「航空券やホテル予約は、早く取ればお得というワケではない」と、直近の旅行事情から説明をしてくれた春山氏。彼は、AIを活用し今よりもお得にチケットやホテル予約が取れる可能性を教えてくれる旅行検索サービス「atta(アッタ)」のファウンダーである。今回で二度目の起業となる同氏。彼の失敗から学んだこと、これからのスタートアップの投資・チームづくりに役立つお話を伺いました。
プロフィール(株式会社atta 代表取締役 春山佳久様)
北海道北斗市出身 UCLA航空宇宙工学科卒業。
新卒で電通に入社し、日経新聞を担当。その後、Googleに転職し、Sales ManagerとしてAdwordsを大手代理店向けにコンサルティング営業を担当。 2度の起業を経て、Huluの初期メンバーとして日本事業立ち上げ、Skyscannerにて日本を含む北アジアマーケット責任者を歴任。日本発の事業を世界に広げたいという想いからお菓子事業を展開するBAKEのCOOとして組織改善、海外展開責任を遂行。2018年3月に株式会社atta(旧WithTravel)を創業。世界中の旅行者に旅先で役立つ情報をテクノロジーを使って、ドラえもんのような存在:Travel Buddyになることことで、旅行を一層楽しむことができるツールを提供したい。日本発アジアへ、事業推進中
株式会社attaについて
ー 事業内容について、教えて下さい。
AIを活用した旅行検索サービス「atta(アッタ)」の企画と開発・運営を行っておりまして、
航空券とホテル・民泊が検索ができるアプリやウェブサービスを日本語と英語版で提供しています。
ー AIを活用した旅行検索サービス「atta」とは、どんなサービスなのでしょう?
attaでは、様々な旅行サイトの航空券・宿泊先を一括で検索し、それらのサイトを比較せずともアプリの中で旅行者の予算に合った価格のものを探すことが出来るというのがサービスの特徴ではありますが、正直ここに関しては他社でも同じ機能を提供しているサービスも為、サービスのベーシックな機能だと認識しています。
一番の特徴としては、既に現地にいく日程が決まっている特定の航空券や、特定のホテルの状況をAIで解析し、【現在で予約するより、今後、より安くなる可能性(確率)をサービス内で提示する】機能を付けています。実際に安くなると、スマホにプッシュ通知が届き、ユーザーはより安くフライトや宿泊先の予約が出来るという仕組みになっています。
他には、満室が続いているホテルの空室が出た際にプッシュ通知が送られる「空室アラート」機能や、滞在先でよりリッチな宿泊体験を提案する「レコメンデーション/アップセル提案」機能もあり、「追加〇〇円で今予約しているホテルから四つ星ホテルに変更できますよ」といった内容から、予算にあった旅先の提案などをする機能も付いています。
ー いま予約するより、安くなる可能性を提示してくれるって新しいですね!一般的には、既に日程や行く場所が決まっていて、「宿を探す・チケットを取る」という形でポータルサイト等を利用しますが、attaが使われるシーンはどんな時を想定しているのでしょうか?
場所や日程が決まっている中で航空券・ホテルを探すのは、現在の旅行の王道な検索スタイルかと思います。一方で、ヨーロッパ式の探し方というのもありまして、向こうは休暇も長いので『予算20万円で、1ヶ月間の期間でどんな場所にいけるのか?』という探し方をするんです。
ー へえ!予算と滞在期間から、まず行ける場所を探し始めるんですね。
そうなんです、私たちもそれをサービスで出来る様にしていまして、アプリ内の航空券を探す項目の下に『すべての場所から検索』というボタンを置いており、そこからまずは旅程を入れれば、大体どれくらいの金額で、どんな国にいけるのか?が値段順に出る様になっています。
ー あーなるほど。この検索の仕方は新しいですね!見ているだけでも楽しそう!!
attaでは、既にAという場所に旅先を決めている人でも、この値段であればBという選択肢もアリだな、という新しい旅先の発見・提案も啓蒙していきたいと思っています。
自分の知っている範囲を超える新しい旅先の「提案」と「体験」へ。
ー サービスから値段の予測や提案をしてくれることで、ユーザーに提供出来るメリットについても改めて教えてください。
私自身もそうなんですが、海外旅行が好きな人って既に色々な場所にいっているので、次の旅先に悩むことが結構多いんです。そんな時にattaを使うことで「自分の知っている旅先の範囲を越える、新しい提案と発見」を提供出来ると考えています。
加えて、現状は「予算〇〇円でいける旅先」を探そうと思った場合、膨大に情報を検索しなければいけないのですが、その検索の手間もサービスを使えば、一回の検索で解消出来るというメリットも提供しています。
ー 領域的には、メタサーチ(横断検索エンジン)の領域にあたるのかと思いますが、そういった競合サービスとの優位性は、どんな点に持たせているのでしょうか?
国内海外の同様のサービスを意識しながら、大きくは2つの点で優位性を図ろうと意識しています。
1.モバイルファーストに特化したUIの強化
2.より安くいける機会の提供
一つ目の【モバイルファーストに特化したUIの強化】に関しては、まだまだモバイルファーストのUIを提供しているサービスは多くなく、我々としては出来るだけ分かりやすく・モバイル端末で完結出来る様なデザインしていきたいと考えています。
二つ目の【より安くいける機会の提供】に関しては冒頭でも説明した通り、今この瞬間にチケットや宿泊先を取るよりも安くなる可能性を、AIの解析を通じて可視化し、ユーザーがお得に旅行にいける機会を提供したいと思っています。
「アイデアよりもモノをつくれるチームかどうかで投資は決まる」
ー 起業することやスタートアップへの意識は、いつ頃から持っていたのでしょうか?
大学生の時に、ソフトバンクでアルバイトをしていた時期があるのですが、そこで孫さんの経営哲学やスタートアップへの想いを現場で勉強させてもらって、そこから興味を持ったのが最初のきっかけです。ただ、当時はどうやって立ち上げるか?もよく分かっていなかったので、新卒では電通のメディア担当としてのキャリアをスタートしました。
ー そこから起業をされたのは、どのタイミングになるのでしょう?
新卒で入社した電通を2年ほどで辞め、Googleに転職したのですが、とつぜん家業の農業を支援しなければいけないというタイミングで農業関連法人を立ち上げたのが初めての起業になります。当時は、農業 × IT で生産物のトレーサビリティが管理出来るSaaSの様な仕組みを考えたのですが、初めての起業ではうまくいかないことも多くて、そこでいっぱい学びました。
ー そこでの学びも是非教えてください!
スタートアップや起業をする人って、「この知識があれば」「このスキルがあれば」という形で起業前の線引きをしいて、準備をしている方も一定数いると思うのですが、
経験を積めば積むほど『アレもしならないといけない』『コレも出来ないと・・』と、どんどん湧いてくる新しい課題に、中々最初のステップが踏めないということは多いと思います。
ー 知識をつけるほど、身動きしづらくなってしまうんですね。
そうですね。ソフトバンク時代に、孫さんに一言だけ言われことがって、『経営者は経営者にならないと育たない』とボソッと言われたのが現在も頭に残っていて。
会社をはじめれば、分からないことだらけで自ずと勉強しないとダメになるので、その環境が自分を成長させてくれたな、と感じています。実際に、最初の起業では資本政策も失敗しましたし(笑)
でも、それって本で読んだだけだと分からないことだったので、そういったことも含めて良い経験が出来たと感じています。
ー なるほど、、これから起業をする方・(起業を)したいと思っている方にむけても、何かアドバイスになる様なことはありますか?
attaを起業したタイミングは、チームとアイデアしかない状態でありながらも、投資家について頂いたのですが、改めて起業をする上で大切だなと感じたのは、『アイデアよりも、モノをつくれるチームかどうかで、最初(シード)の投資は決まる』ということです。
最初の創業は、エンジニア2名とデザイナー、それと自分の4人だったのですが、「どんなプロダクトでも、この4人がいればつくれます」という背景を持ったメンバーを揃えました。これがもし自分だけだったら、いくら業界のバックグランドやコネクションを持っていたとしても、出資にならなかったでしょうし、出資になったとしてもバリュエーションは当時より低くなっていたと思います。
なので起業を考えている方には、ある程度コミットメントしてくれるチームがつくれるタイミングで、起業をするというのも一つのポイントだなとは思っています。
自分も投資をする立場で考えたら、「この人、本当につくれるのかな?」とは考えるでしょうし、スタートダッシュ出来るチームに出資をするのが普通だと思うので、「起業する前に準備することは何ですか?」と聞かれたら、『一緒にコミット出来るチームを事前にどれだけつくれるか』と答えます。
ー なるほど、とても参考になります!春山さんは、そういったメンバーをどうやって選定したんですか?
自分の場合は、キャリアの中で出会った「この人たちとやりたい!」というオールスター全員に声をかけまして「一緒にやりませんか?」と口説いてまわった感じですね。
デザイナーは自分の元部下ですし、エンジニアも在籍していた会社のエンジニアを招集しました。フロントエンドに関しては、自分が通っていたプログラミングスクールの先生です(笑)
今後について
ー 「atta」の中長期的な展開についてお教え下さい。
現在は一番の訴求ポイントとして、サービスを使うことで「より安く」旅先にいけることを旅行者にうたっていますが、旅行の満足度を左右する最終的な要素は、ROI(費用対効果)だと思っています。
安くても、質が悪ければ、そのフライトやホテルを選択する理由にはならないと思うので、最終的には、「追加〇〇円で、四つ星ホテルから五つ星ホテルに変更が出来た」「予算5万円で考えていた国内旅行から、海外に変更できた」等の提案と発見による、ユーザーエクスペリエンスを提供出来るサービスになっていきたいと考えています。
直近では、この1月に資金調達のニュース(※)も発表させて頂きましたが、今回の資金調達を機に、日本・東南アジアでのマーケティング・PR活動にドライブをかけていきます。
更に4月には、旅行に関する興味関心をより発見しやすくなる新たなサービスもローンチ予定です。
※:ビッグデータとAIを駆使したトラベルサービス「atta」を運営する(株)attaがシリーズAラウンドで約3億円の第三者割当増資を実施。
ー ビックニュースが盛り沢山ですね!最後に、記事内でお伝えしたいPR事項などあれば教えて下さい。
次、皆さんが旅行にいきやすいタイミングはGWになるかと思いますが、attaの「すべての場所から検索」は是非使って欲しいです。旅行予算とにらめっこしながら、新たな旅先を決めるのでもいいですし、「こんなところもいけるんだ!」という、新しい旅先との出会いを体験してくれると嬉しいです。旅先の写真を眺めているだけでも楽しいですよ。
ちなみに、私はその機能を使って年末にカザフスタン経由でウズベキスタンに行ってきましたよ!年末年始なのに6.5万円以内でいける場所とは知らず、思わぬ出会いとなりました(笑)
ー ご自身でもattaのレコメンドを利用して旅先決めたんですね!(笑)これからの日本・海外での広がりもとても楽しみなサービスです。今日は有難うございました!
こちらこそ、ありがとうございます。