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現物出資の落とし穴

公開日:2016.11.30

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こんにちは。税理士の大美賀功貴です。今回は会社設立時の現物出資についてお話します。

現物出資とは

資本金が小さいと、小さな会社と思われてしまうので資本金は見た目だけでも大きくしたい。でも、先立つものがなく現金は100万円くらいしか出せない。そんな悩みを持っている方におすすめの方法が現物出資です。

現物出資とは、現金以外の「物」を出資することをいいます。資本金は、現金以外で代替することも可能なのです。

ここでいう現金以外の「物」とは、事業に使用することが出来ればどのようなものでもかまいません。土地や建物、車やパソコン、家にある書棚などでも可能です。

現物出資は、①出資物の価格の調査及び証明、②定款への記載、③出資者からの財産の引継ぎの3つの行為を行えばどなたでも行うことができます。

現物出資の落とし穴

しかし、ここまで読んで「な~んだ。現金がなくても今あるもので資本金を大きく見せることが出来るのか!」と思っていただいた方、やっぱり世の中そんなに甘くありません。

現金がないにもかかわらず「それでは現物出資で設立をお願いします。」と言ってしまったら最後です。設立手続きにかかる費用が増加してしまうのと、さらに大きな落とし穴が待っています。 

設立手続きにかかる費用が増加

まず、設立手続きにかかる費用が増加してしまう原因ですが、先ほどの現物出資を行うための①の行為である「出資物の価格の調査及び証明」にあります。

現物出資の金額が500万円以下でありかつ不動産でなければ、取締役が、出資物の時価を調査して、その証明として「調査報告書」を作成すればOKですので費用があまりかかりません。しかし、500万円以下であっても不動産であれば不動産鑑定士が作成した「鑑定証明書」と、弁護士、税理士等が作成した「適正価格証明書」を用意する必要があり費用がかかります。それ以上に現物出資の金額が500万円を超える場合には、裁判所に出資物の調査をする検査役を選任してもらい、その方に出資物の調査をしてもらわなければいけません。これには大変多くのお金がかかります。

ここまでは、手続きを外部に依頼するわけですから「設立にかかる費用が増加してしまうかもしれない」と想定できる方も多いかもしれません。しかし、本当の大きな落とし穴は、③の出資物からの財産の引継ぎにあります。

税金がかかってしまう点

結論から言ってしまうと、思いもかけないところに所得税、登録免許税、不動産取得税、消費税がかかってしまいます。

不動産を現物出資すると個人に所得税がかかる

個人でお持ちの不動産を現物出資して法人を設立すると法律上は個人の不動産が法人へ移るわけです。そのため個人から法人へ不動産を譲渡したことになり、所得税がかかってしまうのです。「自分の不動産を自分で作った法人へ移すだけでどうして譲渡したことになるの?」って感覚の方は多いと思いますが、自分で作ったとしても「個人」と「法人」は別の人格です。よって誰が作ったかに限りません。他人に不動産を移して(譲渡して)お金(株)をもらったら所得税がかかるのと同じことです。

不動産を現物出資すると法人に登録免許税と不動産取得税がかかる

法人からすると個人から不動産を取得したことになります。よって法人は取得にかかる登記(個人の所有から法人の所有へ移転する登記)をすることになり、登記の時には登録免許税を納めなければなりません。そして、移転登記が終わると不動産取得税の通知が送られてきます。

法人は設立一期目から消費税を納めなければならない

法人を設立したときに資本金が1000万円以上になると、消費税の課税事業者になります。

課税事業者になると言うことは、消費税を納めなければなりません。原則的には設立から二年間は消費税を納めなくても良いという規定があります。しかし、資本金が1000万円以上になると設立時から消費税を納めなくてはならないのです。つまり不動産のような価額の高いものを現物出資し資本金が1000万円以上になると納めなくても良い消費税を納めることにもなりかねません。

まとめ

以上のように、「お金がないけど資本金を大きく見せたい。」という安易な理由で現物出資を行ってしまうと、その先には大きな落とし穴がまっているかもしれません。

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投稿者について
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大美賀 功貴

1977年群馬県太田市生まれ LEC東京リーガルマインド大学院大学 高度専門職研究科 会計専門職専攻修了 2014年税理士登録 大美賀功貴税理士事務所 所長

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