毎年5月中旬から下旬頃、従業員を雇用している事業所には、各従業員の居住する市区町村から、住民税の特別徴収に関する書類が届きます。
住民税の特別徴収の仕組み
住民税の特別徴収とは、事業主が従業員に支給する給与から住民税を天引きして、従業員に代って住民税を納付する仕組みのことを指します。
これに対して、事業主を通さず、個人が自分で住民税を納付することを普通徴収と言います。
特別徴収にするか普通徴収にするかは、事業主や従業員が任意に選択することはできず、前年の12月末に現在の会社に所属していて、年末調整を受けた場合には特別徴収、それ以外の場合には普通徴収になります。
年末調整が行われたときに、源泉徴収票とほぼ同じ書式の「給与支払報告書」が事業主から各従業員の居住する市区町村に提出され、これに基づき特別徴収の対象者と特別徴収すべき住民税の額が決まるのです。
ですから、事業主の方は、5月末くらいのタイミングになったら、昨年年末調整を行った従業員全員分の特別徴収の書類が届いているかを確認して下さい。もし、不足している従業員の分があれば、その従業員の居住する市区町村の役場へ問い合わせをして下さい。
住民税の特別徴収のタイミング
住民税は、6月度に支払われる給与から、新しい年度の金額を天引き開始します。住民税の総額を12分割した額を毎月の給与から天引きするのですが、端数が出る場合は、端数を初回の6月の住民税に載せますので、通常は6月の住民税がやや高く、7月から翌年5月までは同じ金額を天引きするイメージになります。
なお、具体的にいくら天引きすれば良いかは、各市町村から送られてくる特別徴収関係の書類の中に金額が明記されていますので、そちらを参照して給与計算に反映させて下さい。
従業員から天引きした特別徴収の住民税は、いったん事業主が預かり、市町村から送られてくる納付書を用いて、翌月10日までに金融機関等で納付します。個人で納める住民税のように、コンビニでの納付はできませんので気を付けてください。
中途入社・中途退職者の住民税
中途入社の従業員の住民税は、特別徴収をする必要はありません。前職を退職した時に普通徴収に切り替わりますので、初年度は普通徴収で対応してもらい、年末調整を経れば2年目からは自動的に特別徴収に切り替わります。
ただし、中途入社者が特別徴収を積極的に望んでいる場合は、「特別徴収への切替依頼書」という書類を市区町村へ提出すれば、年度の途中でも特別徴収に切り替えることは可能ですので、柔軟に対応を判断して下さい。
中途退職者に関しては、「給与支払報告・特別徴収に係る給与所得者異動届出書」という書類を、退職日の翌月10日までに当該従業員の居住する市区町村へ提出して下さい。この書類を提出しなければ、市区町村は退職の事実が分からないので、会社宛に「住民税が未納です」という連絡が来てしまいます。
まとめ
住民税に関する事務処理は、一度理解すればさほど難しいことではありませんが、従業員の居住する市区町村ごとの対応になりますので、従業員数が増えてくると事務処理の量も膨大なものになってきます。従業員数が増える前に、業務に慣れ、社内の事務処理フローを整えておきたいですね。