キャリアアップ助成金など、助成金を活用している会社様も少なくないと思います。
助成金は、年度毎(4月~3月)で見直しが行われるため、申請条件や内容が変更になったり、廃止になる助成金があったり、新しく登場する助成金があったりしますので、主な変化点を押さえておきたいものです。
今回は、絶対に押さえておきたい助成金の最重要変化点を4点に絞って解説します。
キャリアアップ助成金の正社員化コースに要件追加
第1は、キャリアアップ助成金の正社員化コースに「生産性要件」が加わったことです。
キャリアアップ助成金は最も人気のある助成金の1つですが、昨年は、中小企業であれば有期雇用の社員を1人正社員に転換すれば60万円が支給されました(最大で15人まで)。しかし、今年度は1人あたり57万円にダウンしています。その上で、「生産性要件」という仕組みが新たに加わり、決算書の数字に基づいて一定の計算式に基づいて会社の生産性がどれくらい向上をしたのかを算出し、生産性の向上が認められれば、さらに15万円が上乗せ支給されることとなりました。
なお、この「生産性要件」はキャリアアップ助成金に限らず、他のいくつかの助成金でも同じ考え方が採用されており、生産性が向上した会社に対しては、助成金が通常よりも増額支給されます。
東京都正規雇用転換促進助成金の申請のハードルが上がった
第2は、東京都内の会社様に限った話になりますが、キャリアアップ助成金で東京都の上乗せ分として支給される「東京都正規雇用転換促進助成金」の申請のハードルが上がったということです。
支給金額自体は対象者1人につき50万円で変わらないのですが、対象者を今後どのように人材育成していくのかという書面を提出しなければならなかったり、80時間を超える長時間残業が発生している場合は不支給になったり、みなし残業代制度を導入している場合はそれが適正に運用されてるかをチェックされたりと、昨年に比べかなり審査が厳しくなっており、提出しなければならない書類も大幅に増えています。
キャリアアップ助成金に新コース追加
第3は、キャリアアップ助成金に「賃金制度等共通化コース」と「諸手当制度共通化コース」という新しいコースが追加になったことです。
政府は「同一労働・同一賃金」の流れを進めようとしていますが、その考えに基づき、本件の2つのコースが追加されたのだと思われます。前者は、就業規則を改正して、同一の職務に従事する正社員と非正規社員の賃金テーブルを同一化した場合に57万円が支給されます。後者は、就業規則を改正して、正社員と非正規社員に同一の諸手当を支給したり、賞与制度を共通化した場合に57万円が支給されます。なお、生産性要件を満たす場合は、どちらもさらに15万円が追加支給されます。また、これら2つのコースを同じ会社が両方申請することも可能です。
キャリア形成促進助成金がリニューアル
第4は、「キャリア形成促進助成金」が「人材開発支援助成金」としてリニューアルされたことです。
キャリア形成促進助成金の中にはいくつかのコースがあるのですが、昨年人気が高かったのは、「制度導入コース」でした。
制度導入コースとは、就業規則を改定して、「①人事評価制度」「②キャリアコンサルティング制度」「③教育訓練休暇制度」「④技能検定合格者への報奨金制度」「⑤社内検定制度」を導入した場合、導入した制度1つにつき50万円(最大で250万円)が支給されるというものでした。
これが、「人材開発支援助成金」にリニューアルされて、上記①が廃止になり、②以下も、支給要件が変化しているものがありますので、最新の情報を確認した上で支給申請を行うようにして下さい。なお、支給金額も、導入した制度1つにつき47.5万円支給にダウンしていますが、生産性要件を満たせば、導入した制度1つにつき60万円支給となり、助成額はアップする形になっています。
まとめ
以上が、平成29年度の助成金の最重要変化点になります。総括しますと、「長時間労働削減」「同一労働同一賃金」といった、政府が掲げる「働き方改革」に沿った労務管理を行おうとしている会社には助成金が手厚くなる半面、コンプライアンスを重視しない会社は助成金の申請そのものさえも難しくなってきているという状況です。
正しい労務管理を心がけ、その上で、助成金を活用していきたいですね。