【起業インタビュー 第4回】「ひっそりと深く浸透したい」 多才な起業家の静かなリラクゼーション革命(前半)|起業サプリジャーナル

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【起業インタビュー 第4回】「ひっそりと深く浸透したい」 多才な起業家の静かなリラクゼーション革命(前半)

公開日:2016.12.16

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颯爽と私たちの前に現れたその起業家は、私が質問を発するより早く、本題に入った。
事前に受領した質問項目はすべて頭に入っていて、インタビューのストーリーは予めできあがっているのだ。

私は慌てて録音アプリを起動した。

 

新井 卓二(あらい たくじ)氏
株式会社VOYAGE代表取締役。経済産業省地域ヘルスケアビジネス創出アクセラレーター。山野美容芸術短期大学非常勤講師。昭和女子大学現代ビジネス研究所研究員。
2000年に明治大学商学部卒業後、国際証券(現三菱UFJ・モルガンスタンレー証券)に10年勤務、明治大学ビジネススクール在学中に退職。翌2011年に在学中に株式会社VOYAGEを起業。「法人向け出張リラクゼーションVOYAGE」として、福利厚生の一環として企業内のリラクゼーションルームの設置を提案。現在は「健康経営」の社会的認知度向上や導入促進も行う傍ら、研究者としても活躍中。

 

起業の経緯

―まず、その業種に着目された理由を伺えますか?

新井氏
前職の証券会社(現・三菱UFJモルガンスタンレー証券)で、株式売買の担当をしている時期がありました。その仕事柄、さまざまな業種の会社を調べましたし、世の中の移り変わりも見てきました。例えば、私の在職中にゲーム会社やパチンコ会社が上場できるようになって、「ああ、世の中変わっていくんだなあ」と。
ですから、起業するなら新しい分野で、と思っていました。

加えて当時の私は、偉そうにも個人事業主ではなく会社経営者になりたかったのです。個人事業主は自らの技術で稼ぎますが、会社経営者は自分が現場で手を動かすわけではありません。私は、会社経営者として、自分ではできない分野に参入したいと考えていました。もっとも、これを実行したために、後に大変な目に遭うのですが・・・(笑)

そして、このリラクゼーション業界には、前職での同僚女性である後藤さんが先駆けて転職していました。彼女からいろいろな話を聞くうちに、この業界に参入しようと決めました。

―なるほど、そういう経緯だったのですね。ですがそれほどの大手企業をお辞めになられることに躊躇いはなかったのですか?

新井氏

とりわけ証券業界は、マーケットに左右される面が大きい業界です。つまり、自分の営業努力と顧客の資産価値増加・顧客満足度が全く比例しません。そうではなく、自分が頑張った分に比例してお客様が幸せになる、喜んでいただける仕事をやりたかったのです。

また、前職の会社は合併が続きました。合併が続くということは、それだけ社員の数が増えるということであり、それは上が詰まってくるということでもあります。

私は人事部にも在籍していた時期がありましたので、なおさら、社員が増えた分自分の昇進が遅くなることがわかりました。計算すると、支店長になるまであと15年、20年とかかるわけです。それもどうなのかなと、人生がつまらなく思えて。

 

業界の既成概念にとらわれない

職人肌には向かない?

―ある取材を受けた新井さんが「当社のセラピストには、職人肌の人はちょっと向かないと思います」とおっしゃっていましたが、どのような意味なのでしょうか?

新井氏
おもしろい質問をされますね(笑)。もちろん、セラピストとして、リラクゼーションの技術は必要です。ですが、それだけでは足りません。

当社の顧客の窓口は、先方(法人)の人事部です。この窓口の方々とのコミュニケーション(相談、交渉、提案)が図れることが肝要なのです。
例えば、顧客についてのトピックを共有して円滑なコミュニケーションを図るため、社内では「新聞会議」なども実施しています。技術だけでは足りない、という意味はここにあります。

当社の顧客である法人様は、企業活性化の一環として私たちの出張リラクゼーションというサービスを導入して下さいます。ですから、一行為にすぎないリラクゼーションをすればよいというわけではなくて、サービスがその法人様全体の健康増進に寄与しているか、生産性の向上に貢献しているか、という視点を持って仕事に取り組まなければならないのです。

―「トータル・リラクゼーション」という感じなのですね。

大人の品格

―もう1点、Webで拝見して伺いたかったのですが、応募者に求める人物像として「大人の品格がある人(今はなくてもOK!!)」とありました。こちらについて聞かせていただけますか?

新井氏
先ほど申し上げたように、先方の窓口は、一定以上のキャリアのある人事担当者の方々です。こちらに社会人としてのマナー、たしなみが備わっていないとうまく意思疎通ができません。
当社のセラピストは現在女性だけなので、社内で「女性の品格」についての勉強会も実施して、その向上に努めています。

―どうして御社のセラピストは女性だけなのですか?

新井氏
当社の顧客に「施術者は男性・女性どちらがよいか?」というアンケートを2015年9月に実施させていただきました。そこで173名様の回答を得たのですが、「女性がよい」が44%、「どちらでもよい」が56%で、「男性がよい」という回答は1人もいらっしゃいませんでした。少ないことは予想していましたが、さすがに0人だとは思いませんでした(笑)

また、街のマッサージ&リラクゼーションサロンに求められる要素としては①技術、②強押し、ですが、当社のアンケート結果では、①技術、に続くのは②優しさ、③親しみやすさ、で、ようやくその次が④強押し、でした。街のサロンと法人派遣とでは需要が違うということですね。

男性がメインの同業者もいらっしゃいますけど、上記のような理由から、当社のセラピストは現在女性だけです。

 

差別化戦略

新井氏
「セラピストは女性だけ」という以外にも、当社はいくつかの差別化戦略を採っています。
リラクゼーションは開業が容易、つまり参入障壁が低いですから、個人事業主も含めた競合他「者」との差別化を図らねばならないのです。

 

エビデンス

この業界が発展するためには、リラクゼーションが「なんとなくいいもの」というだけでは足りません。リラクゼーションが生産性の向上に寄与できるというエビデンス(科学的根拠)が必要です。
そこで、当社は、マッサージやリラクゼーションを通じて取得した各種のデータを日本産業ストレス学会で発表し、そのエビデンスを得ようと試み続けています。

発表すると、さまざまなご意見を頂戴したりご指摘を受けたりします。毎回試行錯誤の連続ではありますが、私たちの業界も徐々に学会に浸透してきたという感触を得ています。

2015年、経済産業省が「健康経営」を掲げ、同年には一定規模以上の企業にはストレスチェックが義務化されました。国の政策はこちらでコントロールできることではありませんが、社員の健康管理を向上させるという機運が高まっている今、この盛り上がりが続くような活動を継続していきたいと思っています。

 

付加価値

他企業さんと連携させていただくことによって、顧客への付加価値のご提供ができています。実績は一部上場企業含め、30例以上あります。
一例を挙げますと、スポーツジム監修の「職場でできるスクワット」の紹介、飲食品メーカーからの各種健康飲料・健康食品の試供、健康器具メーカーからの健康サポートグッズの試供、などです。

こちらから他企業さんへ営業に伺うこともあれば、先方から提供をお申し出いただけることもあります。私が通っていたビジネススクールの同輩の方を通じて、その方がお勤めの企業と連携したこともあります。

 

Webカルテ

弊社では、クラウド上にお客様お一人お一人のカルテ(健康Myページ)をご用意しております。

ここには、担当セラピストからの健康アドバイス、管理栄養士からの食事アドバイス、健康運動指導士からのストレッチについてのアドバイス、産業カウンセラーからのアドバイスなどの情報が記録されます。
お客様にとっては、いつでもどこでもその情報をPCやモバイルから確認することができますし、弊社にとっても、個人情報を紙で保管するというリスクを回避できるというメリットがあります。

インタビュー後半へと続きます。
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