こんにちは。社会保険労務士の榊です。
自分で何か事業を行いたいと考えた場合、いきなり会社を辞めて独立するということはハードルが高いので、まずは「副業」という形から始めたいという方も少なくないはずです。
このとき、副業を会社に正直に言うべきかどうかは、非常に悩ましいところです。
そこで、今回の記事では、会社に言うべきかどうかの判断基準について説明をしたいと思います。
■就業規則を確認しよう
この点、まずは、自分の会社の就業規則に目を通してみてください。
就業規則自体が存在しないか、目を通してみて副業禁止に関する規定が何も書かれていなかった場合は、原則として週末起業は自由に行って差し支えありません。
そう言われると驚く方も多いかもしれません。しかしながら、法的には、会社が社員を指揮命令できるのは勤務時間中のみであり、それ以外のプライベートな時間に関しては、社員が何をしようが自由です。自由だからこそ、他の会社で働こうが、週末起業をしようが問題はない、という考え方が大原則になるのです。
■副業禁止規定は法的には限定解釈される
それでは、就業規則で副業が禁止されていた場合には、どうすれば良いのでしょうか。
この場合も、副業をあきらめる必要はありません。過去の判例でも、裁判所は就業規則で副業が全面的に禁止されていたとしても、その禁止は限定的に解釈されるべきだという立場を一貫してとっているからです。
副業禁止規定が有効になるのは、本業の企業機密を副業に流用したり、本業の信頼を損なう反社会的な副業を営んだり、副業の疲れで本業を万全な体調で行えない、といったような、本業の会社の利益を損なう場合に限られるということです。
ですから、たとえば、本業の就業時間後に自宅でネットショップを営んだとしても、本業の顧客リストを流用したり、深夜までネットショップの作業をして睡眠不足で翌日の勤務に支障が出たり、というようなことでない限り、就業規則で副業禁止が定められていたとしても、会社は副業をやめさせたり、副業を行ったことを理由としての懲戒解雇や始末書といった懲戒処分を行ったりすることはできません。
■副業を届け出るかの判断基準
副業をすることが大丈夫だと分かったとしても、次に多くの方が迷うのは、「副業をする場合は会社へ届け出ること」というように、就業規則で副業が「届出制」になっている場合です。副業を本業の会社に正直に届け出るかどうかが悩みの種です。
私の私見も含みますが、この場合の対応は、極めて実務的な判断になると思います。
会社が本当に副業を容認していて、既に会社公認で副業を営んでいる社員が他にいるような場合には、就業規則に定められた手順に従い副業を届け出るべきでしょう。会社が副業を容認しているにも関わらず、社員が届出義務を果たさなかったら、単なる就業規則違反になってしまうからです。
しかしながら、副業が届出制になっているものの、実質的には「副業禁止」の雰囲気が会社にあったり、副業をしたことが会社に伝わると人事考課上の不利益を受けることが明白な場合は、「届け出ない」という判断もありだと思います。
退職するまで発覚しない可能性が高いならば、わざわざ波風を立てる必要はありませんし、仮に発覚して会社から何らかの不利益を受けたら、その時点で会社と法的な観点を踏まえて協議をするのが合理的な対応だと思われるからです。
■結び
場合分けをしながら副業と本業の関係について説明をしてきましたが、本業での安定収入があるうちに副業という形で独立の土台を作るのは、リスクマネージメントとしても良い手法だと思います。ですから、副業のネタを持っている方は、本業の会社の副業禁止規定を過度に恐れず、是非チャレンジしてみてください。