【社会インフラ × 認知的なマイノリティ】を抱える業界に対する、真のDX。廃棄物回収の配車計画を自動作成するSaaS「配車頭」ファンファーレ株式会社 近藤 ゆきと【起業インタビュー191回目】|起業サプリジャーナル

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【社会インフラ × 認知的なマイノリティ】を抱える業界に対する、真のDX。廃棄物回収の配車計画を自動作成するSaaS「配車頭」ファンファーレ株式会社 近藤 ゆきと【起業インタビュー191回目】

公開日:2022.07.25

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これまでメディアの中でも様々な文脈のAIによる、業務の自動化やデジタルトランスフォーメーション文脈のスタートアップを取材してきましたが、まだまだ私たちから見えづらい特殊な世界で、それを必要としている産業や業界があるのだと今回の取材を通じて改めて感じた編集部。スタートアップ界隈からはスポットライトの当たりにくい「廃棄物業界」という特殊な業界の課題はいかにして発見されたのか?まだ誰も成し遂げたことのない未開拓な業界のDXに切り込むスタートアップと、それを立ち上げた起業家 近藤氏にお話を伺いました。

 

 プロフィール(ファンファーレ株式会社 CEO 近藤ゆきと氏)

1991年生まれ。美大出身のUXデザイナー兼経営者。crewwにて大手企業の100件以上の新規事業創出に関わった後、リクルートにて組織開発・大規模プロダクト開発などを経験。その後、2019年ファンファーレを創業。AIを活用した廃棄物業者向けの業務支援サービス「配車頭」を提供。

 

 ファンファーレ株式会社について

ー 事業内容について、教えて下さい。

ファンファーレ株式会社では、廃棄物業界に特化したAIで、廃棄物回収の配車計画を自動作成するSaaS「配車頭(ハイシャガシラ)」の開発と運営をしております。

 

廃棄物回収の配車計画を自動作成するSaaS「配車頭(ハイシャガシラ)」とは、どんなサービスなのでしょうか?

AIが廃棄物の収集運搬のための配車計画を自動作成することで、既存の乗務員でより多くの配車を実現し、複雑で手間だった配車計画作成に必要な作業時間を大幅に短縮することを実現するSaaSプロダクトになっています。これにより、【ヒトが作る計画より10%以上の回収効率の向上・ベテラン依存の業務の自動化による経営基盤の安定・廃車管理業務全体工数を1/4削減】といった効果を実現しています。

 

この業界についても少し補足して説明させて頂きたいのですが、長年の不人気業界であることから、労働人口不足で将来的に立ち行かなくなりそうといった業界存続に関わる話まで出てきており、抱える課題の根がとても深い状況にあるのが今の廃棄物業界の現状です。私たちは、そんな業界に対してITを使い、生産性の向上に寄与し、持続可能な社会インフラの構築を目指し、配車頭を運営しています。

 

ー 廃棄物の収集運搬とは、よく街で見かけるゴミ収集車をイメージすればいいでしょうか?

イメージとしては間違ってはいないのですが、理解しづらい業界なので補足をすると、廃棄物業界は「一般廃棄物」と呼ばれるものと「産業廃棄物」と呼ばれるものの2つに分かれており、一般廃棄物は皆さんが想像しやすい家庭ゴミが含まれます。産業廃棄物は名前の通り、産業から出るものでして、工場や建設現場などから主に出されるもののことを指します。私たちのサービスは、その産業廃棄物に特化した内容になっていますが、実は排出されるゴミの量も一般廃棄物のおよそ10倍、産業廃棄物は多いとされており、それに紐づき、現場では収集に関する様々な問題が生まれているんです。

 

ー なるほど!理解しました。実際、現場で生まれている問題についても教えてください。

一般廃棄物の場合、「火曜には、このルート」と皆さんが想像する通り大体は決まっています。そこのルートが家やマンションが潰れたりして変わることもあるんですが、ルートは大して変わらないのが実情です。

 

ただ産業廃棄物においては、建設現場や工場の需給バランスによってゴミの出るタイミングが​​変わるので、明日どんなゴミの回収をすればいいのか?が毎日異なります。その為、その日に合わせた配車表を作成するという労力が一般廃棄物と違って発生するため、そのエリアの土地勘を持った熟練の配車担当が日々この作業に忙殺されているんです。作成の流れも想像以上にアナログでして、FAXや電話でくる注文をメモに書いて、それを元にドライバーが頭を悩まし、出来た計画を元に、今度は担当ドライバー向けに地図を出力してあげて、当日の朝に指示を出すみたいな・・。しかも、配車作成担当の方もドライバー兼任なことも多く、前日は同じように自身でも廃棄物の収集に当たっているんです。複雑な作業と効率を考えた知見を要するので、実は各事業者の中でもこの業務が出来る方は、数人いればよい方です。

 

ー それを日々こなすのは考えるだけでも頭が痛くなってくる業務です・・(汗)

 

 「社会的なインフラの一つでありながら、認知的なマイノリティを抱える業界に対してのDXこそ、社会的な意義があるんじゃないか」

ー 業界について知らないことばかりでしたが、本当に分かりやすくデジタルトランスフォーメーションが介在することで、業界が良くなる、一つの良い事例というか。DXの本質って、こういうことだよねと感じます。

そうですよね。弊社に面接に来る方も、ほとんど業界のことを知らないので(笑)

例えば、廃棄物業界とは別の社会インフラの一つとして“教育問題”ってとてもわかりやすい話だと思うんです。みんなが教育を受けたことがあるので、その教育の中で「先生が過重労働になってるんだよね」とか、「いらない◯◯なくしたいよね」みたいな問題があった時には、特に説明もなく、なんとなく共感できるし、「そうそう」って思えるんですけど、私たちが対象にしている廃棄物業界の場合はそうもいかない。

 

ただ、私が問題だと思ってるのはこの業界の課題は、水や電気の様な社会インフラレベルの課題にもかかわらず、課題が世の中に認知されにくい、認知的なマイノリティーにいるという状況です。

社会的なインパクトの大きいが、認知的なマイノリティーであるというギャップがとても大きい業界だなと感じていて、そこにDXという文脈で介在することには、とても社会的な意義が存在すると感じます。

 

ー 廃棄物の収集自体、世界共通で行われていることでもあると思うので、この取り組み自体グローバルな課題に対してのアプローチっていう、広い捉え方すら出来ますね。

そうですね。持続可能な社会にも貢献できると思うので、これから廃棄物業界が全世界的により重要視されていくんじゃないかなと私自身も思っています。

 

 社会インパクトの大きさと、実現性の重なる一番大きいところで事業をやるべき。

ー 起業することの意識は、いつ頃から持っていたのでしょう?

私自身、学生時代は美大でグラフィックデザインを学んでいたのですが、学生の時から【ビジネス×デザイン】だったり、【社会貢献×デザイン】といった領域に興味を持っていて、当時から色々やって失敗して、また色々やって失敗をしてみたいなことを繰り返していました(笑)

 

ー そこから、実際にどういった経緯で起業されているのでしょう?

美大のグラフィックデザインを出ていると、大体みんな広告代理店とか制作会社に入社しますが、私はビジネスを一から学ぶ為、大手企業やスタートアップの新規事業開発の仕事している会社に入社しました。その後、リクルートに転職をし、組織開発だったりUXを学んだ後、ファンファーレを起業しています。

 

ー 「配車頭」のサービス構想は、どのタイミングで生まれたのでしょう?

リクルートまでの経験を通じ、0→1の立ち上げや、大規模なビジネスを組織・事業としても大きくし続ける経験をしてきたので、このタイミングであれば、学生の時に実現が出来なかった【社会貢献×デザイン】という領域に対して、ビジネスを絡め、コミットできるんじゃないかと感じていました。自分の信念としては、社会インパクトの大きさと、実現性の重なる一番大きいところで事業をやるべきかなという風には思っていて、そんなタイミングで丁度この業界のUXコンサルの仕事を副業でしていたのが一つのキッカケになりました。こんなに儲かっていいて、IT投資も一生懸命なんだけれども、、業界のイメージ柄、外部から高度なIT人材が入りづらかったり、事業者自身のリテラシー含め、高度なIT組織を編成しづらいみたいな状況の中で、この業界に貢献できることは何かしらあるんじゃないか!って。

 

ー 元々、廃棄物業界自体への興味あったんですか?

出会いは偶然でした。なので、私自身も最初は業界のことを知らないズブの素人からスタートしていて、実際プロダクトを立ち上げるにあたってはコンサルの経験に加えて、一年間全国の事業者を行脚しながら、現場に張りついて徹底的にヒアリングをさせて貰って、サービスのUXに落とし込んでいます。

 

 今後について

ー 中長期的な展開についてお教え下さい。

現在は、産業廃棄物を回収する工程にサービスが提供できただけなので、今後はその他の業務工程(例:電話やFAXで行われる受発注業務のオンライン化)の自動化にも着手したり等、この業界のDXに寄与する商品ラインナップを強化していきます。よく「AI配車を他の業界でも横展開しないの?」といったことをよく聞かれますが、その気は一切ありません。私たちは、テクノロジードリブンではなく、課題ドリブンのスタートアップであることを忘れずに、今後も成長を続けていきます。

 

ー  最後に、記事内でお伝えしたいPR事項などもあれば教えて下さい。

現在はありがたいことにお客さんから頂いた問合せに対応することで精一杯な状況もあり、直近は営業体制の強化を図るべく、採用を強化中です。また新規プロダクトをどんどんつくっていくのでエンジニアも採用を強化中です。先日発表させて頂きましたが、シリーズAの資金調達も終え、これから更に配車頭を伸ばしていければと思いますので、是非セールス部門以外でも弊社に興味を持って頂ける方とはお話しさせてください!

ー  DXの価値をリアルに現場で感じることの出来る、素晴らしいサービスだと思いました!引き続き、メディアでも応援したいです。今日はありがとうございました。

そう言って頂けて嬉しいです、ありがとうございます。

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