「場所を変えるだけでは何も変わらない、変えた場所で動き出すことで変化が生まれる」と話す日置さん。2年前、内定を貰っていた起業を辞退して、単身ニューヨークへ渡米。そこで得た経験を元に、「場所の変化 × 人との出会い」によって、あたりまえを再定義するサービスweeeksをはじめた。今、彼女がサービスを通じてつくりたい未来とは何なのか?お話を伺いました。
プロフィール(teritoru株式会社 代表取締役 日置愛氏)
イギリス留学から帰国した元カレに刺激を受け、新卒でニューヨーク勤務を決意。現地の新聞社で飛び込み営業として働く。昨年帰国後11月に “人と向き合いあたりまえを再定義する”をミッションとしたteritoru(テリトル)株式会社を創業。暮らしに新しい選択肢を広げるweeeksというサービスを立ち上げる。
teritoru株式会社について
> teritoru(株)について、お教え下さい。
はい。会社名である「teritoru(テリトル)」は、色々な人のテリトリーを取っていく・シェアしていくことで、自分自身の視野が拡がって、固定概念が取り払われていくことを願ってつけました。これからの時代、過ごす時間に”色”をつけるサービスや、人の存在が求められてくると思っていて、私たちはその中の住居における時間に新しい角度から色を付けていこうと思い、事業を展開しています。
現在は「weeeks」という、週末や1週間という単位での短期ルームシェアが出来るサービスを運営しています。
> weeeksでは、長期ルームシェアやシェアハウスを探す方も対象になるのでしょうか?
対象にはなりません。私たちが提供しているサービスは「不動産選び」の一環ではなく、気分転換として、環境を誰でも変えられるような「暮らしのエンタメを提供する」サービスになります。イメージとしては、宿泊型のイベントポータルサイトが近いと思います。もっと日常の生活の部分において、気軽に人との出会いを通して環境を変えることが出来るのではないか?と思って始めたサービスです。
> なるほど。生活における「住む」を求めてくる方は、むしろターゲット外なんですね。実際のユーザー層としては、どんな方が実際使われているのでしょうか?
20代後半や30代の社会人の方が多いです。ユーザーニーズとしては、会社以外での繋がりや刺激を転職やシェアハウスへの引越しではなく、weeeksを使って満たしにきてくれる、といった方々ですね。都内実家暮らしの方が刺激や変化を求める環境として選んでくれたり、一人暮らしがマンネリ化した方が密な時間とコミュニティの形成を求めて利用してくれています。
> 実際に滞在するシェアハウスは御社で所有されている物件なのでしょうか?
弊社では、一切自社の物件を持っていません。現状は、民泊や簡易宿舎といった短期貸しをしていて、かつ、集客に困っている物件を所有している管理会社と連携しています。管理会社としては、閑散期で空いている物件や駅から遠くて人気のない物件の物件の稼働率を上げたいといった悩みがあるので、そこにweeeksが企画によって付加価値を与え、(その物件に)人を集める集客ツールの役割を担う提携を組んでいます。
※weeeksでは、短期滞在に「そこでどんな時間を過ごすのか?」といった企画をかけ合わせ、それに賛同したメンバーでルームシェアを行う。
物件の情報は掲載されていない!?とても珍しいルームシェアサービス
> 幾つか企画も拝見しましたが、「どんな物件に住むのか?」といった物件情報は開示していないんですね。
実際に開催している物件は全て東京23区内なのですが、私たちは「どこに住むか?」といった物件情報ではなく、全て「どんな時間を過ごすか?」といった企画によって集客をしているんです。これまでの不動産・賃貸業界は、物件のスペックで集客を測ってきましたが、人口が減少していくこれからの日本において、物件スペックにおける集客にはいつか限界がくると感じています。私たちは、その物件に対して如何に人を動かせて・タッチポイントを増やせていけるか?を業界への新しい付加価値として提供しています。
> サービスのビジネスモデルについても教えて下さい。
今は、滞在をする際にかかる宿泊費からの一部手数料を収益としています。
「不動産に興味もなく・ビジネスにも興味はなかった」日置さんの創業秘話に迫る
※ニューヨークにいた頃の日置さん。
> 起業のきっかけを教えて下さい。
1年ほど前までニューヨークで働いていたのですが、渡米の目的は「自分を変える」ことでした。
それまでの私は、場所を変えれば、人は変われると思っていました。ただ実際に渡米してみて感じたことは、場所を変えるのは単なる変化の入り口でしかなく、実際にその場所で誰と出会って・どんなコミュニティに属するか?といった変えた場所で起こす行動に、はじめて価値と変化が生まれるのだと感じました。その経験を経て、日本に戻った時に「勿体無いな・・」と率直に感じたんです。
>勿体ない、とは?
ニューヨークでは現地の新聞広告の飛び込み営業をしていたのですが、そこでグローバルにおけるビジネスのスピードの早さだったり、世界で0→1を創って闘おうとしている同年代のアジア人の存在など沢山の刺激を得ました。
反面、日本では、モノに恵まれ・かつ時間的自由もあるのに、動かない=環境を変えずに止まっている人が多いとも感じました。現地の友人からは「日本は社会的に見ても信頼があるし、いくらでも挑戦出来る環境があって、とても羨ましい!」と言われたのですが、外から見た日本と、実際に中にいる私達の志向にはギャップがあると思ったんです。
そこで、場所を変えるだけではなく、人との出会いを通して環境を変えていける様な仕組みやサービスを届けられないかな、と考え始めたのがきっかけです。
> そこから、どうやってweeeksの構想に至ったのでしょうか?
“環境”や”時間”という軸で考えた時に、人って大きく分けて2つのハコを生きているな、と思ったんです。
①外のハコ
②内(ウチ)のハコ
「外のハコ」というのが、1日24時間ある内の会社や学校で過ごす時間だとしたら、外のハコを選ぶ選択肢は沢山あると思います。転職もあれば、独立もある、今の時代”複業”という選択肢も出てきた中で、こちらは選択肢がある分、人も動いている。一方で、「内のハコ」である日常生活の部分は動かずに止まっている人が多いなと思ったんですね。ここで、気軽に人を動かせて、環境を変えられることが出来れば、生涯時間全体でみた時に、その人の人生がグッと濃くなって良くなるんじゃないかな?と思ってサービスの構想に至りました。
法人を設立したのも、不動産関係なので現行の制度上、会社化する必要があったからなんです。よく「なんで起業しようと思ったのですか?」と聞かれるのですが、元々起業する気は全然なくて(笑)色々と感じた中での表現方法としての手段が起業でした。
これからのteritoru
> 事業の今後展開についてお教え下さい。
目先で取り組んでいる施策は、現在自社で立てているweeeksの企画をユーザーが立てられる様なサービス設計に変更をしています。この1年で、暮らしにおける概念を変えたくて「ちょい住み」といったweeeksを通じた新しい暮らしの提案の認知を拡めていきたいです。
中長期的には、2020年のオリンピックを見越したインバウンド需要の獲得や、最終的にはweeeksを入り口とした住居のサブスクリプションサービスまで拡げていけたら良いと思っています。
> 最後に、日置さんがサービスを通じて実現したい世界観などもあれば教えて下さい。
生活において、当たり前だと思う機会は沢山あれど、渡米をしてみて「世の中、当たり前のことは一つも無いんだ」と実感しました。自分が日本人で在ることも、恵まれている環境が整っていることも当たり前じゃないって思った時に、唯一私たちに平等に与えられているものは「時間」なんですよね。でもその時間でさえも無限にあると思って、なあなあに過ごしてしまう人も多い。
私が実現したい世界は、一人でも多くの人が限られた一度きりの人生を、色んな人と出会って、(その人の)色んな物語を増やすことによって、その人にしかない人生を「ああ、楽しい!」と思える人が一人でも増えたら良いなと思っています。今はその方法の一つとしてweeeksがあるっていうだけなので、私自身、世界を変えてやるんだ!という気持ちより、『一人でも多くの人がその人の人生をよく過ごせる様なきっかけ』をサービスを通じてつくりたいです。皆が少しでも(あ、自分の人生って良いな)と思えれば、結果的に社会も良くなっていると思うんです。そういった、一人一人の人生と時間に”色”をつけていく人であり、企業であり、サービスになりたいです。
編集後記
渡米先がニューヨークだった理由を伺うと、「当時付き合っていた彼氏がイギリスに渡英していて、そこから生まれた反骨心でイギリスの反対はアメリカだろう!と思ってニューヨークに決めました」と日置さん。聞けば、そのタイミングで日置さんもイギリスに来ることを勧められたそうですが、そこで自分の人生を他人に決められる事に対する疑問や、(自身が)人生を選択出来る立場に在ることに改めて気づいたのだと言う。そうは言っても、イギリスの反対→アメリカだ!といって、単身渡米出来る方は、なかなかいないと思った編集部でした。teritoruでは、これからweeeksの企画を絡めて連携できる企業やパートナーを募集中です!気になる方は、是非日置さんまでご連絡下さい。