「誰かの役に立ちたい」と思っていた時期もあるのに、いつの間にか、休みが欲しいとかお金が欲しいとか、気がつけば考えているのは自分の事ばかりである。誰かの「やりたい事」をどう実現させてあげるか?を、その人と一緒になって考える日比大輔さんの活動とその原点を伺いました。
プロフィール(日比大輔氏)
1988年千葉県船橋市生まれ。
生後3か月で親の仕事で中国(広州)へ渡り、0歳~11歳を中国・香港で過ごす。その後日本に帰国後、広島→京都→大阪→東京→広島→東京と各地を転々と過ごす。学生時代は京都でのお祭りづくりや学生団体などの企画運営に没頭。大学卒業後、新卒で国内大手ヘッドハンティング会社に入社。5年半の間に法人営業・ヘッドハンティング業務を経験。社会人3年目の終わりから起業するために活動を開始し、2016年6月に退職するまで1年間の複業期間を経て、友人たちと株式会社ジョブライブを創業。「やりたいをシゴトに」をテーマに起業・複業・転職の支援、コワーキングスペースの運営、働き方の情報発信メディアの運営、無人島活用事業などに関わる。2018年1月独立してフリーランスとして活動をスタート。
活動内容について
> 日比さんの活動内容を教えてください。
昨年(2017年)は、株式会社ジョブライブの創業メンバーとして活動をしていましたが、今年の1月から個人事業主として再スタートを切りました。現在の活動のメインは2つです。
1つ目は「起業・複業・転職・就活の支援」。これは仕事や(自分の)将来に悩みのある人と会って、その人がやりたい事を一緒になって考えるサポートです。場合によって、それが仕事という形で実現出来るのであれば転職などの支援もしますが、それに留まらず、起業から複業まで幅広い人生の選択の相談にのっています。2つ目はコワーキングスペースTOKYO PRODUCERS HOUSEの「イベント企画」です。現在、私が在籍しているコワーキングスペースを盛り上げる為のイベントなどしています。企画するイベントのジャンルは様々で、起業志望の方が集う交流会、不動産界隈・農業界隈・不動産オーナー・メディア関連の交流会など多岐に渡っています。その他、ベンチャー企業の人事代行業務などをしたりしています。
※これまで日比さんが企画してきたイベントの一例
> 沢山の活動をされているのですね。こういった活動の軸は何なのでしょうか?
「やりたい事をして、充実した人生送って欲しい」という想いで活動をしていて、そのきっかけを対話や出会い、場を通して、提供していきたいと思っています。
出会いによって変わった日比氏。今度は、自分が誰かの変化を支援する側に
> 今の活動に至る前の話も伺いたいのですが、元々独立を考えていたのでしょうか?
学生時代から漠然とそんな想いを持っていましたが、社会人3年目のタイミングから意識をする様になりました。当時、仕事面においては結果(数字)が出ない時期に陥っていまして、異動になった部署では1日300件の電話営業をするなど、結果とやりがいを見出せない仕事に、かなり精神的に暗黒の時期に陥っていました(笑)漠然と仕事を辞めようかと考えていましたが、そのタイミングで起業を考えはじめ U25スタートアップ起業塾 に通い始めました。そこから少し持ち直すのですが、大きな転機になったのは4-5年目くらいのタイミングで同世代の社会人が集まるコミュニティ88年会の中の、経営者の人たちや面白い活動をしている人たちが集まる「裏88年会」での出会いが1番大きかったでしょうか。
> 裏88年会?なんだか怪しそうですね・・
中身は、同世代の中でも、起業して会社を興したり、事業を始めている人たちで集まるただの飲み会なんですが、皆んな仕事が忙しくて中々平日に集まれないので、いつも開始が土日の0時スタートからだったのは裏感があるかもしれません(笑)
> それはちょっと裏感がありますね(笑)実際、そこでの出会いがどう変化をもたらしたのでしょうか?
メンバーの中には、高卒で会社を経営している方もいたりしたんですね。大卒で社会に入った自分としては、そういった人に会える環境自体がとても新鮮でした。そこでの話を聞くと、やっぱり皆んな仕事大変そうなんですよ。大変そうなんですけど、一生懸命(自分の)やりたい事に没頭して稼ぎをつくったり、事業を起こしたりしている姿に(4年生大学を出て、ベンチャーに入ってる自分より、ずっとキラキラしているな)と、素直に刺激を受けました。きっとサラリーマンより大変な環境なんだろうけど、「自分もこういう人生が送りたかった。どういう形なのか分からないけどやりたい事をやって、充実した人生送りたい」と思い返す事が出来て、そこから本格的に動き始めました。
> それが日比さんの場合、誰かの「やりたい事」を支援する側だったんですね。自分のやりたい事が、他人の自己実現に向けられる想いの源泉はどこにあるのでしょうか?
元々、誰かの役に立てる事を嬉しいと感じるタイプなんですよね。小さい頃から学級委員、高校では寮長といった誰かの前に立つポジションを買って出るタイプではありましたが、その分、人から指を刺されるような経験なども沢山してきました。そんな時、自分のよき相談相手でもあった母親から「誰かの為に一生懸命頑張る事は決して無駄じゃない」と言われ続けていたので、不思議とそんな感情になっていたのかもしれません。自分の人生の中心にある言葉が今の活動に紐づいています。
起業家 / 複業家が集う秘密基地「TOKYO PRODUCERS HOUSE」
入居者として、日比さん個人の様々な活動の拠点としても使っているワーキングスペース「TOKYO PRODUCERS HOUSE(以下、プロハ)」。ところどころに垣間見えるDIY感が秘密基地感を漂わせ、ワクワクしてしまう。立ち上げ時から参画しているという同施設について伺いました。
> プロハは、どういった経緯で出来上がった場所なのでしょうか?
元々は3人の創業メンバーがプロジェクトベースで立ち上げた企画から始まった場所です。
こちらのビル自体は、大手企業で人事をしながらビル管理をしている弦本さんという方が所有しているビルなのですが、元々はオーナーである弦本さんが住宅系のサービスに携わっている身として(もっと自分もユーザー側の立場になってサービスを考えたい)という想いから購入したビルでして、ビルを購入したタイミングと創業メンバーの「秘密基地の様なわくわくする場所を作りたい」タイミングが合致して出来た場所なんです。
> 日比さんは、どのタイミングでこの場所に携わる様になったのでしょうか?
企画が動き始めた初期の段階から携わっています。プロハの創業メンバーでもあり、株式会社ジョブライブの代表でもある梶さんと当時一緒に会社を創っていたのもあり、立ち上がりから場所の企画自体は知っていました。自分たちでもオフィスが欲しかったですし、梶さんからは企画の段階から話は聞いていたので、すぐに一緒にやろう!という話にはなりました。
今は個人事業主として活動しているので、一メンバーとして自分のイベントをここで企画したりしながら、場所を盛り上げる活動をしています。
> 実際、どんな方達が会員になっているのでしょうか?
現在30名弱の会員がいますが、起業している方もいれば、会社員をやりながら複業をしている方、国家公務員などジャンルは様々です。
※入居者のプロフィールがそれぞれ並ぶ掲示板、とても個性的な経歴のメンバーが並んでいた。
> 国家公務員まで?皆さんどんな事を期待して、この場所を選ぶのでしょうか?
同世代の面白い取り組みに触れる機会や、イベントなどを積極的に開催しているので場所から生まれるコミュニティなどに興味を持ってる方が多いですね!場所のコンセプト自体が、誰かが何かを始める時のきっかけをつくったり、それを提供したいという想いがあって出来た場所なので、ここにくればそれが試せる・実現出来るといったワクワク感があるのかな、と思っています。
※日本酒、音楽、起業など、多岐に渡ったジャンルのイベントが定期的に開催される同施設
日比さんのこれからについて
最後に様々な活動を行う日比さんのこれからについても伺いました。
直近では、20代から30代の「やりたい事」をどう実現させてあげるか?の支援に自分のスキルを上げる努力をしています。去年1年間は、悩んでいる人たちの想いを明確化することに力を注ぎましたが、想いが明確化しても「それをどうやって実現すれば良いのか?」といった行動設計の部分でつまずいてしまう事もあり、私自身も目標設計や行動設計に向けたサポート力がまだまだ弱いと感じました。この1年間の自分の課題であるのですが、目標設計・行動設計まで踏み込んだ支援と自身のスキルをあげたいと思っています。
長期的な話をすれば「教育」に踏み込んだ領域での活動をしたいと考えています。色んな方との対話を通じて感じるのは、自分がどうしたいのか?を考えきれないという、思考力の課題が大きいのではないかという事です。私が面談をする際は、必ずその方の生い立ちや幼少期まで遡った過去の話を聞くのですが、自分の過去や経験を振り返る事をこれまでしてこなかったり、そこから踏み込んで考えるクセが弱かったり、自分の想いが明確化していない方に共通している根本の部分は「思考力」と「考える習慣」にあると感じています。そういった部分は、今の学校教育ではあまりタッチされていない部分でもあると思うので、悩んだ後から支援をするのではなく、悩む前から出来る事として教育に踏み込んだ活動をしたいです。
編集後記
本当に人が好きなんだな、と出てくる言葉と笑顔から伝わる日比さん。取材後の雑談でも「(自分に)何か出来る事があれば言ってくださいね!」と日比さんの優しさを感じる発言に「おもしろい取り組みをされてる起業家を紹介してください」と即答で甘える編集部。当日中に、紹介頂けそうな起業家の方のリストが送られてきて、(この人は本物だ・・)と感じた編集部でした。