こんにちは。社労士の榊です。
起業のためにそれまで勤務していた会社を退職すると、社会保険も脱退することになります。そのため、退職後に病院に行く場合に備え、保険証をどうすれば良いのかというのは、起業家の方からよく相談を受ける内容の1つです。
退職した後の保険証入手
本稿では、退職後すぐに会社を設立する場合と、それ以外の場合に分けて説明をしたいと思います。
退職後すぐに会社を設立する場合
退職後すぐに会社を設立する場合は、社長1人の会社であっても社会保険に加入する義務がありますので、自分の会社で社会保険に加入することになります。保険証は、自分の会社が社会保険に加入する届出をしたのち、全国健康保険協会から会社宛に郵送されてきます。
ただし、役員報酬を0円にしている場合は、自分の会社で社会保険に加入することができません。この場合には、3つの選択肢があります。
国民健康保険
第1は、居住地の市区町村の役所に行き、国民健康保険への加入手続をすることです。保険証は市区町村から発行されます。
任意継続被保険者
第2は、元の勤務先の社会保険の「任意継続被保険者」となることです。退職前は会社と自分で保険料を折半して負担していたのが、退職後は全額自己負担となりますが、退職時から最大で2年間、退職前と同等の内容で保険証を持つことができます。任意継続被保険者となる手続きは、元の会社の保険証を発行していた全国健康保険協会または健康保険組合に対して行います。
被扶養者
第3は、役員報酬0ということは、収入がないということですから、配偶者や親がサラリーマンや公務員として働いている場合は、自分の役員報酬が発生するまでの間、配偶者や親の社会保険の被扶養者になることです。被扶養者となった場合は、起業家本人は社会保険料や国民健康保険料を負担する必要がありませんので、創業時のキャッシュフロー改善にも役立ちます。
個人事業主として起業する場合や、準備期間を挟む場合
退職後すぐに自分の会社を設立せず、個人事業主として事業を始める場合や、起業のための準備期間を挟む場合は、社会保険には加入できません。
したがって、会社を設立しても役員報酬報酬0円で社会保険に加入できなかった場合と同様の3つの選択肢、すなわち、①国民健康保険への加入、②任意継続被保険者となる、③配偶者や親の被扶養者になる、のいずれかを選ぶことになります。
ただし、個人事業主としておおむね月8.6万円(年換算で130万円)を超える事業収入が既に見込まれている場合や、起業準備期間として、3,612円/日以上の失業手当を受け取っている場合には、③の選択肢は選べませんのでご注意ください。
まとめ
このように、起業するために退職した後の保険証の入手にはいくつかの選択肢がありますが、やはり起業直後はキャッシュを大切にしなければなりませんので、自分の置かれている状況を整理して、もっとも負担の少ない方法で保険証を手に入れて下さい。