こんにちは。司法書士の田中あゆ美です。
起業して会社を設立することになった場合、「株式会社」と「持分会社」があることは前回の記事で説明させていただきました。今回は、一般投資家から出資を募って株式会社という形態で会社を設立するに当たって、どういった会社の機関設計が可能なのかということについてご説明したいと思います。
株式会社の機関設計
機関設計とは、株主総会、取締役、取締役会、監査役、会計参与といった意思決定や業務執行の権限のある、法律で定められた機関について、その組み合わせを決定することを言います。
株式会社の機関設計には大きく分けて、「公開会社」か「非公開会社」かという軸と、「 大会社」か「大会社以外の会社」かという軸で考えることができます。
公開会社と非公開会社
「公開会社」とは、発行する株式の全部または一部について定款で譲渡制限を定めない会社を言い(会社法2条5号)、「非公開会社」とは、発行する株式全てについて譲渡制限のある会社を言います。つまり、会社の承認を必要とせずに株式を自由に譲渡できる株式を一株でも発行していれば公開会社となります。
大会社と大会社以外の会社
また、「大会社以外の会社」については、旧商法特例法では、株式会社の資本金・負債の額に応じて、大・中・小会社に区分していました。しかし現行の会社法ではその区分が廃止され、「大会社」については、「最終事業年度にかかる貸借対照表に資本金として計上した額が5億円以上、又は最終事業年度に係る貸借対照表の負債の部に計上した額の合計が200億円以上」であるという規定があるため(会社法2条6号)、「大会社以外の会社」とは、資本金5億円未満かつ負債200億円未満の会社が該当することになります。
機関設計のルール
では、機関設計をするにあたり、どのようなルールが存在するのでしょうか。
会社法では、旧商法の規定とは違って、定款自治の考え方に基付いて、自由度の高い機関設計を認めています。基本となるルールは、「全ての株式会社は、株主総会及び取締役を置かなければならない」ということです(295条、326条1項)。株主総会とは、株式会社を運営するに当たって重要となる基本事項を決定する機関です。そして株主が自分の意思を経営陣に伝える権利を行使する場でもあります。また、取締役がどういった役割を果たすのかについては、会社の機関設計によって異なってきます。
こう言ったルールに加え、先に述べた「公開会社」か否かと、「大会社」か否かによって、制限が加わります。例えば、「公開会社」であれば「取締役会」「監査役」(監査役については、「委員会設置会社を除く」)を置かなければならない、と言った制限があります。(327条1項1号、2項)
次回以降の記事ではベンチャー企業で一番多い、非公開かつ大会社以外の会社について、取り得る機関設計についてご説明したいと思います。