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私募のオンラインサービスにより投資家と企業の双方に直接金融の新しい機会を広げる Siibo証券株式会社 小村 和輝【起業インタビュー第220回】

公開日:2024.11.21

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企業の成長にとって不可欠な資金調達。銀行などの第三者を通して行われる間接金融と、企業と投資家が直接やり取りをする直接金融の大きく2つの方法がありますが、日本では伝統的に前者が大きな比重を占めています。まだこれから市場成長の余地がある直接金融の市場を舞台に、投資家の人数を限定した「私募」という勧誘方法に着目して従来から使われていた私募をオンライン化することで資金調達・投資機会を広げている企業、Siiibo証券の小村さんにお話を伺いました。

 

ーまずは提供されているサービスの概要からお願いします。

私たちはSiiibo証券という会社です。社名にも入っております「私募」という勧誘形態を使って、資金ニーズのある企業と投資意欲のある投資家を直接繋ぐプラットフォームを提供しております。 取り扱っているのは「社債」で、社債に特化したネット証券は日本で唯一(※)となっております。社債は、不特定多数の投資家向けに公募する「公募」と「私募」に大別されます。

私募社債は、投資家を49人までに限定することで、投資家に機密性の高い財務情報などを開示することができます。公募債を発行するためには、有価証券届書や目論見書のような各種書類が必要となり、実質発行できるのはごく一部の大企業に限られているのですが、私募では、ある程度情報公開の規制が緩和されます。 Siiibo証券では資金調達を行いたい企業と投資家を繋ぐプラットフォームを提供しておりまして、業態でいうと第一種金融商品取引業者として登録を受けた証券会社になります。弊社を通じて社債を発行する企業は、アーリーから上場企業まで、幅広い企業にご利用いただいています。業種も、金融、toC向け、saas、バイオなど様々です。

投資家には法人も含まれていますが、メインは個人の投資家です。資産運用額が数千万円から数億円程で、ある程度投資経験をお持ちの方々に、運用ポートフォリオの分散投資先としてご利用いただいております。

投資家ユーザにとっての大きなニーズは、定期収入です。いわゆるインカムゲイン型投資と呼ばれるもので、株式投資のようにアップサイドを狙って銘柄選定していくというよりは、決まった期間、一定の利息収入を得るための投資手段で、近いものですと不動産投資が挙げられます。このような商品性から、資産の大部分を充てるというよりは、株式投資などによるアップサイドと組み合わせながら、一部をインカムゲインを目的とした債券投資先に選んでもらうということを想定しておりまして、投資家ユーザの属性は投資初心者の方というよりは、投資経験をある程度お持ちの方が多いです。

 

ーありがとうございます。どのような経緯でサービスの立ち上げに至ったのでしょうか。

元々新卒で入った会社はドイツ証券という投資銀行と呼ばれる金融機関の一種で、トレーディング業務に従事して、企業の信用力に対して投資をするクレジットものと呼ばれる商品を扱っていました。そこでは、シンプルで透明性が高く、利息が安定して入ってくる商品に、投資家の潜在的な強いニーズがあることを強く実感しました。しかし、プロの方々、いわゆる金融機関やヘッジファンド等の方々は大企業等の発行するシンプルな公募社債への投資機会が豊富にある一方で、アマチュアの方、個人投資家の方々はデリバティブなどが加わった複雑な仕組債などを買わざるを得ないケースが多いのが現状でした。企業にとっては、大きな金額を少数の機関投資家から集める方が楽なので、シンプルな商品ほどそうなりがちなのですが、個人の投資家の方々にもそうした定期収入のニーズは強くあるので、なんとか個人にももっとシンプルな投資機会を提供できないか、ということを、当時から考えておりました。また、複雑でわかりにくい商品を、金利が高いという一面からだけで判断して個人投資家が購入してしまっている現状も非常に問題だと感じていました。

その後ブラックロックという運用会社に移った頃に、中小企業などが、自己募集という形で、直接縁故のある取引先や知人向けに、証券会社を介さずに私募社債を発行している事例に気付きました。仕組み自体は従来からあったもので「縁故債」とも呼ばれていました。発行金額の規模は数千万円から数億円単位で、金融機関が作っている市場の外で、取引されているのです。クローズドな取引なため、投資家にとっては公にされていない機密性の高い情報を取得したうえで投資判断ができる環境でした。投資家の人数制限により、企業にとっても情報公開の範囲を限定することができます。この私募社債の仕組みをWeb上でプラットフォーム化して提供できないか、と考えたのが創業のきっかけです。

 

ーありがとうございます。新しい金融商品の提供、ということを考えたときに、投資銀行に勤められていたこともある中で、それでも起業を選ばれたのはなぜですか?

この市場は新興企業でないと開拓できない、と考えたためです。例えば大企業の中でこの企画を挙げても、そこに本当に市場があるのか、仮に市場があったとしても、その規模は十分な大きさなのか、という点がどうしても障壁となってしまいます。1回あたりの金額が、ミニマムでも数十億円から数百億円規模の発行額にならないと証券会社にとってはビジネスとして成立しません。そういうこともあって、数千万円から数億円程の小規模な資金調達市場は金融市場としてはなかなか誰も取り組めていない背景がありましたので、開拓できるのではないかと考えました。

企業への資金提供は、日本だと間接金融という形で銀行による融資が担うことが多かったのですが、裏側にある預金を集めてリスクをマネジメントしながら貸すというのが前提条件になるため、取れるリスクは限られます。リスクを許容できる資金を企業に届けるためには、投資家と企業が直接やりとりする直接金融市場を作っていくことが必要であると考えています。機密性の高い情報開示を受けて、そのリスクをしっかり理解していただいた投資家の方々に投資していただく、ということが大事だと思っています。

 

ー起業された中で、苦労された点と良かった点を教えてください。

Siiiboの創業当時、構想していた事業を実現するには「第一種金融商品取引業」の登録が必要なことがわかってから、登録を完了させるまでが大変でした。当時は売上がゼロの状態でしたが、登録要件を満たすために、数億円規模の資金調達と10名近くの採用、システムの構築を行う必要がありました。そもそもこの私募社債に市場があるかどうかもわからない状態で過ごした、業登録までの長い準備期間は大変でした。一般的に、市場が既に大きくあって、その中のニッチ領域を取っていくというのがベンチャーの起業によくある手法だと思うのですが、この私募社債の市場は、「縁故債」という形で従来から存在しているものの、実際に証券会社が手掛けた際にビジネスとして成立するのかどうかそもそもわからない領域だったというのが、他のベンチャー企業と比べると特殊だったと思います。そんな中でも、どんなお客様にどういうものを提供して、どう喜んでもらうかというところは、会社を興す上で一番研究しないといけないところだという想いは強く持っておりました。お客様のためにベストな形を追求した結果、業登録は必要なことでした。商売の大前提はお客様がお金を出して喜んでくださるところで、そこから外れてしまったら成り立たないと考えています。

良かった点は、仲間作りができたというところですかね。売り上げが全くなく、業登録もできてない当時から参画してくれている社員も多くいますし、業登録以降も離職率は低く、社員の皆の活躍のおかげでここまで来ることができました。結構こだわりを持って仲間作りをしてきたので、人に関するところは成功かなと、非常に思います。我々が大事にしている価値感を社内で言語化して、共感してくださる方を採る、ということですね。採用する際には、社内満場一致で来ていただくようにしていたのですが、後から振り返るとそれが功を奏したのかなと思います。今も20人未満の組織でやっておりますが、規模を大きくすることに対しては常に慎重です。

ベンチャー企業にとって、特に組織や事業は年単位で見ると非常にドラスティックに変わってきます。当初はマッチしていた方であっても、キャリア感や専門性が合わなくなってくることはどうしても起こり得ます。そのときに無理に残ってもらうような動きをしないことも、経営者として重要だと思います。

実は、私は他人に起業の相談をされると、基本的には反対をすることが多いんです。外からの情報では良く見える面が多くても、実際には表に出ない辛いことも多々あって、そちらの方が主かもしれません。安易にはお勧めはできません。その分、得られる経験も同じくらい貴重なもので、そこが醍醐味でもあります。ジェットコースターのような生活を面白がれる方は経営者として成長できると思いますので、関心を持たれた方はぜひ経営の世界に入ってみると良いと思います。

 

ーSiiibo証券の今後について教えてください。

我々は創業当時から一貫して、「自由、透明、公正な直接金融を創造する」というミッションを掲げています。今、企業の資金調達市場でベンチャー企業がデットファイナンス(いわゆる借り入れ)を活用する「ベンチャーデット」と呼ばれる市場が急速に発展しているので、発行企業はそちらにフォーカスしていますが、これからはそうしたベンチャー企業のファイナンスだけではなく、様々なニーズをとらえたいと考えています。例えば、M&Aの際のファイナンスは銀行が機動力を持って進めるのが難しいケースがありますし、上場していても銀行との取引に苦労されてる企業もありますので、そういったところも開拓していきたいと考えています。

発行企業のバラエティーが富んでくると、おのずと投資家にとって投資機会の幅が広がってきます。ベンチャー企業は投資対象として敬遠してしまうけれども、そういったM&Aのための資金提供や上場企業であれば投資してみたい、という投資家の方々が新たに入ってこられることで、良いサイクルで大きくなっていくはずですから。投資家さんにとってもバリュエーション豊かな商品が作れるように、様々な市場に出ていこうと考えています。この事業自体、個人の投資家が企業に直接投資ができて、自身の投資が何に役立っているのかを実感できる、シンプルな市場を作りたい、というところから始まっていますから。

一つ、中長期的なテーマとして挙げられるのは、市場の拡大に伴う販売方法の多様化です。現在ご利用いただいている投資家ユーザの方々はある程度投資経験をお持ちで、投資判断をご自身でできる方々が大半です。独断で購入判断をすることに不安を感じる方々や、投資の初心者でも安心して利用できるサービスを拡大してまいります。具体的には、不動産や保険と同様に担当者に相談をして購入できる体験です。今まではネット証券としてオンライン上で完結するサービスでしたが、IFAや証券営業の方に間に入ってもらえるような形に発展させていこうと考えております。IFAとの提携は既に進んでおり、担当者を通じて社債投資をはじめられた投資家様もいらっしゃいます。新しい投資家様へのアプローチはこれからも続けてまいります。

 

ーありがとうございます。最後に読者の方々に何かございますか。

ぜひとも投資に興味がある方々は、社債投資のプラットフォーム「Siiibo」を覗いてみていただけると嬉しいです。手数料はございません。

経営者の方々には、売り上げが立ち始めた段階で資金調達の一手段として社債発行をご検討いただければと思います。数年後に返済を伴いますので、売り上げがまだ全くなくプロダクトをこれから作っていく時点では難しいですが、事業がまわり始めているフェーズにおいてはエクイティ調達よりも発行タイミングの自由度が高いと思います。ご関心をお持ちいただけましたら、ぜひお気軽にご相談ください。

日本の市場は歴史的経緯で見ても、銀行からの間接金融で完結してしまっており、投資家が持つリスクマネーが循環するにはまだまだ余地がある環境です。Siiibo証券がきっかけとなって、日本の直接金融を盛り上げていきたいです。

 

ー本日は貴重なお時間ありがとうございました。

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