取引先が支払いをしてくれない
起業当初は,必ずしも取引先の信用状況を精査できる状況でもないでしょうから,様々な相手方と取引することになります。
取引先からの支払いがしっかりなされていれば順調です。しかし,多数の取引先があれば,中には支払いを怠る相手方も出てきます。
その相手方に対して督促をし,任意に支払ってくれれば一安心ですが,払ってもらえなければ強制的に売掛金を回収するために売買・請負代金請求等の裁判を起こす必要があります。
契約書がないと、負け確定?
ところで,取引先との間の契約書を作成しておらず,相手方が契約をしていないなどと開き直って争う場合,裁判で勝つことはできないでしょうか。
もちろん,しっかり契約書を作成し取引に臨んでいれば,契約書に基づき代金を請求することは可能です。
問題は,取引の都度,契約書など全く作成していない場合です。業種によってはこちらの方が一般的なこともあります。この場合,契約書がなくても,契約した内容(商品,個数,単価,支払い条件など)が契約書以外の証拠で証明できれば,裁判で勝つことは十分可能です。
どんな証拠が必要?
では,どんな証拠が必要でしょうか。
例えば,契約書は作成していないとしても,発注書,請書などの書面により契約の内容が明らかであれば契約の成立は認められます。書面として残っていない場合でも,電子メールのやり取りの中で発注とその依頼を受けた事実が残されていれば,これも重要な証拠となります。
ここまでお読みいただき,今さら言われても,書面も電子メールも残っていないという方もあきらめないでください。口頭だけでも契約は成立しています。口頭のやり取りの録音や,督促した際の相手方の反応(支払いを待ってほしいなどと契約の成立を認めたことを前提としている内容)や,その他,納品書など一連の事実関係から契約の成立を証明できる場合があります。
どんな証拠があればいいかについては,事案ごとに個別の検討が必要です。お困りの場合は,弁護士など専門家へご相談ください。
契約書がありさえすれば大丈夫?
また,契約書があれば何でもいいというものでもありません。起業した当初は,取引先が準備した契約書の内容をよく確認せず,求められるがままサインしてしまっている場合も多いかと思います。
トラブルが起きなければ問題ありませんが,代金を支払ってもらえないなどのトラブルが起きて契約書を確認した際,自社に不利な内容になっていることに気づくことがあります。
起業し新規取引を始める際には,契約書の内容を確認する余裕もなく,不利な内容に気づいても修正を求めにくい状況にあるかもしれませんが,将来にわたる安定し継続した取引を実現するうえでは,一度,契約書の内容を精査し,疑問点は相手方に確認しておくなどの対応が望まれます。