最近、「社員が朝、出社をしてこず、電話やメールで連絡しても反応が無いのですが、どうしたら良いでしょうか?」という労務相談を受けました。
教科書的には、いわゆる「無断欠勤」ですから、賃金の不就労控除や、場合によっては懲戒処分の対象となります。
無断欠勤発生時のリアルタイムの対応
しかしながら、それは事後的な事務処理の話であって、「リアルタイム」の時間軸では、会社は次のような対応をすべきだと思います。
まずは、本人の安否確認です。とくに、ひとり暮らしの場合は、急病で起き上がれないとか、倒れているといった可能性も考えられます。
本人に連絡が取れない場合は、取り急ぎ、家族などの緊急連絡先に連絡をとりましょう。緊急連絡先にも連絡が付かないとか、近くに様子を見に行ける家族が誰も住んでいないというような場合は、会社から誰かが見に行くことが望ましいです。インターホンを鳴らしても反応が無い場合は、アパートの管理会社等に連絡をとって、鍵を開けてもらうという対応も考えましょう。
鍵を開けたら爆睡していたという顛末ならば、後日指導や懲戒処分をするにせよ、ひとまずは安心ですが、もし倒れていたら、直ちに救急車を呼ぶ必要があることは言うまでもありません。
鍵を開けても誰もいない場合は、家族に「もぬけの殻」であったことを連絡し、家族と相談の上、警察に捜索願を出すなどの対応を検討しましょう。
法的には会社がそこまでする義務は無いかもしれないが・・・
確かに、「会社がそこまでの対応をする必要はない」とか「私生活への過剰な立ち入りだ」という考え方はあるかもしれませんし、法的な意味での責任も無いでしょう。
しかしながら、急病で倒れていたり、何かの事件に巻き込まれたかもしれないという可能性が0%でない以上、人道的な意味で、できる限りのことはすべきだと思います。会社の人が速やかに様子を見に行ったので、一命をとりとめることができた、ということも考えられます。
最近は、仕事と私生活を切り分けるべきだという考え方が主流となってきてはいますが、縁あって入社してくれた社員なのですから、できる限りの気遣いはしてあげたいものです。
とくに、ひとり暮らしの社員の場合は、急病などの場合は、「無断欠勤」を通じて異変に最初に気が付くことができるのは会社ですから、やはり、会社が本人の安否を気にしてあげるべきだと私は思います。
無断欠勤の重大さを社員本人に分かってもらう
上記のような対応をするためには、社員本人の電話番号やメールアドレスはもちろん、家族などの緊急連絡先も入社時に確認しておく必要があります。連絡先が変わった場合は、速やかに届出することを周知徹底する必要もあるでしょう。
また、無断欠勤をした場合には、自宅訪問をすることや、緊急連絡先に連絡をすることについて、同意書を取っておくことが望ましいです。
そのような同意書を書かせることで、軽い気持ちで無断欠勤をしないという意識付けができるでしょう。また、無断欠勤をしてはならない理由について、会社の業務に迷惑がかかるということだけでなく、上司や同僚に「倒れているのではないか」とか「事件に巻き込まれたのではないか」という心配をかけてしまうのだということを分からせれば、無断欠勤がどれほど重大な影響を周囲に与えるのかということを社員も理解してくれるはずです。
また、いざ無断欠勤が発生したときに備え、「何時頃と何時頃に電話をして、それでも反応が無ければ緊急連絡先に連絡」「緊急連絡先にも連絡が取れなければ本人の自宅に行く」といったような、社内マニュアルを作っておくと対応がスムーズでしょう。