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従業員のアウトプットに応じ合法的に賃金を調整する方法

公開日:2018.12.06

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起業家の方が従業員を雇用するとき、従業員の賃金をいくらにすべきかを悩むことが多いと思います。

実際に働いてみないとどれくらいのパフォーマンスを発揮してくれるかは分からないので、とくに期待を込めて高い賃金で雇入れたような場合、経営者として従業員を信頼することが大切であるものの、「本当に賃金に見合ったアウトプットをしてくれるだろうか?」と不安が全くないという訳にもいかないと思います。

そこで、本稿では、雇入れ後のパフォーマンスを踏まえて賃金を見直す際、とくに賃金を引き下げる場合にトラブルにならない方法を3つ紹介します。

 

有期雇用契約を結ぶ

第1は、有期雇用契約を結ぶことです。

正社員契約を含む無期契約の場合、自己都合や定年などで退職になるまで、入社時の雇用契約の内容が続くということになります。雇用契約の内容を変更するためには労使の合意が必要であると労働契約法で定められていますので、いったん結んだ雇用契約の内容を変更することには困難が伴います。

そこで、たとえば最初の6か月とか1年間とかは、「お互いの相性を確かめる」という趣旨も込めて、まずは有期契約からスタートすることがおすすめです。

有期契約期間が満了して労使お互いに問題がなければ、改めて労働条件を協議の上、有期契約を更新するか、無期契約や正社員契約に移行します。もし、パフォーマンスと賃金が見合っていなければ、会社側は賃金を引き下げての契約更新を打診できますし、逆にパフォーマンスに対して賃金が低ければ従業員側は賃金の引き上げを打診することができます。協議が整わなければ期間満了で雇用契約は終了となりますので、使用者にとっても従業員にとっても公平感があります。

加えていうならば、6か月以上雇用した有期契約者を正社員に登用し、さらに6か月継続雇用した場合は、「キャリアアップ助成金」の対象となり、条件によって金額は異なりますが、対象者1人あたり最大で72万円が支給されます。

 

「昇給」ではなく「賃金改定」を行う

第2は、雇用契約書で「昇給」ではなく「賃金改定」という文言を使うことです。

雇用契約書には通常、昇給に関することが記載され、たとえば「昇給は毎年4月に行う」というような文言が書かれると思います。

ここで「昇給」という文言を使うと、賃金は毎年4月に上がっていくか、悪くても据え置きで、下がることは無いという期待権が従業員には生まれることになります。人事考課が悪かったから基本給を引き下げたとしても、裁判になった場合は違法と判断されてしまうリスクがあります。

そこで、「昇給」ではなく、上方向にも下方向にも変わる可能性があるニュアンスを含ませるため「賃金改定」という文言を使うことが望ましいということです。詳細の説明において「賃金改定は毎年4月に行う。改定には昇給・据置・降給が含まれる。」と明記しておけばさらにリスク回避の効果があります。

ただし、降給を行う際には、使用者の好き勝手に行って良いわけではなく、公正な社内基準に基づき、社会通念上も相当な範囲であることが必要です。

 

基本給1本ではなく手当を活用する

第3は「期待手当」や「調整手当」という手当を活用することです。

手当の名称は上記に限らず会社の判断で名前を付けていただいて構いませんが、たとえば額面で50万円支払いたい場合、「基本給50万円」とはせず、「基本給40万円+期待手当10万円」とするというように、基本給1本ではなく基本給と手当に分けるというイメージです。

基本給を減給することは難しいですが、手当は、その手当の支給条件を定めれば、会社が任意に増減させることは法的にも比較的柔軟に認められます。

上記の期待手当であれば「期待手当は入社1年間の期間限定手当とする。ただし、入社時に労使で合意した○○の条件を達成した場合は、基本給に組み込むものとする」というように、一定の成果を出せば基本給に編入され、そうでない場合は消滅するというような定め方をすることも可能ということです。

 

まとめ

起業したばかりの会社では、まだ就業規則や賃金規程などが整っておらず、あまり深く考えないまま「基本給1本」「無期契約」といった条件で雇用契約を結んでしまうことがあるかもしれません。

経営体力のある大企業であれば問題ありませんし、むしろ大企業としての社会的責任を果たしていると評価することができます。しかし、経営体力の乏しいスタートアップや小規模企業では、従業員の賃金とアウトプットが見合っていなければ、たちまち経営危機に陥ってしまいます。我が国は解雇規制も厳しいですので、賃金の引き下げができず、解雇もできないということになると、身動きがとれず人件費倒産が発生してしまうリスクも否定できません。

ですから、採用の際には、もちろん採用される方にしっかりと説明を尽くして合意を得た上にはなりますが、少なくとも会社の経営体力が整うまでは、賃金を柔軟に調整できる形で雇用契約を結ぶことが望ましいと言えます。

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投稿者について
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榊裕葵

東京都立大学法学部卒業後、上場企業の海外事業室、経営企画室に約8年間勤務。独立後、ポライト社会保険労務士法人を設立し、マネージング・パートナーに就任。「社員から信頼される会社作りをサポートする」を経営理念として、顧問先の支援に当たっている。

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