働き方改革におけるHRテックの必要性
政府が掲げている働き方改革が様々な進展をみせています。柔軟な働き方の普及を目指して、テレワーク・デイを設定したことは実例の一つです。
働き方改革は独立している訳ではなく、日本のGDPを600兆円に引き上げるという目標に結びついています。日本は労働力人口が減少しているため、働き方の柔軟性を高めながら生産性を高めることが必要です。
しかし日本の1人当たり労働生産性は年間約750万円とアメリカの約6割にとどまっています。日本の労働生産性がアメリカより低いことの理由の1つにHRテック(ヒューマンリソーステクノロジーの略)の普及度が低いことがあります。日本がアメリカとの労働生産性の差を縮めるためにはHRテックの普及度を高めることが期待されます。
HRテックとは、人事労務の領域にクラウドや人工知能(AI)などの新しい技術を活用したサービスのことです。HRテックの目的は、採用から人員配置、人材育成や評価などの人的資源管理を効率的に行うことです。
アメリカでHRテックが普及するきっかけをつくったのはメジャー・リーグのアスレチックスです。アスレチックスの選手評価と起用における成功は映画「マネーボール」によって広く知れ渡りました。
アメリカにおけるHRテックの普及
アメリカと日本の違いはHRテックの普及度だけではありません。アメリカは日本と異なり、多くのユニコーン企業が存在しています。
ユニコーン企業とは、アメリカのベンチャーキャピタルであるカウボーイ・ベンチャーズの創業者が使い始めた言葉で、ベンチャーキャピタルや投資家からユニコーン(一角獣)のように珍しい存在であり、しかも巨額の利益をもたらす可能性のある企業のことです。
フォーブスが、ユニコーン企業の代表として取り上げた企業の一つにゼネフィッツがあります。
ゼネフィッツは2013年に創業で、フリーミアムモデル(基本的なサービスや製品は無料で提供し、さらに高度な機能や特別な機能については料金を課金する仕組みのビジネスモデル)で人事管理ソフトウェア業界を席巻し、自社の企業価値を45億ドル(約5,400億円)に高めるとともにHRテックの普及に貢献しています。
HRテックを活用することで人事部門を中心に生産性を高めている企業の代表例にグーグルがあります。グーグルは、人事部門にデータサイエンティストと呼ばれる専門家を起用して、HRテックを積極的に活用しています。
日本におけるHRテックの最新動向
日本では人材サービス各社がHRテックの普及に注力しています。採用活動を中心にHRテックを普及させようとしている企業にパーソルホールディングスとビズリーチがあります。
パーソルホールディングスは、サイボウズの情報共有支援ソフト「ガルーン」と提携することで、企業の採用担当者が行う面接などの負担軽減を支援しようとしています。ビズリーチは転職希望者が転職サイトから入力した情報を、採用担当者が再入力する手間を省くことを目指しています。
また、ネオキャリアは昨年1月から採用から勤怠、労務を一元管理できるサービス「jinjer(ジンジャー)」で実績を積み上げています。
「jinjer」は既に1000社以上の導入実績があり、今年8月にHRテクノロジー大賞「管理システムサービス部門優秀賞」を受賞しました。さらに来年予定している刷新では社員の経歴情報、給与計算、マイナンバーなども管理できるようになるため、社会保険申請作業の負担を軽減することになります。
このように、中小企業とベンチャー企業を含めた多くの企業がHRテックを導入、活用することで働き方改革を推進することが期待されます。