女性国会議員が秘書に対し「このハゲー!」などの暴言を吐いたり、暴行を行ったりしたことが社会問題になっています。社員を雇用する立場の方は、これを「他山の石」とせず、セルフチェックをしてみる必要があるかもしれません。
パワハラの6類型
「俺は間違っても社員に『このハゲー!』なんて言わないよ」という方が大半だと思いますが、「パワハラ」の概念は想像以上に広範です。
厚生労働省が平成24年3月にまとめた「職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた提言」によると、典型的なパワハラとして以下の6類型を例示しています。
1 身体的な攻撃
暴行・傷害
2 精神的な攻撃
脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言
3 人間関係からの切り離し
隔離・仲間外し・無視
4 過大な要求
業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害
5 過小な要求
業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと
6 個の侵害
私的なことに過度に立ち入ること
「このハゲー!」は上記「2」に該当し、物理的な暴行を加えるのは「1」に該当します。
また、「3」のような仲間外しや無視がパワハラに該当することもすぐにイメージできるでしょう。
これらのようなあからさまなパワハラは、意識的に悪意をもって行わなければ発生する可能性は低いと思います。
無意識のパワハラに注意しよう
ところが、注意をして頂きたいのは「4」~「6」の類型のパワハラです。
立ち上げたばかりの会社では、経営者も生き残るのに必死だったりして、無意識のうちにパワハラを発生させてしまう恐れがあります。
たとえば、「4」の過大な要求であれば、社員に発破をかけるつもりで「契約が10件取れるまでは帰ってきてはダメだ」と言った場合、言い方にもよりますが、本人がそれを真に受けて大きなストレスを感じてしまったら、パワハラということになります。
また、「5」のような過小な要求についても、失敗をした社員や、やる気のない社員に対し、必要な再教育をすることなく、怒りに任せて「君に任せられる仕事は無いから、ゴミ捨てと草むしりだけやっていなさい」というような発言をしてしまうことがパワハラに該当します。本心ではそのつもりは無かったとしても、ICレコーダーで社員から録音されてしまった場合、社員が労働基準監督署に駆け込んだり、訴訟を起こしたりすると、会社には弁明の余地はありません。
「6」の個の侵害に関しては、典型的には、個人の容姿や性格をバカにしたり、私的な交友関係について詮索したりすることが該当します。それに性的な意味が伴えばセクハラにも該当するでしょう。言った側が軽いジョークのつもりでも、言われたほうが不快感を持ったならば、パワハラ・セクハラに該当するので気を付けましょう。
また、有給休暇の取得理由を無理に聞き出そうとしたり、旅行や宴会などに強制参加させたりすることも、個の侵害という意味でのパワハラに該当します。
経営者という立場の場合、場を和ませようと思ってジョークを言うにしても、社員を飲み会に誘うにしても、無意識のうちに社員の意思を抑圧していないか注意をする必要があります。社員は経営者の発言を、経営者が思っている以上に重く受け取るものです。
社員が委縮したら百害あって一利なし
以上のようなパワハラ行為を行わないようにしなければならないのは当然のこと、経営者は、これからの時代、社員を力で支配しようとしても良い成果は生まれないと考えたほうが良いでしょう。
現在は「物を作れば売れる」という時代ではなく、お客様にどのような価値を提供するか、お客様にどのような感動を与えるか、ということがビジネスの成功において重要な要素になっています。
そういった価値や感動を生み出すには、パワハラなどとは無縁で、社員が気持ちよく、のびのびと働くことができる職場環境が必要なことは言うまでもありません。