新規顧客開拓の重要性
独立するまでの過程は人それぞれです。例えば顧客との関係がまったく白紙の状態で独立する人もいるでしょうし、前職の顧客との関係を維持しつつ独立できる人もいるはずです。 前職の顧客との関係が維持できれば、独立後の売上の基礎として計算することができます。しかし独立後、ほぼ例外なく新規顧客を開拓する必要はあるはずです。
経営学者のドラッカーは「企業の目的は顧客の創造である」と主張しています。この主張からも、新規顧客開拓が事業を成り立たせるために必要かつ重要であるということが確認できます。
新規顧客開拓の基本
新規顧客を開拓するために重要な3つのポイントがあります。1つ目は開拓対象先リストの整備、2つ目はアプローチ開始時の工夫、3つ目は成約可能性の判断です。この3つのポイントが新規顧客開拓に成功するための基本条件になります。
開拓対象先リストの整備
開拓対象先リストの整備とは、2種類のリストを準備するということです。1つはショートリスト、もう1つはロングリストです。
ショートリストは、ほとんどの企業が備えている有望な顧客候補のリストです。初めてアプローチした時点から、受注や成約の可能性が高いと判断された対象先を選んで作成します。しかし実は、もう一方のロングリストの重要性も高いのです。にも関わらず、これが整備できている企業は意外に少数派です。
ロングリストとは、アプローチできるような対象先の候補をすべて記載したリストのことです。このリストは追加することだけにとどめ、一度記載した対象先は、存在している限り削除しないことをルールとすべきです。新規顧客開拓は時間がかかることが多いですし、難しい仕事でもあります。そのため成約の可能性が高い有望先が枯渇してしまう状態が起こります。その時に紐解くべきものがロングリストになるからです。
アプローチ開始時の工夫
アプローチ開始時の工夫は、成約の可能性を高めるために必要不可欠です。例えば人づての紹介は、予め築かれている一定の信頼関係がアドバンテージとしてあるため、顧客候補に良い第一印象を持ってもらえる可能性が高まるでしょう。
また、全員が使えるような資料を準備しておき、誰が担当しても同じ資料を使ってほぼ同じような説明ができるようにしておくことも有用です。ある対象先にアプローチした後、営業活動が停滞した場合、別のメンバーがサポートするケースが考えられます。この際、資料がアプローチ時に持参したものと同じであれば、活動の流れをうまく引き継ぐことが容易であり、結果的に成約の可能性を高めることが期待できるからです。
成約可能性の判断
成約可能性の判断が的確に行われないと、可能性の無い先に時間を掛けすぎてしまうこと、受注のチャンスを逃してしまうこと、が懸念されます。成約可能性の判断が的確に行えると、質の高いショートリストを作成することに結びつきます。
社長の責任と役割
新規顧客開拓は、経営上の重要性から社長が十分な時間を割くことが期待されます。
アメリカには「ノーセールスノージョブ」という格言があります。社長が最終的な業績責任を担う以上、積極的に新規顧客開拓に関与すべきです。 具体的には、前述した成約可能性の判断、アプローチ開始時の工夫を実行することです。成約可能性の判断には、必ず社長の意見を反映させるべきでしょう。アプローチ開始時では紹介の依頼、説明用資料の内容確定に率先して取り組むことが期待されます。