導入3年が経過するストレスチェック制度
12月1日でストレスチェック制度の導入から3年が経過します。ストレスチェック制度は2015年12月1日施行の改正労働安全衛生法が根拠となっています。一定の規模(従業員数50人)以上の事業所は制度が義務化されていて、規模が小さい事業所は、当面は努力義務にとどめられています。ストレスチェック制度導入の背景にはハラスメントや過労によるうつ病などの精神障害の増加があります。
厚生労働省の2017年の統計で精神障害による労災認定は1,732件請求されており、このうち506件が支給決定になっています。(請求は前年比146件の増加、支給決定は8件の増加)請求と支給決定の両方で2013年度以降、件数が増加し続けています。
年1回のストレスチェックの実施が求められていることから、多くの企業が3回目のストレスチェックを実施済みであることが想定されます。石の上にも3年という格言から、ストレスチェック制度のあり方を振り返るべき時期を迎えています。
三位一体での取り組み
ストレスチェック制度はアンケート方式で行われ、回答者全員に対する個別のフィードバック、組織単位の傾向把握が行われます。アンケートでは「ストレスの原因」、「心身のストレス反応」、「ストレス反応に影響を与える項目」を調べます。調査結果は点数化されるとともに「セルフケアに関するアドバイス」も含めてフィードバックされます。そしてストレスの度合いに関わらず、本人の希望に基づき面接指導やカウンセリングを受けることができます。現在の職場で3年以上勤務している人は前年及び前々年の点数と比較ができます。
企業が導入する様々な制度は3年目にマンネリ化の傾向を示すことが多分に懸念されます。高い期待のもとに制度が導入され、2年目には1年目の反省を踏まえて変更や改善が加えられます。しかし3年目以降は熱意が下がり、かたちを整えるために行われるようになることがあります。
ストレスチェック制度をマンネリ化させずに、有効に活用するには回答者、管理職、人事部門の三位一体での取り組みが必要です。回答者にとってはセルフケアと呼ばれる自己管理において主体性を発揮することが期待されます。「セルフケアに関するアドバイス」で面接指導やカウンセリングの必要性が記述されている場合、面接指導やカウンセリングを受けることなどが主体性を発揮する上での実例になります。
管理職にはラインケアと呼ばれる役割が期待されます。ラインケアの役割を果たすには3つの要素が必要です。1つ目は自部門のメンバーを観察すること、2つ目は気になるメンバーがいる場合には対話を通じて本人の状況を確認することです。3つ目は状況確認の結果を踏まえて、人事部門や産業医などとの橋渡しを行うことです。
人事部門に期待されるのは、他の人事施策と関連づけながらラインケアとセルフケアが十分に機能するような環境を整えることです。このように本人、管理職、人事部門が三位一体で取り組むことがストレスチェック制度の有効活用に結びつきます。
働き方改革への結びつけ方
人事部門にはストレスチェック制度を働き方改革に結びつけることが期待されます。働き方改革は、とかく勤務時間管理の面が注目されがちですが、もっと視野を広げて望ましい職場環境を整えることを目指して進めるべきです。望ましい職場環境を整える上で目標とすべき状態には「健康職場モデル」があります。「健康職場モデル」とは、米国立労働安全衛生研究所が提唱している考え方であり、「職場満足度」と「仕事の生産性」が両立している理想的な状態のことです。
ストレスチェック制度で「健康職場モデル」の条件である「職場満足度」を確認することができます。ストレスが過重なメンバー、ストレスが過重な組織が少ない場合は「職場満足度」は高いと判断できます。ストレスチェック制度の結果を真摯に受け止めることが必要であり、「職場満足度」が低い場合には高めるための対策を講じてこそ、ストレスチェック制度を働き方改革に結びつけることができます。「職場満足度」を高めるには、人事部門の努力だけではなく、職場の管理職の協力が必要不可欠です。各社の人事部門と管理職が二人三脚で、ストレスチェック制度を「職場満足度」の向上に活用することが期待されます。