ある企業では商談をオンライン化したことによって、成約数が3倍に増え、一日あたりの商談数が倍以上になるなどポジティブなニュースもあれば、ハイパフォーマーのナレッジを社員に共有することが難しいといったオンライン会議上で行われるコミュニーケーションがブラックボックス化しているという課題が存在する。社内会議においても同様で、「これまでは立ち話で済ませていた内容にも会議体を設けるなど不要な会議の回数が増えた」と今回取材をした起業家の山崎氏は語る。オンライン会議の利便性の裏でこれまで定量化されてこなかったデータを、自動で録画・解析・整理するAI SaaS「JamRoll」についてお話を伺いました。
プロフィール(株式会社Empath Co-founder & Co-CEO 山崎はずむ氏)
EmpathではJamRoll事業を統括。バックグラウンドは文学と哲学。ICT Spring(ルクセンブルク)やIFA Next(ベルリン)など、これまで国際的なピッチコンテストで10度優勝。また、2018年1月より株式会社no new folk studioのCEO、菊川裕也とともにスタートアップのためのPodcast、The Startup Podcastを配信開始(https://podcast.no-new-folk.com/)。東京大学大学院総合文化研究科修士課程修了(専攻:比較文学比較文化)。ニューヨーク大学大学院総合文化研究科特別招聘研究員。
株式会社Empathについて
ー 事業内容について、教えて下さい。
株式会社Empathは、音声から人間の感情認識を解析する音声感情解析AIをつくっています。元々は、そのAIをエンタープライズ向け企業様の各サービスの部分的なパーツとして提供していましたが、今年の3月にオンライン会議を自動で録画・解析・整理するAI搭載SaaS「JamRoll(ジャムロール)」をリリースしました。
ー AI書記がオンライン会議を自動で録画・文字おこし・整理するAI搭載録画・分析プラットフォーム「JamRoll(以下、ジャムロール)」とは、どんなサービスなのでしょうか?
ジャムロールは、AI書記がオンライン会議を自動で録画、文字おこし、整理することでこれまでブラックボックス化されていたビジネス・コミュニケーションを社内資産化します。また、メンバーのコラボレーションを加速し、売上と生産性を上昇させるオンライン会議の録画・分析プラットフォームです。
ハイパフォーマーたちのオンライン上のビジネスコミュニケーションのナレッジ化や、メンバーの会議参加工数の削減など、録画、分析によってこれまで資産化されていなかったオンライン会議上のデータを通じ、営業をはじめとしたあらゆる組織に新たな価値を提供するプロダクトです。
ー 「分析」の部分では、具体的にどんなことが出来るのでしょうか?
分析で出来ることは大きく3つあります。一つは、サービス内では「アクティビティ」と表記していますが、行動の履歴になります。誰がどれくらい会議をしているのか?といった会議工数、負担を可視化してくれる機能により、メンバーの現状を把握することを可能にしています。二つ目は、話し方の傾向を記録する「トークスタッツ」という機能。これは一回の会議あたりの発言回数をデータ化するもので、例えば会議での発言回数の減少が顕著なメンバーには何かしらのケアを入れる一つの指標として活用したり、そもそも発言回数の少ないメンバーについては必要のない会議に参加している可能性がないか?といったことを確認できる項目でもあります。最後に、感情解析を可視化する「チームケア」という機能ですが、話し方からその人がポジティブかネガティブな状態かを判断する指標に“元気度”という項目を付与します。メンバーの精神状態を把握することに加え、対象ユーザーの仕事量をかけ合わせることで、何が起因して起こっているのか?といった状態も把握出来る様にしています。
ー ユーザーの利用用途としては、やはりオンライン営業と社内会議のデータ、資産化を目的とした利用が多いのでしょうか?
はい。ユーザーにはそれらを含めた4つのセクターで、ジャムロールを利用頂いています。
1.オンライン商談の効率、および教育の最適化
2.社内会議データの資産化
3.採用面談
4.オンラインカウンセリング、コーチング
1と2については、これまでお伝えしてきたサービスの特徴を活かした、コミュニケーションナレッジのシェアとアーカイブのデータ化によるメンバーケアを中心とした利用用途になりますが、それ以外に使われるシーンとして、「採用面談」があります。これまで面接官の主観によって通過の可否が決められていた内容も、録画データとして残ることで、他メンバーの意見も取り入れることが可能になりますし、面接官自体の振る舞いや質問が適切だったか?等のフィードバックや教育素材としても使うことが可能です。そして、これは我々としても想定外の使われ方でしたが、「オンラインカウンセリング、コーチング」といった1対1で発生するコミュニケーションにも活用を頂いています。これまで、個人でコーチとして活躍している方が自分のセッションを振り返る機会やクライアント先とのやり取りの記録としてもジャムロームが役に立っている様です。
ー なるほど、どの使われ方にも納得です。
元々はリモート化によって起きた、社内課題を解決する為のツール!?
ー 起業をされた経緯についても教えてください。
Empathは2人で創業している会社なのですが、すごく起業意識の高い2人が集まったかというと全くそうではなく。元々は、他のスタートアップからカーブアウト(※)というかたちで立ち上がった会社なんです。
※企業が自社事業の一つを切り出し、新たに会社を立ち上げて独立させること。
ー なるほど、そうだったんですね。
はい。医療ヘルスケアの会社の中で感情解析を研究していたチームが、私と共同創業者の下地だったという経緯なのですが、2017年ごろから音声感情解析のAIが投資家の方々の注目を浴び始めたことから、本体と切り出して会社化させる決断をしました。こんなこと言うのもなんですが、強いビジョンや起業に対する想いが先行してというより、成り行きの中で起業をする選択を選んだという背景にはなります。そのチームに入っていたのも、たまたま私が下地に飲み屋で声をかけられたから、と全くドラマ性のない話で申し訳ないですが(笑)
ー いえ、そんなことはないです(笑)。そこからジャムロールは、どの様にして生まれたのでしょうか?
元々は、弊社内で生まれた課題によって誕生したプロダクトです。創業から2021年までは、一人も離職が発生していない会社だったのですが、新型コロナウィルスによってリモートでのコミュニケーションが増えた結果、組織として初の離職者を出してしまうことになりました。要因の一つとしては、これまでは立ち話程度で済んでいた内容にも会議が設定されるなど、社内全体で【会議数の増加】が見受けられました。必要なパートだけ確認してもらえる様にするにはどうするか?増えた会議の議事録などの記録作業に伴う工数をどう削減できるか?これらの課題を解決する為に、AI書記的な役割を果たすジャムロールの構想が生まれたという経緯です。
今後について
ー 中長期的な展開についてお教え下さい
Empathという社名は、機械と人間の対話、人間と人間の対話の間に、共感形成を生むテクノロジーを創るといったことから付けられた名前です。これまではAI音声認識のパーツ屋だった会社から、ジャムロールのリリースによって、音声認識AIのSaaS企業へと世間の認知を変えていきます。まずは、ここをしっかりカタチにして会社としてのインパクトを出していきたいのが短期的な話です。中期のゴールとしては、プロダクトを通じて人間の「可処分時間を増やす」ということをゴールとして挙げています。また、ヒトの可処分時間を増やした後の展開についても既に構想は始まっており、例えば、今話題のWeb3上に一つの空間を創るのもそうですが、コミュニティがあるところには必ず対話が存在します。そういったコミュニティの中でも、いかにうまく対話を成立させることの出来るAIやプラットフォームが創れるか?というのも、まだまだ構想段階ですが長期的な我々の展開として視野に入れています。
ー 最後に、記事内でお伝えしたいPR事項などもあれば教えて下さい。
現在、ジャムロールを2週間無料で使えるというトライアルキャンペーンを実施中です。期間限定ですので興味を持って頂いた方は、この機会に是非サービスを試して頂けると嬉しいです。
ー 今なら2週間無料で使えるんですね!是非色んな方に触って欲しいサービスです。今日はありがとうございました。
こちらこそ、ありがとうございます。