人工知能やIoT、クラウドなどのデジタル技術に精通し、組織のDX実施に重要不可欠な人材として、重要度を増す「デジタル人材」。経産省の報告では、2030年では45万人のIT人材が不足するという算出も出ており、これからの日本経済の課題としても注目度が高い分野です。株式会社アイデミーは、そんな不足するデジタル人材を育成する日本最大級のAI学習オンラインサービスを展開しており、人材の育成〜実務・人材の戦力化までを支援する注目のスタートアップです。今回は、同社代表取締役社長の石川氏に、サービスのこと・不足するデジタル人材の現状・起業の経緯まで色々とお話しを伺いました。
プロフィール(株式会社アイデミー 代表取締役社長 石川聡彦氏)
東京大学工学部卒。同大学院中退。在学中、研究・実務でデータ解析に従事した経験を活かし、法人向けAIシステムの内製支援クラウドソリューション「Aidemy Business」や機械学習モデルの実運用プラットフォーム「Modeloy」を開発・運営している。著書に『人工知能プログラミングのための数学がわかる本』(KADOKAWA/2018年)、『投資対効果を最大化する AI導入7つのルール』( KADOKAWA/ 2020年)など。世界を変える30歳未満30人の日本人「Forbes 30 UNDER 30 JAPAN 2019」選出。
株式会社アイデミーについて
ー 事業内容について、教えて下さい。
株式会社アイデミーは、「先端技術を、経済実装する。」というミッションの元に活動をしている東大発のスタートアップです。デジタル人材・DX人材の育成に特化し、下記サービスを展開しています。
・Aidemy(アイデミー)・・日本最大級のAI学習オンラインサービス。
・Aidemy Business・・AIを中心とした、DX人材・組織づくりを支援し、事業成功へ繋げるEラーニングプラットフォーム。
・Modeloy(モデロイ)・・さまざまな現場のDX化に必要な、人材育成・課題選定・PoC・開発・運用を一貫してサポートするソリューション。
ー 日本最大級のAI学習オンラインサービス「Aidemy(アイデミー)」とは、どんなサービスなのでしょうか?
AIスキルをスムーズに身につける為の教材・プログラミング実行環境をオールインワンで揃えたオンライン学習サービスになります。法人向けサービス「Aidemy Business」の中でも、特に人気の学習コースを、個人でも無料で受講出来る様なサービスになっており、特徴としては3つです。
1.10秒で演習開始。
PCへの環境構築は不要で、インターネットブラウザ上でプログラミングができます。
2.今話題の技術を習得可能。
ディープラーニングや自然言語処理など、いま話題の技術を習得できます。
3.無料から始められる。
基礎的な学習カリキュラムは完全無料にて受講いただけます。
2019年の調査ではユーザー数No. 1を獲得しており、国内最大級のAI学習オンラインサービスとなっております。
ー 登録されている方の傾向としては、やはり組織のDX推進に関連する様な方々なのでしょうか。
一概には言えないですが、部署という意味では組織のDXやAI・IoTに絡む方が多いです。しかし最近は、デジタルの知識は部署役職を問わない必須のスキルである、というのが各企業とビジネスパーソンの認識になっていると感じており、今の自分の役割関係なく学習されている方も増えています。
ー なるほど。他AI系の技術を学べるプログラミングスクールとは、どんな点で優位性を図っているのでしょう?
完全無料でAIに関する基礎的な学習カリキュラムを提供している点は、他社との優位性を図れているかもしれません。事業のメインはBtoB向けサービス「Aidemy Business」に主軸を置いているので、BtoC向けサービスである「Aidemy」は、その体験版としての側面がメインです。
そこから個人で『もっとAI技術について学びたい』という方には、Aidemy Premium Planをお勧めしますし、『Webよりの技術を深めたい』という方であれば、そこから他社様のサービスにいく方もいます。
「技術と企画をブリッジできる人材こそ、求められている」まだまだ足りないDX人材事情について。
ー 「AIプログラマー」や「DX人材」という言葉を目にする機会は、ここ数年で増えましたが、実際に企業が求めている人材とは、具体的にどんな方々のことを指しているのでしょうか。
最近では、AIだけでなくIoTやクラウドなどのデジタル技術全般を得意とする人材を「デジタル人材」「DX人材」と総称して私たちは呼んでいるのですが、職種で細分化すると大きく3つに分かれます。
①DXプランナー職
②エンジニア職
③データサイエンティスト職
どの職種も足りていないというのが正直な話ですが、その中でも個人的にこれから需要が高いと思っているのが、①DXプランナー職です。
ー どういった理由からでしょうか?
社会人経験5-6年経験した方が、それまでのキャリアを捨て、0からプログラマーやデータサイエンティストになることのハードルはまだまだ高いと考えています。
そういった中で、企業がこれから求める人材になるには、これまでの経験に新しい知見をのせて、キャリアをレバレッジ出来る様な職種を選定することがミクロな視点で見てもいいと思いますし、マクロな視点で見ても、【技術と企画をブリッジ出来る人材】が特に足りていないことが要因としてあります。
ー なるほど。現場と技術の両面を理解して、それを活かすことの出来る人材についてもまた同様に必要とされるんですね!
はい、仰る通りです。2019年に経済産業省が、AIなどのIT知識をもつ人材が日本の産業界で約30万人不足すると発表するなど、AIを使いこなす人材の育成が日本全体で大きな課題となっています。
「東大生はBtoCで起業するな」を身をもって体感。3度のピボットを経て現在へ・・
ー 起業することの意識についてはいつ頃からお持ちだったのでしょうか?
中学〜高校生の頃から持っていました。元々歌舞伎の子役をやっていたこともあり、小学生まで生活の中心が全て歌舞伎だったことの反動もあったかもしれません。制限の多かった環境から解放され、「色々なことをしたい!」という欲求が当時からありました。
ー 歌舞伎の子役!それは確かに稽古に割く時間や日々の制限も多そうですね。実際に、子役を辞められてからは何か始めたのでしょうか?
最初のプチ起業体験となったのは、お小遣い稼ぎでしたね。
私の家庭が、お小遣い制度ではなく必要なお金は稟議を書いて申請するという、ちょっと変わった家庭でした(笑)中学生の私には、毎回稟議を書いてお金をもらうことが面倒過ぎて、自分で必要なお金を稼ぐために、流行っていたゲームをオークションで売ったりしながら、必要なお金を稼ぐことをしたのが、小さなビジネス体験でした。
中〜高校生なので出来ることは限られていましたが、大人になればもっと大きなことが出来ると思い、大学生になったらすぐにビジネスを始めたい!と、その時から考える様にはなっていました。
ー そこから実際に起業された経緯についても教えて下さい。
大学生になって所属したビジネスサークルと、参加したビジネスコンテストで優勝したのをきっかけに起業しました。所属していたサークルからは、株式会社ユーグレナの創業者で代表取締役社長の出雲充さんや、株式会社クラウドワークスの取締役 兼 CINOの成田修造さんといった優秀な先輩方が輩出されたこともあり、そこで代表を務めていた私も「自分でもスグに出来るのではないか」とある種の勘違いをしていた部分も多分にありました。
ー 「Aidemy」は、その時に生まれたサービスなのでしょうか?
いえ、初めての起業から3回ほど事業をピボットしながらここまで来ています。
ビジコンで優勝した時は、モノに特化したSNSという事業でしたが、そこからUber Eatsの様なデリバリー事業やポイントカードアプリといったビジネスまで色んな変遷を経ています。
ー なるほど。そこから、どの様にして「Aidemy」は生まれたのでしょうか。
失敗した経験を通じて、「BtoCのサービス」は難しいと痛感しました。
当時並行してBtoBの受託開発などもしていましたが、お客さんの課題を忠実に解決していけば、良いモノになっていくBtoB事業と違い、ユーザーの言っていることと、その真意が違ったり、それを汲み取るある種のセンスが強く求められるBtoCの事業が、今振り返ると自分には不得意でした。AI研究の第一人者でもあり、東大出身の松尾豊先生が「東大生はBtoCで起業するな。なぜなら人の気持ちが分からないから」とおっしゃっているのですが、私はそれを身をもって体現する形となってしまいました。
ー 一同:(笑)
ー なるほど。そこからBtoBを主軸とした事業に絞られたのですね。
はい。その中で注目したのが機械学習やAI領域でした。当時大学の研究室で水処理をAIを使って最適化するという研究をしていたこともあり、0からAIを学習することの難しさを身を以て学んだことと、今後AIを事業に活用することの可能性を感じ、アイデミーの事業アイデアが生まれたという経緯です。
今後について
ー 中長期的な展開について、お教え下さい。
「先端技術を、経済実装する。」というミッションの実現に、より近づく為にサービスをグロースさせていくというのが基本戦略ですが、そこから更に3つの軸を考えています。
1.海外への展開。
2021年の2月には英語版もリリースし、「日本だけでなく海外の従業員へ機械学習やデータサイエンス教育を進めたい」というお客様からの声に応えられるようになりました。
2.大企業だけではなく、中小企業にもフォーカスを当てた展開へ。
現状は、個人向け・大企業向けになっているアイデミーのサービスを、間にいる中小企業に向けても裾野を広げていきます。
3.教育・研修以外の領域にも着手。
人材育成はゴールでなく、スタートです。実際、我々の様なサービスの課題は【実務経験が積めないこと】にあります。そういったサービスを受けた人材が、実務で活躍する様なOJT支援も同時に行っていきたいと考えています。
ー 実務で活躍できる人材まで育成してもらえるのは企業にとっても嬉しいことですね!最後に、記事内でお伝えしたいPR事項などあれば教えて下さい。
個人向けの「Aidemy」は、無料で誰でも使えますので、AIに絡んだ技術に興味のある方は是非サービスを使ってみて下さい。もっと集中的・実務に絡んだ技術を習得したい方に向けてはAidemy Premium Planを用意しているのですが、こちらは国の教育訓練給付制度の対象コースにも指定されている為、条件を満たす方であれば、受講料の最大7割が支給される制度も活用できます。お得に学べるチャンスでもあるので、是非興味のある方はこちらもチェックしてみて下さい!
ー 3割負担で済むのは、とてもお得なタイミングですね!これからのサービスの展開も楽しみです。本日は有難うございました。
こちらこそ、ありがとうございます。