成長と安定の基礎となる事業ドメイン
企業は存続することが期待されます。
ゴーイングコンサーンという言葉が示す通り、経営者は継続を前提に経営をしていくことが求められます。そのためには設立期、成長期、安定期という3つの段階をたどって、事業を軌道に乗せることが必要になります。
企業を成長と安定に導くためには事業ドメインを確立することが必要です。事業ドメインは対象顧客、提供できる価値、提供する方法を明確にすること、言い換えると誰に、何を、どのように、を明らかにすることで、確立できます。
例えば、ツタヤを運営しているカルチャ・コンビニエンス・クラブの事業ドメインは次のように表現することができます。
【対象顧客】
自分のライフスタイルを持っている人
【提供できる価値】
新しい生活提案
【提供する方法】
音楽や映像といった娯楽コンテンツ、多くの小売業やサービスで使える利便性の高いポイントカード。
このように事業ドメインを確立することが、企業に成長と安定をもたらすことになります。
経営者にとって必要な「グリット」(やり抜く力)
事業ドメインを確立するためには、5年または10年といった中長期的な取り組みが必要です。この役割は、一義的には経営者が担います。
しかし、経営者だけで事業ドメインが確立できるというわけではありません。社員に協力してもらいながら、試行錯誤を通じて事業ドメインを確立するためには「グリット」(やり抜く力)が必要です。
「グリット」とは、もともとは勇気や肝っ玉などと訳される口語ですが、最近は経営やキャリア開発の分野で使われています。
語呂合わせで、Guts(度胸)、Resiliens(柔軟性)、Initiative(主体性)、Tenacity(執念)から「GRIT」が構成されるという説明が行われています。
経営者が事業ドメインを確立するためには、生まれ持った「才能」よりも設立後の「グリット」の方が重要です。
設立後に誰に、何を、どのように、を明確にしていく過程において「グリット」を発揮することが、企業を成長、そして安定へと導くことに結びつきます。「グリット」を発揮して成功した経営者の代表例は、挫折を乗り越えたアップルのスティーブ・ジョブスでしょう。
情熱を粘り強さに結びつけることが「グリット」の本質
「グリット」研究の第一人者、ペンシルバニア大学のアンジェラ・ダックワースは、簡潔に、「グリット」とは情熱と粘り強さである、と説明しています。
一時的に情熱を持って短期間で頑張るのではなく、情熱を持続させ、粘り強く、成長と安定に取り組むこと、つまり情熱を粘り強さに結びつけることが「グリット」の本質ということになります。
情熱を粘り強さに結びつけるためには、日々の仕事の中で小さな目標を設定し、それを1つずつ達成していくことが必要になります。
例えば、1日に30分の時間をかけてサービス品質を改善するとします。もし30分で1%の品質改善ができて、それを1年間続けると、1.01の365乗となり、当初は1.0であった品質が37.8へと大幅に改善される計算になります。
経営者は、日々の仕事で小さな目標を設定して、その達成に挑戦することが期待されます。