年間およそ230万人を超える方が受験をするTOEIC®︎は、グローバル化とそれに伴う英語需要の波を受けてか、ビジネスシーンでもその必要性を高めている。「勉強のスタイルも多様化し、現在はアプリとテキストをハイブリットに使い分けて試験勉強をする方がほとんど」と今回取材をした起業家の幾嶋氏は語る。とはいえ、いざ英語学習アプリを使おうと思っても一体どのサービスがいいのか?迷った経験を持つ方も多いのではないでしょうか?今回は、群雄割拠の英語学習サービスの中で、成長を続けるAI英語教材「abceed」と同氏の起業ストーリーについて伺いました。
プロフィール(株式会社Globee 代表取締役社長 幾嶋研三郎氏)
2015年3月に慶應義塾大学法学部卒業。2014年6月、大学在学中に株式会社Globeeを創業。英語学校の運営を通して、IT×英語教育の可能性を感じ、現在は『学習量×学習効率の最大化』をミッションとしたAI英語教材「abceed」と、『学習支援効率の最大化』をミッションとした反転学習プラットフォーム「abceed for school」の開発を行う。
株式会社Globeeについて
ー 事業内容について、教えて下さい。
株式会社Globeeでは、AI英語教材「abceed」、反転学習プラットフォーム「abceed for school」、AI英語スクール「ABCEED ENGLISH」の開発・運営をしています。
Globeeという社名の由来は【Global Education and Entertainment Company】から来ており、教育とエンタメを融合するグローバル企業を目指すという、私たちの姿勢を意味しています。
ー 今回はAI英語教材「abceed」について伺っていきたいのですが、どんなサービスなのでしょうか?
abceedは、従来の英語教育における、教材・学習ツール・テスト・スクールなどの教育インフラをひとつのプラットフォームにまとめたAI英語教材です。600タイトルを超す人気英語教材の中から、一人ひとりの英語力を上げるのに最適な単語や問題をAIがレコメンドすることで、学習効率を高めることの出来るサービスです。2022年9月には、登録ユーザー数270万人を突破し、2021年12月にはアプリストア(AppStore/Google Play Store)の教育アプリ売上げランキングにおいても1位を獲得しています。
ー サービスの特徴についても、教えてください。
まず、サービスのコアとなる教材については出版社様からの協力を経て、TOEIC®︎から英検®︎、教科書等の幅広いジャンルの英語教材600タイトルを用意し、あらゆるニーズの英語を学ぶ機会に対応しています。そして、それら教材をただデジタル化するのではなく、abceedでは一冊一冊をサービスの学習機能に当て込んだ形式を取っているので、アプリ学習に最適化されたカタチに落とし込むことによってユーザーへの提供価値を高めています。
さらに、TOEIC®︎・英検®︎のオンライン模試が受験し放題となっており、現在月間6万人の方が受験対策として受験しています。6万人という数字は、各回のTOEIC®︎公開テストの受験者数(午前+午後)とも同じ規模感になっておりますので、そういった意味では国内最大規模のテストプラットフォームになっているとも言えそうです。また、AIによるリアルタイムスコア予測も機能として実装しており、こちらについては本番誤差6.4%という非常に精度の高い予測が出るのも特徴です。
ー 教材を提供してくれる出版各社からの反応はどうでしょうか?これによって、紙が売れなくなってしまうなどの懸念はなかったのでしょうか。
仰る通り、契約当初はサービスの利用によって、参考書が売れなくなってしまう懸念を各社持っていました。これについては弊社でも検証を行いましたところ、abceedに対応している書籍はむしろ売上を伸ばしているという結果が出ています。その理由としては、元々紙の書籍だけで勉強をしていた世代の傾向として、アプリと書籍をハイブリッドに活用して試験勉強に望む方が多く、サービスをきっかけに書籍を購入しているという経緯があります。
ー なるほど!国内だけでも多くの英語学習サービスが見受けられる中、abceedが多くのユーザーに受け入れられている点は、どんなところにあるのでしょう?
多くのEdTech系サービスがマネタイズに苦労する中、私たちがマネタイズに成功し、ユーザーにも受け入れられた要素として、【既に価値が証明されている書籍をプラットフォーム化した】という点があげられます。現状、国内市場を見てもEdTech市場より、書籍教材市場の方が圧倒的に大きいです。その市場を見据えながら、一冊ではなく、幅広い英語教材のプラットフォーム化に成功した点は大きいと感じます。ユーザーにとっても有象無象にサービスが存在する中で、成果が出るサービスを求めるのは当たり前だと思います。その時に、既に信頼のあるコンテンツにお金を払う傾向が一定数ある、と確信しました。
「abceed」誕生の背景。「映画や音楽がレンタルからサブスクに変化していく流れは、教育分野でも必ず起きる」
ー 起業することの意識は、いつ頃から持っていたのでしょう?
Globeeは私が大学4年生の時に立ち上げている会社ですが、元々起業をしたいと思いはじめたのは高校生の時、マザーハウスの山口絵理子さんの影響を受けて、起業の道を志し、山口さんの出身校でもある慶應義塾大学に進学しました。
ー 創業当社の事業は、どんなことをやっていたのでしょうか?
創業当初は、大学での英会話サークルでやっていたことの延長線上として、リアルな英語学校を事業として展開していました。
ー そこから「abceed」が生まれた経緯についても教えて下さい。
最初の英語学校は正直、学生起業あるあるで「とりあえず、やろう!」といったテンションで安直にはじめたのですが、実際始めてから(英語学校が)成熟産業だったということに気がつきました。その中で差別化をしようとしても、価値のあるコトは既に大手他社も手をつけており、その中で小さなシェアを獲得出来たとしても、全くイノベーティブじゃないなと思い、事業をピボットする決意をします。その中で、他産業で起きているイノベーティブなトレンドをチェックしていた時に、映画や音楽がレンタルからサブスク配信に変わっていく様な変化が、教育分野でも今後必ず起きるだろうと予測し、そこからabceedは生まれました。
ー なるほど!
今後について
ー 中長期的な展開についてお教え下さい。
現在は英語教材を主にしたコンテンツ展開ですが、今後は映画や海外ドラマ・洋書といったコンテンツのライセンス獲得に向けても動いていこうと思います。エデュケーションとエンターテイメントをかけ合わせることで、より多様な英語学習の機会を展開していきたいと考えています。個々人が興味のある分野で、それが学習コンテンツにもなっている状態を理想形とし、今後もコンテンツを揃えていきたいです。そして、その実現が出来るとなると、いよいよグローバルでの展開も見えてくると予測しており、5年10年をかけてしっかりそこを見据えた準備をしていきたいと思います。
ー なるほど!最後に、記事内でお伝えしたい事項もあればお願いします。
メディアの読者層で起業を目指している方がいれば、その方にお伝えしたいと思います。
起業をするまでには、色々な不安があると思います。お金がない・アイディアがない・経験がない・仲間がいない、といった様に「ない」ことを理由に、その一歩を躊躇う方も多いと思います。私自身のこれまでの経験としては、「何もなくてもなんとかなるよ」と伝えたいです。自分ひとりパッションを持って向き合えるのであれば、そこから全てが始まるよ!と。逆にいうと、”ない”を理由にしている内は、まだ始まってすらないんだと思った方がいいです。飛び込むことが一つ大きなスタートになる、そんな風に捉えて欲しいです。悩んでいるのであれば、始めた方がいい。今あなたの頭に浮かんでいる悩みは、スタートしてから解消していくんだよ、と起業前当時の自分に向けても捧ぐ、私からのメッセージです(笑)
ー まさに起業家の実体験からくる貴重なメッセージありがとうございます!メディアでも引き続き、Globeeの展開についても応援させて下さい。本日はありがとうございました。
こちらこそ、ありがとうございます。