第4次産業革命の影響と原動力
日本政府は、2020年までにGDPを600兆円以上に引き上げることを目指しています。
その中心に「官民戦略プロジェクト10」と名付けられた10の有望分野があり、最も期待されているのが第4次産業革命の分野です。
この分野にはIoTや人工知能(AI)、ロボットなどが含まれており、30兆円の市場創出が目標として掲げられています。
先月、日本経済新聞が発表した日本、韓国、中国の約100人の経営者を対象にしたアンケートでは、今後10年間で最も有望な成長分野としてAIとIoTが回答されています。
第4次産業革命が様々な分野で大きな影響を及ぼすこと、AIとIoTがその原動力になることが確実です。
第4次産業革命という呼称は、ドイツが「インダストリー4.0」という言葉を使い始めたことに由来します。
ドイツは官民一体での取り組みを通じて、シーメンスによるIoTを活用したスマート工場などの先進事例を生み出しています。
新たな先進事例は、今年1月にラスベガスで開かれた世界最大の家電見本市「CES」(Consumer Electronics Show)で確認できました。
中国のレノボが、AIサービスを利用して声だけで家の中の家電を自由に動かすデモンストレーションを披露することでAI、の進化を印象づけました。
成長機会としての第4次産業革命
第4次産業革命の影響を受けて活性化している分野にベンチャー投資があります。ベンチャー企業への投資を本業としているベンチャーキャピタルではない大手企業の積極的な投資が昨年から目立っています。
ベンチャー育成ファンドを増強した企業にJTB、ソニー、NTTドコモなどがあります。
JTBは、東京五輪を意識して拡張現実(AR)や仮想現実(VR)の活用を目指しています。
ソニーは、AIなどの研究開発ベンチャー向けに100億円規模のファンドを設立しています。
NTTドコモは、IoTやAIに関連するノウハウを持つベンチャー企業に対して、昨年度の約2倍の20社に新規投資を行う計画を今年に入ってから発表しました。
大手企業によるベンチャー投資が活性化していることから、IoTやAIなどにノウハウを持つ企業にとっては成長資金を取得する機会が広がっています。
また大手企業が出資する場合は、出資企業が持っている技術やマーケティングのノウハウを活用して、自社の成長を促進することが期待できます。
自社のノウハウに自信があって株式公開を目指す経営者は、投資意欲が高い大手企業に積極的にアプローチすべきです。
第4次産業革命における差別化の重要性
「チャンスはピンチの顔をしてやってくる」という諺があります。
IoTやAIなどにノウハウを持たない企業は、第4次産業革命におけるピンチ、つまりIoTやAIなどによるリスク面を考えておきたいところです。
経済アナリストは、今後、多くの仕事がAIを備えたロボットに代替されること、そして代替が可能な職種は100種類以上であることを予想しています。
代替可能な職種は、企業や学校などの事務員、生産工程や倉庫などの作業員、店舗などでの接客や受付係などです。
また、日本ロボット工業会は、今年の産業ロボット出荷額が昨年対比7%増加の7,500億円と過去最高になる見通しを発表しています。
自社の仕事が将来AIやロボットなどに代替されないようにするに備えることがチャンスにつながります。
そのためのキーワードが「差別化」です。同業他社よりも、自社の商品やサービスが明らかに優れていると評価されるような差別化を実現すべきです。
顧客から評価されるためには、ニーズを的確に把握して、ニーズを満足させることが求められます。デザイン思考を身につけること、グリット(やり抜く力)を高めることで差別化の実現に挑戦して下さい。