サマータイム制度における海外の動向
毎年暑くなる日本の夏には、気温が低い時間から仕事を開始するサマータイム制度の導入が期待されています。
サマータイムという呼称は、イギリスを含むヨーロッパで使われています。アメリカではデイライト・セービング・タイムと呼ばれています。
サマータイム制度とは、太陽が出ている時間帯を有効に使うことを目的として、標準時間を1時間早める制度のことです。通常9時始業の場合は8時始業になり、17時30分終業であれば16時30分に仕事を切り上げることになります。
ヨーロッパでは1年12ヶ月のうち、サマータイムを適用する期間が7ヶ月又は8月あり、サマータイムを適用する月数の方が多くなっています。サマータイム制度を導入していることで、昼間の明るい時間に仕事を進めることができるために、夕方以降の余暇の時間が長くなり有効に使うことができます。
世界で最初にサマータイム制度を提言したのは、イギリスの建築家ウィリアム・ウィレットです。この提言に基づいて、イギリスは1916年5月21日から10月1日の期間にサマータイムを導入しました。
現在、サマータイム制度を導入している国は70カ国以上あり、主な国にはイギリスを含むヨーロッパ、アメリカ、カナダ、メキシコ、ブラジル、オーストラリア、ニュージーランドなどがあります。
日本におけるサマータイム
日本も過去にサマータイム制度を導入していた時期があります。第二次世界大戦直後の1948年から1951年のことです。
導入の経緯は、GHQ の指令で「夏時刻法」が制定されたことにありました。4月の第1土曜日の午後 12 時から9月の第2土曜日の翌日の午前零時までの間、中央標準時より1時間進めた時刻を採用するもので、1950年からは5月開始に変更されました。
しかし通勤ラッシュ問題、残業時間の増加、主婦の労働過重などが指摘されたこと、世論調査結果では53%が「廃止」を支持したことから1952年に廃止されました。
その後、第二次石油危機を受け、1979年に省エネルギー・省資源対策推進会議で「石油消費節減対策の推進について」を検討する過程で、サマータイム制度の再導入が言及されました。翌年には石油消費削減対策の一環として制度導入が検討されましたが、実施には至りませんでした。
日本同様、一時的にサマータイム制度を導入した後に廃止した国も多数、存在します。具体的にはロシア、トルコ、フィリピン、イラク、アルゼンチンなどです。
導入による期待効果と今後の課題
平成に入ってから、地球温暖化対策の観点から再びサマータイム制度が検討されました。夕方の照明や朝の冷房用電力等が節約されるため、電力消費を削減することが期待できるためです。
しかしサマータイム制度には効果としてのメリットのみならず、デメリットも存在します。経済産業省と環境省は、サマータイム制度導入による主なメリットとデメリットを列挙しています。
メリットには省エネルギー、温室効果ガス削減効果があり、原油換算として約50万kLの削減が試算されています。またボランティア活動の促進、観光及び文化産業の振興も挙げられています。
一方、デメリットにはコンピュータプログラムの変更、航空機や鉄道といった交通機関のダイヤ変更、交通信号機調整などの手間とコストが増加することがあります。手間とコストはサマータイムを開始する時に1時間繰り上げ、終了する時に時間を元に戻すことで発生します。
さらなるデメリットとしては、1948年から1951年に実績として確認された残業時間の増加です。残業時間の増加は、安倍政権が掲げる働き方改革と逆行するため、この課題を解決できる見通しが立たない限り、サマータイム制度の再導入は実現しないものと予想されます。