技術が進化し、それを支えるデバイス側の機能も追いついてきた2018-19年は、正に「XR元年」と呼べる年になるかもしれません。今回の起業インタビューは、AR技術を応用した“没入”型エンターテイメントを仕掛けるスタートアップ!今回は、学生時代の旧友でもあり、そこでの経験が再びお互いを引き合わせたという、同社CEO前元氏・COO大島氏のお二人に話を伺いました。
プロフィール(株式会社ENDROLL CEO 前元健志氏 / COO 大島佑斗氏)
▶︎Co-Founder CEO 前元健志氏
明治大学中退。特定非営利活動法人AIESEC in Japanにて組織開発を担当した後、新卒でLIFESTYLE株式会社に就職。新規事業開発でWEB VRの開発に従事した後、2017年12月に株式会社ENDROLLを設立。
▶︎Co-Founder COO 大島佑斗氏
特定非営利活動法人AIESEC in Japanにて学生へのWebマーケティングの知識啓蒙に従事した後、Webマーケティングメディアferretにジョイン。メディアグロースとBtoBサイドのマーケティングを担当した後、freee株式会社の法人向け会計ソフトのマーケティングを経て、同社を設立。
株式会社ENDROLLについて
> 事業内容について教えて下さい。
前元氏:弊社では「村人Aに魂を吹き込む」というビジョンの元、コンテンツに触れるユーザー自身が主人公として楽しめるコンテンツを、【AR × エンターテイメント】を掛け合わせて事業展開しています。これまでテレビやスマホのディスプレイの中に収まっていたゲームを、ARを掛け合わせることによってより体験的な「遊び」に変えていくことをコンセプトとしています。
・企業や場とのタイアップARコンテンツの企画〜開発
例えば、渋谷や代々木公園といった日常的な空間をARを使ってエンターテイメントの舞台に書き換えていくような事業を行なっています。、場所を貸してくださるパートナー企業さんと連携しながらARコンテンツを開発し、コンテンツの参加料をユーザー様からいただくモデルです。
・ARを使ったコンテンツの企画〜開発の受託
既存にある体験型コンテンツ(例:スタンプラリーなど)にARをかけ合わせて、その体験をより楽しく・豊かにする様な企画開発を案件ベースで請けています。
例えば、最近ではアプリケーションを介さなくても機能するWebベースのARコンテンツの開発なども行なっておりまして、先日開催されたカンファレンス『iNTERFACE SHIFT 2018』でも会場を回って遊べるようなコンテンツを提供させて頂きました。
参照:ARエンタメスタートアップのENDROLL、Webを用いた没入型ARエンターテイメントソリューションを12/13(木)開催の『iNTERFACE SHIFT 2018』にて先行公開
> 御社がうたっている「XR専門のゲーム会社」という、XRの定義についても伺って良いでしょうか。
前元氏:「XR」という言葉自体は近年色々と出てきている、AR(拡張現実)・VR(仮想現実)・MR(複合現実感)を総称してまとめた言葉ですね。CEOやCFOなど、企業のそれぞれの部門責任者をCxOとか表現したりしますけど、それと同じですね。
それぞれの大きな違いを簡単に説明すると、VRは「0からバーチャルな世界をつくりましょう」というもので、ARは「今ある世界にバーチャルな情報を被せましょう」というもの。よく混同して言葉が使われているのを目にしますが、『何を土台にして技術をつくっていくか?』という部分で、この2つの技術には差異がありますね。
ただ、ARもVRも目指す世界観は一緒で、(現実なのか?仮想世界なのか?)分からなくなるほどに五感を騙すことが2つの技術の目指すべき世界でもあります。他にも、拡張された世界で出現した3Dオブジェクトに触れたりと、仮想世界にもインタラクションを求めるMR(Mixed Reality)という技術や、過去の出来事を現実世界のように見せるSR(Substitutional Reality)といった技術もあったりしますが、それも同様の世界観を目指しています。
> なるほど!すごく勉強になりました。
「このチームだったら何でも出来るんじゃないか・・」大学時代のつながりで集まった創業メンバー
> お2人の現在に至るまでの経歴も簡単に伺いたいのですが。
大島氏:社会人としてのキャリアのスタートはWebマーケティングメディア「ferret」を運営する会社のメディアグロース・BtoBマーケの業務をした後、クラウド会計ソフトを提供するfreee株式会社に転職をし、現在に至ります。前元とは、学生時代に海外インターンシップ事業を運営する団体AIESEC in Japanで知り合い、団体の運営・拡大に従事をした仲になります。
前元氏:前職はVRコンテンツを開発する会社で企画から開発、新規事業の立ち上げ等を担当していました。学生時代は、当時流行していたオンラインゲームにどっぷりはまってしまい、寝食以外の時間のほとんどをゲームに注いでいました。周囲から見ると根暗に映っていたかもしれません。。
> えー!それは意外ですね。前元さんは、とてもキラキラしているポジショニングにいそうな雰囲気です。
前元氏:ありがとうございます(笑)陽キャラに近い陰キャラという感じでしょうか。とにかく当時はゲームばかりをしていました。ただ受験のタイミングで一度ゲームから足を洗うときが来るのですが、その時に(あれだけ時間を費やしてきたのに所詮はゲームだったな)とゲームに対する熱量を落としました。そこから大学に入って、大島と同じAIESEC in JapanというNPOに入るのですが、そこでの経験がめちゃくちゃ「ゲームっぽい」なって感じたんです。
> NPOでの経験がゲームっぽい?
前元氏:団体の中に明確なゴールが共有されていて、明確な役割や評価基準、、そして感情的なインセンティブの設計もしっかりしている。これって、とてもゲームの構造に近い状態なんですね。
> あ、なるほど!RPGの様に進む感覚ですかね。
前元氏:そうですね。丁度、その時くらいのタイミングで「VR」が注目される様にもなって、ゲームを辞めた時に感じていた(所詮はゲームだった)という感覚から、生きている時間とゲームをするという時間が「=」になって結びつく様になるんじゃないかという新しい期待感を持つ様に気持ちも変化して、前職に入社しました。
> そこで2人が再び交わる形になったのには、どんな経緯があったのでしょうか?
大島氏:学生時代のAIESECでの経験は本当におもしろくて、(このチームだったら何でも出来るんじゃないか・・)と当時から思っていました。そこから社会に出てみて、仕事や経験出来ること自体はおもしろいものの、どこか今の自分の人生には“没入”出来ない感覚を持っていて、それを前元と同じく共同創業者である加藤に飲みの席で話したところ、全員が同じ様なことを考えていたんです。それが2017年ですかね。
前元氏:なんとなくですけど、もう1度チームでやるなら、この3人かなという感覚を自分も持っていて、「新しい挑戦をしようと思う」という相談をしたところ皆んな同じ意見で・・
大島氏:僕はその時freeeに在籍していたのですが、本当に良い会社で仕事もすごく楽しめていたので。辞める気は全く無かったんです(笑)ただ、3人が集まることもまた縁かなと感じ、思い切って退職を決意しました。
自分たちが主人公のような体験を世の中に広める。
> 事業ドメインを明確に決めたのは、3人でやろう!と決めてからですか?
前元氏:XRの領域とコンテンツかな、、というのは何となく決めていました。
大島氏:それをC向けに展開していくって言うのも漠然とは決めていましたね。
前元氏:根底にあるのは、大学時代に感じていた『自分たちが主人公のような体験を世の中に広める』というところから入っています。それに対して、XRは手段として妥当だし、マーケットとしてもアリかな、と。そしてゲーム自体が自分たちが大好きな領域でもあったので「XR専門のゲーム会社」という事業ドメインが決まりました。
大島氏:まあ、頭の良い人たちが考える流れでは決してないですね。
> 一同:(笑)
今後について
> 中長期的な展開についてお教え下さい
前元氏:まずは、小さい単位でコンテンツをリリースしていきながら一気にノウハウを溜めていく、そしてENDROLLのファンをつくっていくことを考えています。
その後にスケールをさせるタイミングとして、ARのソーシャルゲームを出したいです。イメージは、今より“リッチなポケモンGO”じゃないですが、現実世界とARの技術をかけ合わせた自社コンテンツを出したいと考えています。
最終的な目標としては、「生きている」と「ゲームをしている」を可能な限りシームレスに繋げていきたいと考えています。その中で、【ゲーム内でつくって→売れたものが現実世界でお金に変わる】などといった新しい世界観を創出し、自分たちが収益を稼げるモデルはないか?とも考えています。
> 最後に、記事内でお伝え出来る告知事項などもあれば教えて下さい。
大島氏:2019年はENDROLLとして、仕掛けていく年にしたいと思っています。
来年4月には大掛かりなリリースとそれに合わせたコンテンツも出せそうなので、是非興味を持って頂いた方は遊びに来て欲しいです。
さらにAR市場としても、より盛り上がりを見せる年になることが予想されます。もし今ゲーム業界にいるけど(なんか違うな)と悶々とした不安を持っているエンジニア・デザイナーの方がいたら、気軽に遊びに来て欲しいですね!
> XR元年の御社の活躍、とても楽しみにしています!今日はありがとうございました。
前元氏・大島氏:ありがとうございました。