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【起業インタビュー第11回】若き3人の風雲児が巻き起こす、保険業界レボリューションに迫る。

公開日:2017.02.08

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「牛丼屋に入ってたった3.5ドル出せば、あんなに清潔な場所であんなにおいしいものが食べられる。こんなに恵まれた国は日本だけだよね、この環境を活かさないとね」って、いつも仲間内では言ってます。

世界をみてきた起業家の、リアリティある言葉だ。

 

小坂 直之(こさか なおゆき)氏
1982年8月10日生まれ。ファイナンシャル・ジャパン株式会社代表取締役。
同志社大学経済学部卒業後、日本ロレアル株式会社勤務ののち、2009年米外資系保険会社入社。2013年にファイナンシャル・ジャパン株式会社を創業。

 

起業の理由

小坂氏は、自身の起業の理由をこう語る。

外資系の保険会社で営業をやっていたのですが、「先がない」と感じました。つまり、1人の営業マンとして世の中にインパクトを与えられるとしても、契約件数で年間100~200が限界のビジネスモデルなんです。
別のビジネスモデルを考えるにあたって、シンガポールで出会った「アジアのコングロマリットでこんな事業をやりたい」と語る起業家や、サンフランシスコで新しいテクノロジーを使ってサービスを提供している人たちの話を聞くにつけ、1人で何千万円稼ぐというよりも、事業・会社として大きなインパクトやバリューを出していきたい、と思い、起業に至りました。

 

業界が抱える課題

「約二十数万人の保険営業職のうち、毎年十数万人が入れ替わる」という離職率の高さ。これを原因とする多くの課題を保険業界は抱えている、と小坂氏は分析する。

 

課題①「商品知識・金融知識の不足」

離職率が非常に高く、半分以上は1年目の営業マンなので、当然、商品知識・金融知識は身についていません。そしてそれだけではなく、業界では営業職の人が保険の勉強をしてもなかなか販売に結びつかない、という実態があるんです。
その結果、保険の知識が豊富でお客様に高い価値を提供している人でも業界を去ってしまうのは珍しいことではなく、単に新しいお客様を探すのが上手な人が残りがちな傾向があります。ですから、何年も業界にいるようなプロの中でも、知識が豊富な人とそうでない人とで相当のギャップが生じてしまっています。

 

課題②「企業の都合に劣後する、顧客の利便性」

営業職の離職率の高さは、何よりもお客様にとっての不幸です。例えば、「担当者があなただから」と思って保険に加入したのに、その「あなた」がすぐに辞めてしまうわけですから。
そして後任の担当者にとっては、引き継いだお客様は「自分のお客様」ではありません。そうすると、例えば新商品がでて保険商品のコストパフォーマンスは年々向上しているにもかかわらず、その進化に沿ってお客様に提案をするというインセンティブが働きづらいのです。

顧客も販売側も商品知識が不足していることと、「売り手」の都合が優先されてしまっていることが相まって起きる弊害を、小坂氏はこう語る。

例えば、1入院360日型の医療保険がありますが、日々医療技術は進歩していて、今は入院するとしても長くて1入院20日ぐらいです。また、入院5日目から給付金が発生する保険がありますが、そもそも入院が5日を超えるケースも減り、通院ベースで治療するというケースが増えてきました。
いずれの保険も今の医療の現状とギャップがあります。しかしながら、こういった保険商品をまだまだ意図せず契約を続けているお客様は世の中にたくさんいらっしゃいます。にもかかわらず、新規契約が毎年千数百万件あるというのが実状なんです。

保険商品の検討シーンにおいては他にも課題があるという。

例えば入院保険は、日額10000円で1社に加入するよりは、2000円×5社に加入する方が、特定の特約に限ってはパフォーマンスが5倍にまで最大化されるケースもあります。
特定のがんの放射線療法(先進医療)を受けたいと思ったら、自己負担が約300万円にも上ります。これを保険で賄うために、先進医療特約(月々約100円前後)というものがあります。実際にその医療を受けた場合、特約への加入が1社であれば、保険給付金は1社からの受け取りです。
一方、特約への加入を5社にしておくと、5社すべてから保険給付金を受け取ることができます。先に挙げた例ですと、300万円×5です。しかも、この給付金は非課税なんです。しかし、こういう情報がお客さんに全然周知できていません。

 

課題③「信頼関係の構築が不十分」

1年ほど前に他業界から加入した新規事業開発室の鹿内氏は、自らの体験を交えてこう語ってくれた。

鹿内 孝政(しかない たかまさ)氏
1987年1月4日生まれ。新規事業担当。上智大学大学院博士前期課程(数学専攻)修了後、株式会社ネクスウェイに勤務。2016年に小坂から声がかかり、保険業界新規事業開発に転身。新サービス「Hospa」(ホスパ)をリリース。

離職率が高いわけですから、お客様からしてみれば、担当者の変更が多くなるということになります。
これは私の体験ですが、「前任が退職しまして、新しい担当の○○です」と毎年に近い頻度で担当者変更のご連絡をいただきます。しかも、その時々の担当者に「急ぎではないけど、年内に顔を出してくれれば」と依頼はしているのですが、4年連続でスルーされています(笑)
私のケースは極例かもしれませんが、担当者とお客様が毎月・毎年会うわけではありません。しかも、会うときは先の知識不足の問題(課題①)もあり、大概が定型的な話に終始してしまうと聞きます。

小坂氏:会社からみると営業効率が悪いし、お客様からみても要領を得ないんですよね。

鹿内氏:お客様からすると、本当は話の正確性や信憑性を確かめたいんです。でも、なかなか担当者に会うことはできないし、仮に会えた場合にも業界全体のイメージもあって、商品を売り込まれてしまうのではないかという不安に陥ってしまって、目的を果たせていないという話を聞きます。

 

現状への思い

課題が山積しているように聞こえる保険業界。小坂氏はその現状をどのように感じているのだろうか。

2016年5月に改正保険業法が施行され、今、業界は激変しています。ゲームチェンジが起こり、ルールが変更され、先行者は全員スタート地点に戻された状態です。
一方で、業界への参入障壁はかなり高くなりました。こういう現状を、非常におもしろいと思ってます。
私たちは、保険の最適化を図るという本体業務を粛々と拡張しつつ、人とITとを駆使してお客様の利便性をさらに高める新規サービスを提供してゆきます。
保険商品の提供というのは、見えない未来を見るわけではなく、現状あるものからピックアップするものです。つまり、インプットもアウトプットも有限であると言えます。そのため、機械学習との相性がいいと考えています。

 

解決策の実践とさらなる構想

シンプルなオンラインサービス「Hospa」(ホスパ)

保険のコストパフォーマンスをチェックするためのオンラインサービス「Hospa」(ホスパ)について、鹿内氏に伺った。

この業界は、お客様よりも企業の方に軸が寄っている業界です。そのバランスを少しずつ改善していきたいと考えています。「営業に押し売りされる」「何が正しいかわからない」というお客様からみた不安や不満を少しずつ解決していくようなサービスを、私は提供したいと思っています。
Webでサービスを広めるには、まずはシンプルでわかりやすことを最優先すべきだと考えています。「Hospa」(ホスパ)は、コスト重視とパフォーマンス重視という2つのシンプルな観点から、お客様が加入中の保険や、提案を受けている最中の保険についてチェックをすることができます。お客様が保険の見直しを検討する際に、まずはライトにチェックしたい場合や、契約前の手軽なセカンドオピニオンに使っていただきたいです。

 

GPSを駆使した新サービスの構想

GPSを駆使した新サービスの構想については、小坂氏が詳解する。

「今だったら話を聞けるのに」とか「今会いたい」とお客様が思っても、営業担当者がそのタイミングで足を運べることはほぼありません。また、「話は聞きたいのだけど、営業をかけられるのは嫌だ」という人も圧倒的に多いです。
だとすれば、お客様に”今話を聞きたいフラグ”を立ててもらい、GPSで認識させた、周囲にいる営業担当者から1人選んでもらえればいいじゃないですか。いわばUberのドライバーを選んでもらうようなものです。
これは、お客様と営業担当者とのマッチングサービスであり、保険のプロフェッショナルのデリバリーサービスでもあります。業界内に類似のサービスはありません。
このような効率化を図るとともに、毎年留まる十数万人の営業職の方々が保険の知識をどんどん仕入れて最適化が進めば、あるいはその数十万人だけでも対応できるのはないか、という推論と期待もあります。

 

共同経営者木之下氏との二人三脚

ファイナンシャル・ジャパン株式会社で共に代表取締役を務める木之下氏についても、小坂氏に伺った。

木之下 純(きのした じゅん)氏
1982年5月10日生まれ。ファイナンシャル・ジャパン株式会社代表取締役。大学卒業後、不動産系勤務ののち、2008年米外資系保険会社入社。2013年ファイナンシャル・ジャパン株式会社を創業。

木之下は前職の外資系生命保険会社時代の同僚で、ビジネスモデルを一緒に研究した仲です。たまたまタイミングが合い、ファイナンシャル・ジャパンを共同経営することになりました。
私は「バランス型」の人間ですが、彼は営業力が突出して高く、1対1に強い人間です。社員が驚くほど2人の考え方は異なりますが、基本的には管掌領域を分担しつつ、互いの弱点を補完し合える絶妙の二人三脚がうまくいっています。

木之下氏とは、冒頭の撮影のわずかな時間しかお会いできなかったが、強烈なオーラ、吸引力を放っていたことは特筆しておきたい。

 

小坂氏の「採用力」

新規プロダクトオーナーとして、企画・開発・マーケティング・ユーザーサポートそしてプロモーションやアライアンスパートナーを探すこと、そのほとんどすべてを1人でこなしているという鹿内氏。その入社の経緯がなかなかに独特だ。

電気通信業界にいた頃、友人を通じて小坂さんと会うプライベートな機会がありました。普通に食事をする場だったのですが、私の経歴もほとんど訊かずにいきなり「一緒にやろうよ」と誘われました。
最初は「怪しい」「危ない」「こわい」としか思えませんでしたが(笑)、半年の期間をかけて何度か顔を合わせて話をしていくうちに、「この人と一緒に仕事をしたい」と強く思うようになりました。

鹿内氏の友人は、小坂さんに「口説かれた」翌日に勤め先に辞表を出して、ファイナンシャル・ジャパンに加入したという。おそるべき採用力だ。

 

起業家として想うこと

起業家として今、小坂氏はどのような想いを抱いているのか。

自分はゼロイチ(0→1)が好きです。1→10が好きな人もいるし、10→100が好きな人もいます。やりたいフェーズは人それぞれですし、どれがえらい、とかはないと思います。それぞれに適切な場所があるだけですから。
私たちがアライアンスを組ませていただいているスタートアップ企業のうち既に数社が上場、今年も新たに数社が上場予定です。こういうふうに横の繋がりを充実させ、ビジネスを拡大し、価値全体を膨らませていくことで世の中がよくなればいいな、と思っています。
日本は大変だ、恵まれていない、という人もいますが、むしろ日本ほど恵まれた国はありません。牛丼屋に入ってたった3.5ドル出せば、あんなに清潔な場所であんなにおいしいものが食べられるんですよ。こんな国、他にないじゃないですか。この恵まれた環境を活かさないとね、っていつも仲間内では言っています。

 

編集後記

小坂氏から入社を勧められる自分の姿を想像してみた。爽やかな風貌、明瞭な語り口、理路整然とした内容、熱く純粋な想い。
…やはりうまく断るのは難しそうだ。そういう魅力のある壮年起業家だった。

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