地震対策としてのBCPの普及
6月の大阪北部地震に続き7月には西日本が豪雨に見舞われ、平成に入ってから最大の被害が発生しました。
また秋口に掛けて大型化している台風が日本に上陸することもありえます。
こうした状況から日本企業にとって災害対策としてのBCP(Business Continuity Plan、事業継続計画)はより一層、重要性が高まりつつあります。
日本企業がBCPの重要性を認識するきっかけになったのが2011年3月の東日本大震災です。
東日本大震災の影響について、インターリスク総研が行った調査結果から、事業継続への取り組みが加速したという回答が42.6%、経営層の理解が深まったという回答が41.9%となっています。東日本大震災後も2016年4月の熊本地震が発生したことから、日本企業におけるBCPは地震対策として普及してきました。
BCPに対する中小企業の取り組み
BCPに対する取り組み状況については大企業と中小企業では差があります。
インターリスク総研は2006年以降、定期的に上場企業を対象にBCPの策定状況を調査しています。東日本大震災後の最も新しい調査結果では、BCPを既に策定している割合が30.3%、策定中または予定がある割合が38.1%となっており、合計すると約70%がBCPに取り組んでいます。
中小企業の取り組み状況は2016年版中小企業白書で確認できます。2015年12月の段階では、中小企業でBCPを策定している割合が15.5%、策定中の割合が9.2%、策定する予定がある割合が10.9%となっています。合計しても35.6%にとどまります。
中小企業がBCPを策定していない理由としてはスキルとノウハウが不足していることが最も多くなっています。内訳は製造業の54.0%、非製造業の46.0%がスキルとノウハウが不足していることを理由に挙げています。
BCP策定におけるスキルやノウハウの不足を解消するための方法の一つに外部の専門家の起用があります。起用する専門家を適切に選ぶためには、BCPを2つの側面から捉えることが必要です。
1つ目は災害などのリスクに備えること、もう1つは事業中断に備えることです。前者の災害などのリスクに備えることでは、リスクをいかに想定するかが重要です。そして後者の事業中断に備えることは、想定したリスクが発生した後に業務を復旧して継続することです。
業務の復旧は3つのステップから構成されます。1つ目のステップは業務の重要度と優先度と決めることです。2つ目は復旧目標時間を設定します。3つ目は目標時間内に復旧させて、業務を継続するための必要事項を洗い出して準備することです。
この2つの側面からBCPを捉えることによって、適切な専門家を選ぶことができます。
BCP取り組み上の課題
7月の西日本豪雨から、災害などのリスクに備えることの見直しが必要になっています。内閣府が昨年度に行った「企業が想定しているリスク」に関する調査には1814社が回答しました。
企業が想定しているリスクで最も多いのが地震です。回答企業の92.0%が地震をリスクとして想定しています。以下、2位から6位には59.3%の火災・爆発、49.3%の新型インフルエンザ等の感染症、47.8%のインターネット等の通信の途絶、42.3%の津波、37.8%の電力等のインフラの途絶と続いてきます。西日本豪雨での被害の原因である洪水は7番目の30.5%にとどまっています。
今後は洪水を含めたオールハザード(全災害)を想定した上で、業務の復旧と継続ができるようなBCPを策定することが期待されます。