2019年2月、まだローンチもされていないサービスが構想発表の段階でスタートアップ界隈の話題をさらっていったのは記憶に新しい。サービス名は「SOLECT(ソレクト)」。“SNSでの投稿が報酬になる”という発想は、インフルエンサーと一般ユーザーの垣根すら無くす、新鮮かつ斬新な発想だった。サービスの起案者は、若干21歳にして二度目の起業を経験する押田はるか氏。型にハマらない発想で、これからの時代をつくるニューウェイブな起業家のインタビューです。
プロフィール(株式会社inflife 代表取締役 押田はるか氏 )
1997年生まれ、日本電子専門学校卒。
2017年に株式会社Exhumeを設立。文学専用の小説投稿サイトを運営。
2018年にキヤノン株式会社にて新卒入社。
2018年7月に株式会社inflifeを設立し代表取締役に就任。ライフスタイルメディア「STYLE」を運営。
2019年2月に新しいオススメ紹介サービス「SOLECT」の立ち上げ。
株式会社inflife について
ー 事業内容について教えて下さい。
SNSにオススメを投稿するだけで成果報酬を受け取れる「SOLECT(ソレクト)」というサービスの企画と開発をしています。
ー オススメを投稿するだけで成果報酬を受け取れるサービス「SOLECT(ソレクト)」とは、どんなサービスなのでしょうか?
簡単にいうと、誰でも、好きなタイミングで、好きなアプリやサービスを、好きなだけSNSに投稿することでお金が稼げるというサービスです。
例えば、現在のインフルエンサーマーケティングでは、普段パズドラをやっているユーザーでも、クライアントからの依頼が発生したら、「モンスト楽しい!」って発信をするワケです。でも、本質的にやりたいのはパズドラだし、オススメしたいのはパズドラなハズですよね? その、「パズドラおもしろいな、パズドラ紹介したい!」ってタイミングで紹介が出来るプラットフォームがSOLECTです。
それをインフルエンサーという限られたユーザーだけでなく、【誰でも出来る】というところに落とし込んでいるのが特徴です。
ー 実際、発信時に使用するプラットフォームは既存SNSなのでしょうか?
はい、SOLECTを通じて発信するユーザーのオススメは、Twitterに反映される形になります。
ー オススメとして紹介が出来るもののジャンルは、どういった種類があるのでしょう。
現時点では、アプリのみですが、今後はコスメやファッションといった分野にまで拡げていきたいと思っています。
現状のレコメンド機能にケンカを売りたい。目指したいのは、最適ではなく”最愛”のレコメンド
ー ローンチ前から、Forbesに取り上げられるなど一気にメディアやスタートアップの注目を引いたことも話題になりましたが、その辺りの反応はどう見られていますか?
広報というものは初めてでしたが、仮説を立てて実行するまでの流れは普段の業務と何一つ変わらないと思うのである意味想像通りだと思っています。しかし、思いがけないお声がけや採用の問い合わせが来たのは驚きでした。
ー 周囲は、どんな反応だったのでしょう?
(おもしろい)と言ってくれている反応もあれば、(感情にお金を載せることを上手くやらないと批判出そうだよね)という意見があったり、、賛否両論の意見を貰いましたね。
個人的には、”感情にお金を載せる”ということを、まだ全員がやりたがっていないと思っていて、他社のサービスですが、いいね!をするだけでお金をもらえるサービスも出てきたりしている中で、少しずつ、それが認知されて来ていることと、これまでのSNSのマネタイズ手段であった広告とは、また違った手段のマネタイズとして浸透していくのだろう、と予測しています。
ー 確かに、SOLECTを知った時は(今の時代にマッチしているサービスだな)という印象は受けました。人やサービスからレコメンドされること自体に、もう違和感はないですもんね。
あ、その文脈で言うと、僕は現状のレコメンド機能にケンカを売りたくて・・
ー (笑)ケンカというと?
今のレコメンド機能って、最適なモノを最適なタイミングで紹介してくれますよね。それって【最愛】ではないな、というのが自分の見解なんです。
例えば、偏差値50くらいの人がいた時に、偏差値50前後の赤本をお勧めするのがAmazonのレコメンド機能じゃないですか?でも、本当に目指している大学は、実は早稲田大学で、それをレコメンドとして勧めてくるのってお母さんや塾の先生だったりしますよね?
ー はは(笑)確かにそうですね!
目指しているレコメンドの世界観は、そういう世界で。こういうレコメンドが出来るのがSOLECTだと思っています。
ー それこそが「最愛」のレコメンドということですね。
そうです。最適ではなく、最愛のレコメンドの極値は「人」からのレコメンドだと思っています。
元は小説家志望!? 19歳で初めての起業をした経緯に迫る。
ー 現在で2社目の起業になるのかと思いますが、初めて起業をされたきっかけは、何だったのでしょう?
専門学校に通っていた19歳の時に、初めて起業をしたのですが、自分は元々小説家志望だったこともあり、当時、作品を書いては色んな賞に応募をしていました。小説って、だいたい一つの賞に約3万くらいの応募があって、その中から選ばれるのは、5作程度っていう世界なんです。それで、残りの29,995の作品は、押入れかデータとして眠っているといった状況がある一方で、当時インターネットに上がっている小説は、アニメか漫画の原作といったものが多くて、(これもっと文芸作品をネットに上げた方が良いよな)ということで「文芸小説の完全承認制投稿サイト」をつくったことが、初めての起業の経緯でした。
ー それは“趣味レベル”ではなく、初めからプロダクトとしてローンチし、マネタイズまで考えての起業だったのでしょうか?
はい、そのタイミングで0からプログラミングも学んで、法人登記までしました。
自分は、祖父も父親も叔父も経営者という家系に生まれ育っていて、自ら業を起こして、お金を稼ぐこと自体が感覚的にはアルバイトをする感覚に近かったんです。アルバイトって、自分の時間を対価としてお金を貰うじゃないですか。でも、それって授業を受けている時にお金は貰えないですよね?だけどそれがプラットフォームであれば、授業を受けてる間でも広告収入でお金が入ってくる。それが一番健全な稼ぎ方かな、と自分は思っていて・・
ー すごい発想(笑)そんなこと考えながら、授業受けていたんですか!
アルバイトをしたことはあるのですが、いつも揉めたりバイト先にとって痛いような発言をしてしまうことが多く、時には解雇されてしまうことがありました。。
ー ああ、でもそれはちょっと分かる気がしますね。
ー 一同:(笑)
「大企業の作り方を学びに入社をしたが、実際は「働き方」しか学べなかった」新卒で入社した会社を5回出勤して辞めた理由
ー そこから一度、社会人として会社に入っているんですね!何か意図があってのことなのでしょうか?
最初に立ち上げた会社を維持しながら、それを隠してキャノン(株)に入社しているのですが、
大きい組織をつくりたいと思った時に、(一度、中に入ってみないと分からない)というのが当時考えていたことでして、それを学ぶ目的で入社をしました。
ー 実際に入社をした感想としては、どうだったのでしょうか?
大企業では「働き方」しか学べず、つくり方の文脈は一切学べなかった、というのが正直な感想です。僕は、実際に体験してみないとその文脈の話を他人にすべきではないなと思っているので、一度入社したことに後悔はありません。
ー どんなところで、それを感じたのでしょうか?
一般的な企業って、出勤が9:00で退勤が17:00ですよね。これ当たり前の様に思えるのですが、小さい頃から、身を粉にして働いている祖父と父親を見て育った自分にとっては、(9:00から17:00まででいいの?)って感じてしまったんです。それで3日目くらいに「もっと働きたいんです」というのを社内で相談したことがあって、『そうはいっても研修期間だからやることも少ないし、そんなに長く働いたところでだよ』と返された時に、それを感じたのと同時に(あ、これは自分には合わないんだな)と感じました。
ー 身近な存在が、そんな状況であれば、そこに物足りなさを感じるのは当然でしょうね。
はい。話しをしていて思ったのは、自分は働き方を父の背中をみて学び、生き方は祖父の背中をみて教わったような気がしています。なので、4月に入社をして5回ほど出勤をし、5月の頭には退職していました。
ー なるほど(笑)
サービスを想いついた経緯など
ー サービス自体は、どのような経緯で生まれたのでしょうか?
新卒で入った会社を辞めて、2社目の起業をしてから、実はお金のない時期が長かったんです。
そのタイミングでは、1社目でやっていた文芸小説の投稿サイトもクローズしていたのですが、当時のユーザーさんからTwitterのDMで「押田さん、最近のオススメ小説を教えて下さい!」って連絡を貰う機会があったんです。結果的に、その時の自分はお金が無くて、ホームページなどの受託で食いつなぐことに必死になっていて、その人にオススメを出せるほどの時間と労力を避けなかったんです。結果的に今、仕事が忙しいんでオススメ出来る小説ないです』みたいな返し方をしてしまいました。その時に気づいたことが2つあって、
1つ目は「信用している人からのオススメはものすごい情報価値として高い」ということ、2つ目は「お金がない時の人間の思考は健全じゃない」ってことに気がついて、そこから『お金が無い人を、オススメ経由でマネタイズさせる仕組みがあったらいいな』と考え始めたんです。
ー なるほど。
例えば、メルカリや今流行っている様なサービスって、倉庫に在庫としての資産を持っていたり、自分の顔面偏差値が高く無いとお金が稼げないじゃないですか?
皆んなが普遍的に持っていて、それをお金に変えられる資産って何があるだろう?って考えた時に、SNSのフォロワーだと思ったんです。そこから、【SNSのフォロワー】でお金が稼げる仕組みって何かないか?って思った時に、オススメと掛け合わせることで今のサービスとビジネスモデルに辿り着きました。
ー 確かに。インフルエンサーという言葉が認知されて、「フォロワー」は立派な資産だということは認識としてありますしね。
Twitterを例に出せば、600人くらいのフォロワーを持っている人は山ほどいますよね?
600人のフォロワーをもつ一ユーザーが、仮に、その1%に当たる5-6人くらいに週に一度オススメをして、1回あたりに500~1,000円くらい稼げれば、月の収入で言ったら2万円くらいになります。これって、十分に生活の底上げが出来ているなと思うんです。
お金が無い人を全員を幸せにするってことの究極は、「GDPを上げる」ってことです。それはかわいい子だけにお金を配っていてもGDPは絶対上がらなくて、日本全体の可処分所得を2万円上げるくらいまで、拡げて考えないとGDPの底上げには到達しないですよね。そういう状況がある中で、やっぱり【誰でも使える】というのは、サービスを立ち上げるにあたって明確に置きました。
今後について
ー 中長期的な事業展開についてお教え下さい。
SOLECTを通じて、インフルエンサーや影響力のある一般ユーザーを使ったマーケティングに、まだ手の伸びていない企業やインフルエンサーの起用のハードルが高いと感じている企業や口コミを一元管理できていない企業に、もっと気軽にインフルエンサーマーケが出来る様な環境を整備したいと思っています。また、SOLECT上であらゆるものをオススメできるような体制を整えていきます。
ー 記事内でお伝えしたいPR事項などもあれば最後に書きます
企業向けのタイアップを獲得出来る営業メンバーの採用をやっているので、興味のある方がいれば連絡下さい。あとは、ユーザー側のSOLECTの事前登録も再開しているので、こちらも興味のある方はWeb等チェックして頂けたらと思っています。現在、正式なローンチを7月として、色々と準備を進めている状況です。SOLECTの話を聞いてみたい導入してみたいといった興味のある企業様がいらっしゃいましたら問い合わせやTwitterのDMでご連絡いただけると幸いです。
ー まずは、7月のローンチが楽しみですね!今日は有難うございました。
ありがとうございます。僕も、楽しみです(笑)