【起業インタビュー第10回】「会社の経営は子育ての延長」 4児の母の家族的会社経営|起業サプリジャーナル

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【起業インタビュー第10回】「会社の経営は子育ての延長」 4児の母の家族的会社経営

公開日:2017.02.07

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「会社の経営は子育ての延長のようなものです。自宅と職場の感覚が変わらないんですよね」

MBAを保有し、多角経営で40名近くの社員を束ねるバリバリのキャリアウーマン。
柔和な面立ちと長閑な語り口は、私の想像とは全く正反対だった。

 

渡邉 ひろ子(わたなべ ひろこ)氏
株式会社ステラ代表取締役社長。MBA(経営学修士)。日本輸出入銀行(現在:国際協力銀行)勤務後、税理士事務所、ベンチャー企業の財務担当を経て、2010年ステラ入社。2013年より現職。
上は高校生から下は6才まで、4男子の母でもある。

 

入社して社長になるまで

今回お話を伺う渡邊氏は、いわゆる01(ゼロワン)起業家ではなく、1(既にスタートアップしていた企業)を10、20と拡大している経営者である。
代表取締役社長になるまでの経緯をお話いただいた。

出産後、就職活動をしていて、比較的自宅から近いこの会社に応募しました。
面接の際、帳簿もつけたことがない、年末調整も経験がない若い社員だけで、間近に迫った年末調整を行わなければならない事態であることを知りました。私の履歴を見た採用担当者から「ぜひ助けて下さい」と依願され、放っておけないと思い、入社を決めました。

入社後3~4ヶ月で「会社のマネジメントを」ということで執行役員になり、財務・経理を管掌しました。その後、創業者が主婦業に専念するということで打診を受け、「私でよければ」ということで代表取締役になった、という経緯です。
私が代表になった頃、社員は13名でしたが、その後一時は50人近くにまで増え、現在は40人弱の社員を抱えています。

 

会社の特徴

「子育て支援優良事業所」認定

2016年2月、株式会社ステラは、船橋商工会議所・子育てゆうゆうふなばし推進委員会から、「子育て支援優良事業所」として認定を受けた。
同時に、子育てゆうゆうふなばし推進委員会委員長賞も受賞。在宅勤務が可能で柔軟なシフト変更ができるなど、積極的な就労環境の整備と実施が評価されたという。

自分が子育てをしながら仕事をしていますので、社員にとっても子育てがしやすい職場でありたいと思っています。
結婚や出産まで、と考えて入社する若い女性も多いですが、そういう社員たちが産休・育休を経て戻ってきてくれる会社であればいいな、と。
仮に当初の予定通り、結婚や出産で会社を離れるとしても、それまでの間にテレワークを覚えたり、スキルを身に着けるなどして、後のキャリアに活かしてほしいですね。

受賞の記事が載った商工会議所の会報をたまたま目にした高校生の長男に「お母さんが写ってる。何をやらかしたのかと思った」と言われた、と笑う渡邊氏。とても嬉しそうな笑顔だったのが印象的だ。

 

独立制度

株式会社ステラは、社員の独立を支援しているという。例えば、SES(システムエンジニアリングサービス)業務を提供する株式会社ストーリアは、この制度から起業した会社だ。

下請けの場合、客先常駐エンジニアの「定年」は、一説には男性45才・女性35才とも言われます。それまでに技術を身に着けて後進を育てることができるよう、希望する社員の独立を支援しています。当社は、経理や採用の面でサポートをさせてもらっています。

 

専属アドバイザー制

新人社員のケアとしてこのような制度を採り入れているのも、女性らしい細やかな気配りだ。

現状、私自身が、社員1人1人と万遍なくランチに行ったり、ということはなかなかできません。かといって、若い新人たちに誰も声を掛けてあげないとずっとほっとかれることになりますし、彼女たちは、自分から来る世代でもありません。
そこで、先輩社員を新人1人1人につけて、一緒にご飯に行ったりLINEを交換したりしてもらっています。それが専属アドバイザー制です。
わからないこと、悩みなどを聞いてもらい、必要があれば私にまで報告してもらうようにしています。ありがたいことに、先輩社員たちは率先してアドバイザーを引き受けてくれています。

 

多角経営

出版事業、中古車販売事業など、多角経営を行っている株式会社ステラ。中でも、JOB HELPは、完全無料の求人サイトとして異彩を放つ。

JOB HELPは、企業登録・求人広告掲載、求人情報の検索・応募等の全ての機能が無料で利用できます。
WEB上で自社の求人を出したいと思い、求人サイトをいろいろ調べたのが発端です。でも、完全無料の媒体がありませんでしたので、「じゃあ自分たちで作ろうか」ということになりました。地域内企業コミュニティの構築や、当社アピール、地域貢献の達成が目的ですので、課金は一切発生しません。

「多角経営をしていく上で、少しずつではあるがいろんなことを覚えていくのが楽しい」と渡邊氏は笑う。

JOB HELPWebサイトのトップページ

 

採用・雇用の方針

「買い手市場」の昨今、渡邊氏はどういう方針で採用を手掛けているのだろうか。

いま会社に在籍しているのは、自分より後に入社したメンバーがほとんどです。どうしても自分が一緒に仕事をしやすいメンバーを採用しがちで、「これでいいのかな」と悩むことはあります。会社にはいろんな考えの社員がいてもいいと思いますから。

とはいえ、採用するということは、その人の人生を預かるということです。また、会社側からみれば、会社の看板を背負ってもらうことでもあります。ですから、お互いのミスマッチを避けるために慎重にはなっています。正解は未だにわかりませんが。

相手に都合の良い、聞こえがいいことだけを告げるのは、面接ではなく説得です。良い面だけ伝えるのは嘘になってしまいます。ですから、ロケーションが良くはないこと、社内の掃除は社員全員でやることなど、マイナス(かもしれない)面も含めて伝えるようにしています。

その上で、私が一緒にお仕事をしたいと感じた方には内定を出しています。とりわけ新卒の就職は本当に大事です。「よく考えて、ギリギリまで悩んでいいから、それからお返事を下さい」と言っています。それなりの覚悟をもって来てほしいと思っていますので。

 

20代が中心の若い会社だが、頼もしいシニア世代の社員もいらっしゃるという。

大手メーカーの財務・経理畑で定年まで勤め上げた社労士の方が、週に2回、自転車で通ってくれています。
黙々と仕事をし、正確で速く、さまざまなアドバイスを下さるのでとても頼りにしています。事務職として若い社員の目標となる存在です。

今のシニア世代はフットワークが軽く、積極的です。私の親も、若い社員を家に連れて行くと、ご飯を振る舞い、車で家まで送ったりしますし(笑)
一方、今の20代は生まれた時から不景気だったせいか、何かに期待するという気持ちが薄く、諦めも早い傾向があります。若い社員たちの活力を引き出すために、もっとシニア世代の活用も考えた方がいいのかもしれませんね。

 

自己研鑽――税理士取得へ

所定の5科目につき、試験に合格するか、または指定の大学院課程を修了することによって資格を得ることができる税理士。
渡邉氏は、忙しい社長業と子育ての合間を縫って、その取得に励んでいる。

大原簿記専門学校で1科目取得したきり、特に取得しようとは思っていませんでしたが、この会社に入って「取った方がいいかな」と思うようになりました。
そこでまず、文京学院大学大学院に往復3時間かけて、2年間通いました。午前中は仕事、午後は家族の食事の準備などをした後に通学し、20時に講義が終わり、21時30分帰宅、というような生活を送っていました。当時、一番下の子はまだおむつをしているような年齢。家族にはさぞかしストレスがかかったと思います(笑)
そして今は、千葉経済大学大学院に週2回(水・土)通っています。この院を卒業すれば、税理士になるまであと1科目(試験を受験)。皆さんが応援して下さるので頑張ります。

 

子育ての延長として

「経営者として、社長として、何が一番楽しいですか」という問いに、渡邊氏はこう答えた。

若い世代と交流できることが一番の楽しみですね。もし私が普通のパートであれば、集まるのは同世代でしょうし、若い子たちと食事に行く機会なんてなかなかないでしょうから。
若い子たちは時折びっくりするような失敗もしますけど、怒ってしまうとお互いストレスになりますから、笑って諭すようにしています。
新卒や第2新卒の若い社員が多い会社ですから、会社の経営は子育ての延長のようなものです。自宅と職場の感覚が変わらないんです(笑)。私がわが子に接する姿を見た社員が「自分たちに接しているのと変わらない」と驚いていたぐらいですから。

 

編集後記

社員から「お母さん」と慕われるという渡邊氏。ネットやスマホでほとんど全てが完結してしまいそうな、ややもすると希薄でドライな現代に、古き良き「家族」経営をみたような気がした。

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