【イベントレポート】JAPAN OPEN INNOVATION FES2018 in summer 〜未来のコト創り「スタートアップと大企業の共生」〜|起業サプリジャーナル

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【イベントレポート】JAPAN OPEN INNOVATION FES2018 in summer 〜未来のコト創り「スタートアップと大企業の共生」〜

公開日:2018.07.02

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『価値ある出会いが未来を創る』をコンセプトに掲げるオープンイノベーションプラットフォームeiicon(エイコン)が主催するイベント JAPAN OPEN INNOVATION FES2018 in summer。今回で二度目の開催ながら総来場者数は450名超え、会場には、このイベントから新しいビジネスのきっかけを得ようとする参加者の熱気で溢れていた。今回は、そのイベントから一部トークイベントの内容を書き起こしで紹介します。トークテーマは、未来のコト創り「スタートアップと大企業の共生」です。

 

はじめに〜JAPAN OPEN INNOVATION FESとは・・〜

 

全国各地・あらゆる業界の法人(企業・大学・地方自治体など)の提携パートナーを無料で探せるオープンイノベーションプラットフォーム「eiicon」が主催をする。米国でもなく欧州でもない、 日本ならではのオリジナルオープンイノベーションの形を創造・実現し、モノづくり大国日本を再興させるためのヒントを提供するイベント。イベントコンセプトは「Re made in Japanの実現」。この場所をきっかけに集う大企業・ベンチャーから起こるイノベーションによって、元気な日本を再興したいという想いが込められている。

 

JAPAN OPEN INNOVATION FES2018 in summer

https://eiicon.net/about/event/JOIF2018-summer/

 

イベント一部 未来のコト創り「スタートアップと大企業の共生」

一部は、オープンイノベーションにおいて共存する大企業とスタートアップとの関係性や、それぞれの立場から感じているオープンイノベーションの考えや、これからの課題に対してクロストークが展開されました。モデレーターは、eiicon founder/パーソルキャリア(株)中村亜由子氏が務めた。

 

>登壇者紹介

 

今野 穰氏(グロービス・キャピタル・パートナーズ COO)

 

麻生 要一氏(株式会社アルファドライブ 代表取締役社長 兼 CEO / 株式会社ゲノムクリニック 代表取締役 Co-CEO)

 

加藤 由将氏(東京急行電鉄株式会社 事業開発室 プロジェクト推進部 イノベーション推進課 課長補佐)

 

Q1 スタートアップと大企業の共生において、オープンである必要はあるか。

中村氏:オープンイノベーションを実践しようとする際に、必ずといって良いほど議論に上がる話題ですが、「そもそもオープンでやる必要あるの?」「社内でやればよくない?」みたいな話がとても多いんですね。オープンである必要はあるのか、否か?といった話から伺えればと思います。まずは今野さん、いかがでしょうか?

 

今野氏:そもそも、なぜオープンイノベーションをやるのか?という目的次第だと思っていますが、オープンイノベーションをやる意義としては、5つの要素があります。1つ目はR&D(研究開発)のアウトソース。2つ目は、アントレプレナーシップの獲得と、その接点の創出。3つ目は、大企業側からの考えですが、手持ちアセット(資産)の開放。4つ目は、社内では出来ないイノベーションのジレンマを外部から起こす。最後は、事業をどんどん買収していきながら、新しい事業を創る、といった幾つかの目的があるとすると、この中の幾つかはオープンにならざるを得ないですし、クローズドにならざるを得ないと必然的になるかと思っています。例えば、東急さんは自社のインフラを開放して、そこにベンチャーを呼んで、活躍して貰うということをやっています。それは先ほどの要素から言えば、「アセット開放型」になると思うのですが、それ自体はオープンにしないと出来ないわけですよね?

 

加藤氏:今野さんのお話は正に仰る通りだと思っていて、インフラ事業を展開している企業は、サービスを作ることに長けている訳ではないので、自社のプラットフォームをいかに使いやすくしてあげるか?に優位性を持っている為、そこはオープンにした方が良いと思っています。Apple Storeの例が分かりやすいと思いますが、自社のプラットフォームを開放して、他社がそれを活用しアプリケーションを展開してくれて、サービス価値を高めてくれているのは、正にアセットの開放ですよね。

 

麻生氏:(加藤さんへの質問)「ここからは、スタートアップに開放しないぞ!」といったオープンとクローズドの境目は社内で定義しているんですか?例えば、交通データを知りたいみたいな要望があった時、どこまで開放しているのでしょうか?

 

加藤氏:明確な定義というのは存在しないです。交通データ自体は、オープン化がだいぶ進んでいるので出せますが、例えば、東急ポイントのデータやロイヤルカスタマーさんたちのデータはクローズドなので出せないです。

今野氏:麻生さんが在籍していたリクルート社は、イントレプレナーシップ(企業内起業家)をつくるのも上手だと思いますが、出来ない会社と出来る会社って何が違うと思いますか?

 

麻生氏:一瞬違う話にそれますが、オープンイノベーションに関して、思っていることがあります。本来言葉の意味的にオープンより「イノベーション」の方が重要なハズなんですよ。イノベーションを起こす為の要素が、オープンなハズなのに、イノベーションが無くてオープンばかりやっているケースを最近見受けるな、と思っています。

 

今野氏:確かに。

 

麻生氏:あくまでもオープンは要素なので、イノベーションを生み出すことに真摯に向き合っているか、どうか?というスタンスと「我々は新規事業を永遠に生み出し続けるのだ」という考えでいるかどうかは重要です。例えば、毎年一定金額の予算がそこに張られるとか。新規事業をつくる活動をした人を評価する仕組みがあるのか?とかも企業としての姿勢に値すると思います。

 

今野氏:確かに、目的に見合ったリソースを投下しているのか?というのはあるかもしれないですね。

 

麻生氏:大企業をイメージしてお話をすれば、IRの問題が密接に絡んでいるのではないか?と思っています。大企業の経営者の皆さんは、EBITDAか営業利益を重点指標に経営している様に見えるんですね。そこを重点指標にしてしまえば、あまりR&D投資も出来ないし、減損もしたくないというのはあると思いますが、何故そういった経営になってしまうか?と言えば、そうした方が株式市場から評価される構造があったり、そういう経営をしている方がIRしやすいということがあるのかなと感じています。

 

今野氏:米国は圧倒的に売上のグロースですからね。

 

麻生氏:そうですよね!営業利益を無視して、売上を伸ばすことで評価をされる構造というか、株式市場での評価軸が違うのかな、って思っています。

 

中村氏:ありがとうございます!つまり、スタートアップと大企業の共生において、オープンである必要はあるか?という問いに対しては、「目的次第です」ということでしょうか。オープン自体は手段なので、目的によってオープンにするものはオープンにした方が良いし、そうじゃないものはクローズドにして進めていくべきだという話だったかと思います。インフラを持っている大企業は日本には沢山あって、まだまだ売上のトップラインを伸ばしている企業も多いので、そういったインフラを開放し、そこにスタートアップを絡め、共に拡大していくのは日本はやり易い国だと感じました。

 

Q2 オープンイノベーションは現在成功していると言えるのか、否か。

中村氏:最近、「場所(コワーキングスペースやイノベーション拠点)を作りました!」という事例や「共同研究を開始します!」といったニュースは目にするようになりましたが、ただその後「成功したのか?」といったニュースに触れる機会はまだまだ多くないよね、という話からこの質問を上げています。今のフェーズにおいて、オープンイノベーションは成功していると言えるのか否か?という観点から、またご意見を頂きたいと思います。今野さん、どうですか?

 

今野氏:難しいですね、、(笑)僕の問題提起としては、これまでの「取り組みました」という観点から、『こういった成果が出ました』というマインドに切り替えた方が良いという問題認識はあるのですが・・現時点で成果を測るには時期尚早かなと思っています。理由は「期間が長くかかる」という前提があるからです。例えば、ベンチャー企業が上場するまでには5年・7年・10年の時間がかかってきますし、一人前のベンチャーキャピタリストを育てるのにも5年・10年かかってきます。そうなってくると、まともなCVC (コーポレートベンチャーキャピタル)を育てるのにも同じくらいの年月はかかってき、更にそこから5年・10年をかけて成果を出していくという時間軸になっていくと思います。そうなってくると、本当に20-30年の話になるので、やり切れば成果は出ると僕は思いますが、常にイノベーションに向き合っていくんだ!という企業としての信念・姿勢は、その期間で問われてくると思います。

これは完全なる私見ですが、今の米国の時価総額のトップ5は全てベンチャーです。対して、現在の日本では金融、自動車、国営的な企業で並んでいるのですが、果たして日本は、今後米国のような構造になるのか?という問いに対しては「ならない(かも)」と思っているんです。それには、2つ理由があって、1つはマーケットがドメスティックなところも多いので世界規模で大きくなるには少しハードルが高いと思っている点。もう1つは、大手企業の中でも変化や動きの早い企業は、アントレプレナーシップの獲得やオープンイノベーションによって、会社が残り続けるのではないか?と思っています。逆に言えば、それが日本型のオープンイノベーションのゴールかなとも私見的に思っています。

 

中村氏:ありがとうございます。米国の様に、ベンチャー企業が時価総額のトップ5になるか?という問いに対しての「そうではない」かもしれないという意見に関しては私も同意見です。それは日本の構造的に老舗企業が移り変わらない構造になっていると感じていて、国とインフラが密接に関わっているというのも理由の一つなのかと思っています。例えば、インドや中国では水道事業のベンチャーがたくさん生まれくるのを目にしますが、日本ではそういったインフラに絡むベンチャーが少ない。そうなってくると、トップヒエラルキーの上位企業が、オープンイノベーションによって中身を変えていくというのが、日本の見える未来なのかな、とも改めて思いました。

 

今野氏:そうしないと日本は残れないかもしれないですね。

 

加藤氏:規制と既得権益で、がんじがらめになっていて、だからこそ、上が全く変わらないし、新陳代謝が起こっていかない問題も出て来ているのだと思います。

 

麻生氏:規制と構造という話に加えて、「大企業に勤めている優秀な方々が辞めない」ということもあると思っています。

 

最近、独立をして大企業の方々と仕事をさせて頂いていますが、大変失礼ながら、想像以上に大企業には優秀な方が沢山いらっしゃるんですね。独立前は、(大手のサラリーマンは仕事にやる気がなくて、、)なんてイメージを少なからず持っていたのですが、実際の現場は全然違くて、本当に優秀な方々が多いです。一方で、これが問題でもあり、構造だなとも思っていて「辞めない」んですよね、その優秀な方々が。優秀な方が大企業に残り続けるっていう構造だから、スタートアップのみで社会を変えていくというより、大企業が大企業のままで社会を変えていく、という構造が日本には向いているかなって感じています。だって、辞めないじゃないですか?すぐ資金調達出来ますよ!(加藤さんを見て)

今野氏:出しますよ!

加藤氏:(苦笑)

麻生氏:ほら!辞めます、明日?

加藤氏:もう少し待ってください(笑)

麻生氏:ほら、こうなるんですよ!

 

一同:(笑)

 

加藤氏:でもそれって、今の日系企業のコーポレートガバナンスにも問題はあると思っていて、プロパーで入って、社長になれるという構造自体おかしいんですよ。社内でうまく立ち回り、そのまま上に上がれてしまうルートを切ってしまえば、優秀な方は外に出ていくかもしれないですし、またどこかのタイミングで戻ってくるかもしれないですが、そこの流動化は図れると思っています。そこが無いので、辞めない人が出てくるんじゃないか?と思っていますし、だから社内が濁ってしまう。

 

麻生氏:それ自体は、すごく勿体ない、かつ、可能性だとも思っていて、すごく現場に近いポジションでこんなに優秀な方が沢山いるのであれば、もうちょっと何とかなるんじゃないの!?って、すごい感じています。

 

加藤氏:権限委譲の問題とかインセンティブの設計かもしれないですね。

 

麻生氏:そうかもしれないですね。優秀な方々が、何故だかあまり動けていない感じになっているというか、、実際に加藤さんはどうやって動いているんですか?

 

加藤氏:勝手に動いちゃってますね(笑)

 

麻生氏:もうちょっと加藤さんの様に動かれる方が、全体の10%でも出てくれば良いのになと思いますね。

 

今野氏:その意見には、僕も完全に賛成なのですが、何千人何万人いる組織の全てを変えようとするのは大変です。その中でも、東急電鉄さんやKDDIさんといった、比較的ベンチャー企業との向き合い方が上手な大手企業に共通している点としては、どんなに組織が大きくてもトップがベンチャー向き合いにコミットしている点と、それに対応できるアントレプレナーシップ・イントレプレナーシップを持ち合わせた専門部隊が存在している。そこだけで始めた方が、僕は早いと思うなあ。

 

麻生氏:後は、決裁権限とか動き方の自由度といった部分も、ちゃんと現場におろしてあげるべきですよね。結局、ベンチャー向き合いをする体制を形上つくったのに、「ベンチャーと共同プロジェクトはじめます!」って言った後のハンコが7つくらいあるともう動かないですよね(笑)そこのハンコは1つで良い。

 

今野氏:なので、トップと直轄にしないと、上に決裁を取って、更に取って、、みたいにしちゃうともう日が暮れてしまう。

(中略)

中村氏:東急さんはアクセラレータープログラムを開始して4年が経過すると思いますが、この取り組み自体は、会社の中では「成功」という定義になっているでしょうか?

 

加藤氏:成功の定義がまだよく分かってないですが、成功の定義を大企業側から見るとの、スタートアップ側から見るのでも、また違ってくると思っています。

スタートアップ側からすれば、のリソースをいかに早く使い倒して成長し、IPOなり、M&Aのようなイグジットを遂げるのかがゴールラインだと思うのですが、

大企業側からすると、利益を求めるのも当然なのですが、利益って一時的なものでしかないので、本質的に追求すべきなのは「組織風土が変わること」だと思っています。とある方に、「大企業が、もう1度スタートアップのような企業に変わることが成功の定義だよ」と言われた時に、すごく腹落ちをしました。もう1度、組織として新陳代謝が活発なカラダに戻らなきゃいけないんですよね。企業が成長する過程で付けてきてガチガチに動けなくなった鎧を取ったり、動きにくくなっている部分にグリスを塗って動かしやすくしてあげる、その為に必要な要素がスタートアップとの協同によって生まれるものであったりするので、大企業側からみた成功は、随分先にあるなと思っています。

 

中村氏:やっぱり10年、20年、、もうちょっとですか?

 

加藤氏:まあ、10年、20年で変わって欲しいな、とは思っています。

 

Q3 大企業に求められている「アントレプレナーシップ」とか何か?

中村氏:たくさんの起業家を見ている今野さんに伺いたいのですが、「アントレプレナーシップ」って言いかえると何ですか?

 

今野氏:良い質問ですね(笑)一番は、正解がないものに対して愚直に出来るか?といったところでしょうか。大手企業の方は、正解あるものに対してミスをしない力はとても長けているのですが、ベンチャーではそれは真逆で。正解のないものに色々と手を打てて、当たったものに対して徹底的にフォーカスする力がとても重要です。

 

加藤氏:正解だと思われるものは、大企業がほとんどやっていたりしますよね。

 

今野氏:そうそう。だからこそ、アントレプレナーシップというのは、その外にあるモノだと思っています。人がめんどくさ過ぎてやらないとか、こんなのどうせ上手くいかないよ、と思ってやっていないところに手をつけられて、当たったところにフォーカスしていく。大企業の大きな市場をしっかり伸ばしていくとは、また違ったスキル・人種になると思います。

 

→第二部では、「日本郵便が仕掛けたPOST LOGITECH INNOVATION 2017の裏側」と題したオープンイノベーションプログラム実談をレポートにてお伝えします。お楽しみに!

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