世界38の国と地域に拠点を構える人材サービスのグローバルカンパニー、ランスタッド。世界2位の市場規模を誇る日本は、同社にとっても疎かにできない拠点だ。そんなランスタッド・ジャパンを新たに任されたのは、カナダ人代表取締役会長兼CEOのポール・デュプイ氏。日本の”空手”に影響を受け、来日したことから始まったポール氏の日本との繋がり、そして日本らしさを大切にする、これからのランスタッド・ジャパンについてもお話を伺いました。
プロフィール(ランスタッド株式会社 代表取締役会長兼CEO ポール・デュプイ Paul Dupuis)
・1968年 カナダ オンタリオ州生まれ
・2013年9月ランスタッド・ジャパン入社
・2014年7月ランスタッド・ジャパン役員就任
・2017年4月ランスタッド・インド COO就任
・2018年5月ランスタッド・インド MD兼CEOに着任
・2021年7月ランスタッド・ジャパン代表取締役会長兼CEOに着任
ランスタッド株式会社について
ー 始めに、ランスタッドグループの成り立ちについて教えて下さい。
ランスタッドは、今から60年以上も前、オランダの小さな地区から生まれた会社です。創業者であるフリッツ・ゴールドシュメディングが、「その地域で一番の有名な会社になりたい」という意味を込めて、その地域一帯の総称であった「ランドスタット(Randstad) 」という名前をそのまま社名にしたことからスタートしています。車もなかった時代、最初は派遣スタッフを自転車の荷台に乗せて、クライアント先に送り届けていたといった逸話にもある様、私たちは人と人、血の通った総合人材サービスを現在に至るまで提供してきています。
それは、現在「to know」「to serve」「to trust」といったコアバリューとなり、クライアントや求職者、その他のステークホルダーにより良いサービスを提供していく上での指針にもなっています。
ー 世界38ヶ国に展開するランスタッドグループ(グローバル)の中で、日本は何番目に大きいマーケットに位置するのでしょうか?
日本はグループ内で売上高トップ10に位置する、グローバルの中でもとても大切なエリアです。そして、世界全体の人材市場を見ても日本はアメリカに次いで世界第2位のマーケットとなっており、そのデータからも読み取れる様、私たちはまだまだ日本でのシェアを拡大できる伸びしろがあると考えています。
ー 中国やインドを抑えて、日本が世界第2位の市場なのですね!総合人材サービスを展開する人材会社の中では、ランスタッドはどんな強みを持っているのでしょうか?
前提として、どこの会社もベースとしてやっていることに大きな差異はないと、私は感じています。
ただ、その中でランスタッドの強みとして持っているのは、大きく2つあります。まず、一つ目は提供できるソリューションの幅の広さです。派遣や人材紹介、アウトソーシング、短期〜長期までといった人材サービスの提供幅に加え、多種多様な業界〜職種といった紹介カテゴリーに対応できる幅の広さが私たちの強みです。そして、二つ目は全国90拠点にそれらをカバーできる人材を配置しているという点。どんな時でもクライアントの近くにいることが大事だと思っていますし、そしてそれを日本のどのエリアでも提供できる体制を整えています。
ー グローバルと比較した、日本の人材市場の特徴についても教えて下さい。
日本では「派遣」という働き方が多種多様にあり、そして、そういった働き方にもしっかり雇用者を守る法律と制度が整っているのは他の国にはない点だと感じます。ランスタッド・ジャパンのCEOに着任する前、私はインド法人のCEOも経験していましたが、インドではその点まだ未整備なことも多く、国の中でも違いを感じます。
ー 日本の前は、インドにもいたんですね。今回2021年より「代表取締役会長兼CEO」として着任されたワケですが、ポールさんが掲げているランスタッド・ジャパンのミッションについてもお聞かせください。
一番のミッションは、ズバリ「発展」と「拡大」です。アクセルを踏み込んで、日本史上のシェアを取っていく、そしてそれをスピード感を持ってこなす。これまでに無い過去最高の成長率を上げるといったことがランスタッド・ジャパンの大きなミッションです。そして、もう一つ私が力を入れたいのは日本でのブランドイメージの向上です。創業の地オランダでは絶対的なブランド力を持つ、ランスタッドも日本でのイメージやネームバリューは、まだまだ一部の人が知る存在です。ブランド力を上げることは、クライアントにとっても社員にとってもハッピーなことですので、私が先頭に立って頑張っていかなければいけないことだと感じています。
そして、最後は日本全国にいるステークホルダーを大切にすることですね。ランスタッド・ジャパンは、前身となる会社を2011年に買収して生まれました。そこからのルーツをたどれば、40年近く日本でサービスを提供してきた歴史があります。そして、そのルーツは、都心部ではなく地方にありました。私は現在、日本に90ある拠点をまわり、出来るだけ多くのクライアント・スタッフと顔を合わせて、言葉を交わす様にしています。コアバリューにある、「to know」「to serve」「to trust」を私自ら実践して、新しいランスタッドをステークホルダーに示していきます。
来日した時の全財産は、たったの2万5,000円。ポールさんと日本の出会い
※空手を学ぶ為に来日された20代のポールさん(当時)
ー ポールさんは、仕事がキッカケで来日されたのでしょうか?
いえ。元々カナダで空手をやっていた私は、22歳の時に空手の発祥と呼ばれる地、日本で空手を学ぶ為、大阪にいきました。当時はインターネットも無かったので、日本にくるまで、知り合いもいなければ、住む場所や仕事も見つけられず、当時の私の全財産 300ドルを持って、日本にきました。来日した初日は、ホテルに泊まるお金も無かったので、ちょっと治安の悪い西成の公園で寝ましたね(笑)。初めは6ヶ月間の短期滞在の予定でしたが、日本のことが好きになってしまい、結果的には5年間滞在することになりました。
ー そんな時代があったんですね!西成の公園ベンチで寝ていたカナダ人の青年が、グローバルカンパニーの日本法人の代表をやっているなんて夢のある話ですね。
はい、とても懐かしい話ですね。これから日本で起業をしたいと考える若い子たちにもジャパニーズドリームになりますかね?そうなったら、嬉しいです。
ー はい、とっても(笑)ポールさんがランスタッド・ジャパンに入社されたのは2013年となっていますが、そこの経緯はどうなっているのでしょうか?
大阪から帰国後、カナダの大学院に通いながら、高級ホテルのスタッフとしてアルバイトをしていたのですが、そこでサービス業の奥深さとおもしろさを知る貴重な経験をしました。ホテル業という、レッドオーシャンの中で勝ち抜いてきたそのホテルの価値を高めていたのは、間違いなくそのホテルの「サービス」であり、サービス精神を大事にする私の現在の姿勢も、その時に培われました。そこから、日本人の妻との結婚を機に、再び日本に戻るのですが、そこで初めて小さな人材会社の代表になったんです。結果的にその会社はエンジャパンという会社に買収され、私は海外進出を担うアジア法人の代表としてシンガポールで様々な経験をし、2013年のランスタッド・ジャパンへの入社と共に、もう一度日本に帰ってきています。そこからインド法人の現地CEOの経験を経て、現在に至るという経緯です。
「雨降って地固まる」、苦労をするから強くなる。
ー カナダ人のポールさんが日本でキャリアを築いてきたことも、行ったことのないインド支社の再建を任されたことも、どれも苦労された話かと思います。ポールさん自身、どの様にして乗り越えてきたのでしょうか?
私の好きな日本の言葉の一つに、「雨降って、地固まる」という言葉があります。苦労をしたからこそ、今がある。ずっと変わらない環境にいても、自分自身強くはなっていかないと思うのです。雨が降るから、しっかりとした大地になっていく。そうやって自分に言い聞かせて、ここまできました。ずっと雨だったらそれは楽しくないですけどね、止まない雨もありません(笑)
たしかに。リーマンショックの時に大切な社員をリストラしなければいけなかった時や、知り合いのいないインドの地で当時沈みかけの支社を任された時のプレッシャーなど、これまで大変なことは沢山ありましたが、乗り越えた先があるということも決して忘れてはいけません。
今後について
ー 中長期的な展開についてお教え下さい。
ビジネスをしている以上、常に成長を求め続けなければいけません。これからのランスタッドでは、そういった中でも達成した暁には皆でお祝いをする等、会社の中にもどんどん新しいカルチャーを取り入れていきたいと考えています。そして、世界第2位のマーケットサイズを持つ、日本にはまだまだチャンスがあります。取引先5,000社の人材に関する全ての課題を解決していくことに加えて、まだ見ぬランスタッドのクライアントにもその価値を発揮できる様、これからも私たちは成長と拡大を続けていきます。
ー 最後に、記事内でお伝えしたいPR事項などもあれば教えて下さい。
我々は世界最大の人材サービス企業として、この業界において最も信頼され、最も称賛される企業になるべく、人と成長にフォーカスしています。私たちはデータとテクノロジーを駆使して、適切なアドバイスを適切なタイミングで大規模に提供する一方、38の国と地域において約5,000拠点で活動するコンサルタントが、人材とクライアントに対してパーソナルで献身的なケアを提供しています。この「テクノロジー」と「タッチ」の組み合わせが、私たちのサービスをユニークなものにしています。2030年までに世界規模で5億人のキャリアに携わるという究極のゴールを目標に、仕事を通して、人々が真の可能性を実現するサポートをして行きます。
ー ポールさん率いる新生ランスタッド・ジャパンの展開がとても楽しみです!今日はありがとうございました。
こちらこそ、ありがとうございます。