社で抱えていないので、余計な中間コストをカットして、従来より安い価格帯で販売しても利益が出る構造になっています。
ー え!デザイナーすらいないんですね!
はい。現在は、まだ商品数が少ないのもありますが、HushTugを始めた私自身、ファッション業界未経験でこのブランドを立ち上げました。【顧客が欲しいモノを考えてプロダクトに落とし込む】といった経験の無い中で、現時点ではデザイナーは不要だと考えました。
ー では、商品開発はどの様におこなっているのでしょう?
まず、自分たちが欲しい商品の形に似たプロダクトを取り寄せ、現地の工場でそれをパーツごとに分解、余分なものをカットする作業に入ります。そのシンプルにする作業を経て、商品開発に繋げていきます。
ー なるほど。購買層としては、どういった方々を想定しているのでしょうか?
27~35歳の男性を想定しています。ユーザーの購買心理としては、年齢を重ねると共に、「身につけるものをちょっと良くしたい」と考えていたり、周囲からの反応を含め、自分の持つ物を気にし出す方たちが想定層ですね。後は消費を通じた社会貢献など、意味ある購買にも関心を向けている方々をイメージしています。
人口300万人に対して、動物は7,000万頭。知られざる”モンゴルレザー”について
ー ところで、「モンゴルレザー」って全く馴染みのない言葉なんですけど。モンゴルのレザーは有名なのでしょうか?
実際、モンゴルレザーの認知はまだまだそんなものだと思っています(笑)
ちなみに、モンゴルと聞いて、どんなことを思い浮かべますか?
ー うーん、、やっぱり遊牧民とあの特徴あるテントですかね。。モンゴルの産業や工業製品のイメージまでは、全く出てこないです。
私が初めてモンゴルにいったのが3年前になるのですが、正にイメージの通り、自国で目立った産業がない国なんです。そして、遊牧民のイメージそのままにめちゃめちゃ動物の多い国でもあります。どれくらい動物が多いか?と言うと、人口が約300万人に対して、動物は7,000万頭いると言われています。計算すると、一人につき24匹ぐらい動物がいる国がモンゴルなんです。
ー すごい動物いますね(笑)
つまり、動物の革が豊富にある地域にも関わらず、そこからモノをつくる技術や売り先が開拓されていない為、現地では余分な革が捨てられているといった現実があります。
ー なるほど。
合わせて、モンゴルにいる動物のほとんどが放牧で飼われているので、オーガニックで出来る革自体の質も良く、その革はイタリアンレザーの原材料として使用されていたり、高級自動車メーカーのシート素材として使用されてもいるんです。
ー へえ!じゃあ、実際モンゴルレザーに馴染みはなくても、使っている革製品がモンゴル産といったケースは多そうですね。革製品のブランドは、既に数多く存在していますが、そういったブランドとの差別化は、どこで図っているのでしょう?
組織の共通認識として、プロダクト面での競合優位性は無理だと考えています。私たちの商品に限らず、製品自体すぐに模倣が出来てしまうのが主だった理由です。
その中で、どこで差別化を図るか?といえば、「マーケティング」しかないと思っています。元々Webメディアやアフィリエイトに特化して事業を行なっていた知見を活かして、インターネットに特化してマーケを展開しているのが結果的に差別化となっています。非常に職人気質な方も多い領域だからこそ、周囲が苦手な部分で独自性を出しています。
25歳で月商2,500万円・単月利益数百万円。キャバクラ遊びを続けた末に改心
ー 起業をされた経緯についても伺いたいのですが、いつ頃から起業を意識していたのでしょうか?
新卒2年目のタイミングです。地方銀行の銀行員としてキャリアをスタートさせたのですが、祖父の代から会社を経営していることもあってか、銀行勤めが性に合いませんでした。ただ、当時はスキルも何もない中で、祖父の会社に入ることに違和感を感じた私は、「まずは自分で何かやってみよう」と自ら起業する方向にシフトします。
ー なるほど。そこから何を始めたんですか?
手元資金も突出したスキルも無かったので、元手をかけずに挑戦できることが“営業”か“IT”しかない自分は、そこから上京してアフィリエイトとWebマーケティングを必死に勉強しました。9ヶ月ほど都内のWebベンチャーで働いて、そこから自分で起業をしたという経緯ですね。
ー HushTugは、どんな経緯で生まれたのでしょう?
包み隠さずお話しすると、初めての起業が割と当たりまして。当時一緒に働いていたメンバーに恵まれていたこともあり、25歳のタイミングで自分はほとんど何もしなくても月商で2,500万円、利益でいうと月数百万円くらい出る会社になったんです。
ー え、すごい!
その時は本当に自堕落な生活をしていて。夕方に起きて、夜は「社員のモチベーションを上げる」という体でキャバクラにいって豪遊する、みたいな生活を半年間続けてました。
ー (笑)これ書いちゃっていいんですか!
全然大丈夫です(笑)26歳になったタイミングで、ふといつもの様にキャバクラで遊んでいると。これまでキープしていたボトルのネームタグを見つける機会があって、膨大な量の遊んできた軌跡を見たときに、「自分は何のために生まれてきたんだろう・・」と萎えちゃって(笑)そこから、もっと社会にインパクトのあることをしないとダメだよな、と考え直す様になりました。
ー めちゃめちゃおもしろいエピソードですね(笑)改心してからは、どんな行動を?
そこから肉のハナマサの創業者である小野さんにお会いする機会を頂き、小野さんが当時考えていたモンゴルのビジネスを見に、一緒に視察にいったのが初のモンゴルとの出会いでした。そこから実際に一年間、ビジネスプランは無かったですが、モンゴルに住みながらビジネスアイデアを探しました。そこから、現地でネイルサロンをやったり、コワーキングスペースをやってみたりと色々チャレンジはしたのですが、どれも鳴かず飛ばずな結果に終わり、事業を創っては、撤退するを繰り返していたんです。
ー ネイルサロンやコワーキングは、当時のモンゴルでは当たらなかったんですね。
はい。人口300万人という、日本でいえば静岡県よりも人口の少ないマーケットに、内需でビジネスを完結させること自体に無理があると学びました。国全体も含めて豊かにしていくには、モンゴル人からお金を頂くビジネスではなく、モンゴルの資源を活かして、外貨を稼いでいく仕組みにしない、と思考を切り替え、そこから「モンゴルレザー」という、まだスポットライトの当たっていない自国の資源を見つけ、HushTugは生まれました。
今後について
ー 中長期的な展開についてお教え下さい。
国内のみならず、世界への展開は早い段階で考えています。
モンゴル自体も、場所がロシア・中国に隣接している国ということもあって、グローバルに物事を考えていくのが当たり前な国ですし。直近では、カンボジアにテストマーケティングも兼ねて、路面店を出そうと計画しています。東南アジアでは、湿気が多く革製品の販売は向かないと業界内では言われていますが、高級ブランドもそれなりに売れている状況をみれば、勝機はあると思っています。
ー 最後に、記事内でお伝えしたいPR事項などあれば教えて下さい。
現在、弊社ではインターンを募集しています。
・月商1,000万円に迫るD2CブランドのWebマーケを現場で学びたいと思っている方
・発展途上国を絡めた世界への事業展開に興味を持っている方
がいれば、是非連絡を下さい。
ー 日本生まれのモンゴルレザーが海外でどう評価されていくのか、今後の展開がとても楽しみですね!今日は有難うございました。
こちらこそ、ありがとうございます!