人事考課における個別面談
毎年3月は多くの企業が人事考課を行います。人事考課を活かすためには、その特徴と意義を理解した上で個別面談を行うことが必要です。
人事考課の特徴は「測定」ではなく「判断」です。「判断」である以上、主観であることは否めず、その客観性に限界があるため、考課者と考課対象者の納得感が重要となります。
人事考課の意義は、公正な処遇・人材育成・適材適所の3つです。このうち最も重要なのは人材育成であり、他の2つは人材育成の基礎と位置づけることができます。人材育成の必要条件である意欲の向上は公正な処遇が基礎となり、能力の向上は適材適所が基礎となります。
人事考課の納得感を高めて人材育成に結びつける鍵は、個別面談にあります。個別面談の効果は「すり合わせ」で決まります。
「すり合わせ」とは、考課者による考課結果と考課対象者による自己評価を相互に確認して、差異がある場合はその裏付けを共有することです。
差異があることを前向きに捉えて、裏付けを含めて話し合うことで課題を共有して解決方法を見いだすことに「すり合わせ」の意義がありますから、これを個別面談に組み入れることで、納得感を高めることができます。
個別面談から1on1ミーティングへの発展
人材を育成するには、個別面談を人事考課の時期のみに行うのではなく、日常の業務に組み入れることが期待されます。
先進的な企業では、日常的な個別面談を1on 1(ワンオンワン)ミーティングと呼んで重視しています。1on1ミーティングを重視している企業の実例としてヤフーやグーグルといったIT系の企業の名前があげられていますが、最も早く1on1ミーティングの重要性に気づき、効果的に使っている企業はインテルです。
インテルにおける1on1ミーティングの使い方は、1979年に社長に就任し、長い期間CEOとして活躍したアンドリュー・S・グローブが紹介しています。
グローブは、1on1ミーティングの主な目的を「上司と部下が情報を共有して課題を解決するために協力すること」としています。「上司の役割は、部下の課題を確認した上で解決を手助けすること」、そして「1on1ミーティングは部下のための時間であり実施頻度は部下の必要性に応じて決めること」を主張しています。
彼の主張から、①個別面談を人事考課制度運用のためだけに行うのではなく1on1ミーティングとして発展させること、②仕事の課題解決手段として日常的に適切な頻度で行うこと、の重要性が確認できます。
1on1ミーティングの効果的な使い方
人事考課を活かして人材育成に結びつけるには、管理職が1on1ミーティングを効果的に行うことが期待されます。
管理職が日常業務の中で1on1ミーティングを効果的に行うことができるようになれば、3月などの節目の時期には、1on1ミーティングにおいて人事考課に関する「すり合わせ」を採り上げることができます。「すり合わせ」を通じて共有でされる考課結果の差異、差異の裏付けは仕事の課題解決に結びつきます。
人事考課を活かして1人1人が成長するには、1on1ミーティングで管理職が部下の仕事における課題解決を手助けすることが期待されます。そのためには、管理職には「指示」と「動機づけ」を行うことが求められます。
「指示」の目的は仕事の内容や進め方を改めることです。「動機づけ」の目的は意欲を高めることです。1on1ミーティングにおいて「指示」と「動機づけ」を適切に組み合わせて、仕事の内容と意欲を高めることで、仕事の課題解決が実現できます。
以上のように、企業においては、経営者のリーダーシップのもとで1on1ミーティングを社内に浸透させることが期待されます。