好奇心と行動力を糧にはるか西の小さな町へ。 「カフェまなびの森」店主 礒野楓さんの地方都市でも成功できた秘密【起業インタビュー第60回】|起業サプリジャーナル

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好奇心と行動力を糧にはるか西の小さな町へ。 「カフェまなびの森」店主 礒野楓さんの地方都市でも成功できた秘密【起業インタビュー第60回】

公開日:2018.02.13

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あなたが今仕事をしている場所はどんな場所でしょうか。

いま、ITツールを使うことで仕事は場所にはとらわれることなく可能になったことがたくさんあります。

しかし、物理的な「場」を基盤とするビジネスもまだまだたくさんあります。例えば「町」や「地域」を刷新し、いままでとは違った価値を与えることで地方を元気にする「地方創生」「地域起こし」。これらをミッションにしている起業家もたくさんいます。

今回お話をお伺いしたのは岡山県の北部に位置する新見(にいみ)市にて、カフェを経営する礒野楓さん。彼女は故郷である北海道帯広市からはるか離れた親戚もいるわけではないこの地で、なぜカフェ経営に至ったのでしょうか?

彼女の好奇心とフットワークの秘密を探ります。

 

礒野 楓(いその かえで)

1992年北海道帯広市生まれ。滋賀県立大学にてデザインを専攻する。大学卒業後の2015年に岡山県新見市に赴任し、地方創生事業を開始する。

翌年「合同会社のへデザイン」を設立、デザイン業務をスタートさせ、2017年4月にカフェ学びの森を新見市内にオープン。新見の地で人々の憩いの場を提供し続けている。

 

流れてきた船に迷わず乗って、故郷からはるか西へ

北海道の帯広市で生まれその後に滋賀、岡山とダイナミックに拠点を移してきている礒野さん。現在に至るまでの経緯はどんなものだったのでしょうか。

「大学進学のときは、単純に関西や京都に憧れがあったので、その地域でかつ自分の興味のある専攻を選んだ結果、滋賀になりました。大学の後半は就活が全然だめで、自分は社会に向かないんだと思って、すごく暗い時期でした(笑)」

そんなとき、所属していた研究室の先生を通じてひとつの求人情報が舞い込みます。先生の同級生であり、OGでもある方がご自身の関連会社の社会貢献事業として取り組むことを決めたのがこの岡山県新見市の地域おこし事業。それを担ってくれる人材を求め、母校である滋賀県立大学に求人依頼をしたのです。

「単純に面白そうだな、と、それだけなんですよ。直感的に思ったっていう衝動的な感じで。そのあと実際に新見に行ってみて町を案内してもらって、1年の契約社員という形で、新見での仕事が始まりました。」

 

 

フットワークでつかんだチャンス

新見市は、岡山の県北に位置する人口3万人ほどの市。多くの人がイメージする「晴れの国岡山」とは少し違い、緑豊かな山林や田畑ばかりが連なるのどかな田舎町です。しかし市町村合併をしたものの人口は減り続けており、他の地方都市同様に人口減少と超高齢化は深刻化しています。

しかし、そんな町でも行くと決めたら迷わない礒野さんは、そこから「新見を元気にする」というとてもざっくりしたミッションだけを受けて、ほぼ1人で自分の仕事を作っていきました。

「自由にやってください、ってことだったので、アイデアを提案して意見をもらったりはしていましたが、俗にいう会社員みたいなことはやらなかったですね。でも(求人をもってきてくれた)大学OGの方が新見在住なので、いつもそばにいてくださっていろいろとお世話してくださいました。そこでまずはじめにやったのが『ニイミノコト』プロジェクトでした。

どこにおもしろいものがあるのかとか、どうやって街の情報を得るのかがわからなかったので、そういうものがわかるものを作ろうと思いました。最初は人づてに聞くしかなかったので、私が行ったところをまとめて最終的にサイトになるような蓄積をしていこうと思って、ひたすら出歩いてましたね。周りにいる人に聞いて出かけていって、行った先でまた聞いて。最初は免許もなかったので自転車で(笑)。

あとは、備北民報(地元紙)のイベント欄をひたすら見て、面白そうだったら行って、そこで自己紹介するときにまた色んな情報を聞いて。

初めての仕事だったので、とにかく新見を発信することをしなきゃ、と思ってやってました」

 

新見で仕事を始めた2015年の4月下旬にはすでに「ニイミノコト」のロゴマークを作成し、instagramでの投稿もスタートさせていた礒野さん。がむしゃらだったとはいえ、その行動の早さには目を見張るものがあります。

「大学で一応デザインの勉強をしていたので、プレゼンしてなにかを発信するというようなことは学生なりにやってきていました。それをどうにか活かしてもうやるしかない!という感じでした。勢いだけは良かったのかもしれないですね」

そこから、地道に広げた市内での人脈が活かされ、デザインの仕事依頼も舞い込むようになります。

「大学でデザインの勉強をしてましたと言うと、町の地図を作って欲しいとか、印刷物を作りたいので意見をちょうだいとか、そういう場面に出くわすことが多くなってきて、これは仕事にできるのかなぁと思ったりしてました。

その流れで2016年の備北民報の元旦号に載せるマップを作ることになったんです。自転車と歩きで市内のお店を取材してお話聞いて、絵を描いてマップにしました。元旦号の1ページ全部を使わせていただいて…!」

 

このマップを描いたことで礒野さんの認知も広まり、より新見の地へ密着した仕事ができるようになったのです。

そして2016年の春に「合同会社のへデザイン」として独立しました。

 

とにかくやってみる。体で覚える

そんな折、新見市の図書館のリニューアルと共に、そこに併設するカフェの話が持ち上がります。新見市に対しての地道なプレゼンが実を結び、見事自分の店としてオープンすることに。

そのタイミングで、デザイン業務とカフェの運営と併走することになりました。

「実はカフェをやりたいっていう気持ちは昔からあったんです。ほんとに食べることが好きだったから、デザインも好きですけどカフェの仕事は自分に合ってると思います。始めるときには、新見の食材を食べられる店って意外と少ないよねってことで、『新見の春夏秋冬をお届けします』というコンセプトで事業計画を立ててました。メニューを考えて、周囲のいろんな方からいろいろと意見をもらいました。」

 

そして2017年4月に「カフェまなびの森」がオープン。新見へ移住してわずか2年のことです。カフェ、デザイン会社ともスタッフを雇い、経営者として本格的なスタートとなりました。

しかし、故郷を遠く離れて、不安になることや心細くなることはなかったのでしょうか?

「ほんとに私、新見に来て周りの人に良くしてもらってたので、まあ、別に死なないかな、みたいに思っています(笑)。悩みも後悔も、しないようにしています。してもなにも変わらないし。でも、もうやだ!ってなるときもありますけど、お店に来てここに立ってると、忘れますね。スタッフさんと話して、毎日やることがあると安心します。そしてお客さんが『美味しかった』とか、帰省してきたであろう人が『こんな店できたの、うれしいね』なんて話してるのを聞いてると、頑張りたいなって思いますよね。

私、体で覚えないとわからないんです。頭で考えても結局進まなくて堂々巡りして終わることが今までの人生で多かったので、とりあえず動いてみようかなと。なにかをし続けなければ何者でもないので」

 

彼女のシンプルなマインドや行動力は、若さゆえと片付けられるものではありません。年齢や性別は関係なく、「とにかくやってみる」ということは、どんなときにももっとも重要であるにも関わらず、そこで多くの人が足踏みするからです。

そんな彼女だからこそ、こちらも危うさを感じることはありません。彼女はこの先の展望を次のように語ります。

「新見には、がんばってる面白い人がいっぱいいるので、一緒にみんなで協力しあっていろんなことをやっていきたいですね。こんなにちっちゃい人間ひとりでできることなんて限られてますから。

とはいえ私が新見を離れる可能性もあります。でもなんらかの形で新見に関わりたいなとは思ってるし、それでいんじゃないかなと。

新見にいつづけなきゃいけないって思うことがすごく良くないと思うので、そういう思いになってそういう思いの人だけが集まっちゃうと、先に進まなくなると思うんです。だからいろんな形で新見につながっていく人が増えていったらいいなと思うので、私もこの先それを体現することになるのかな、と思います。」

(編集後記)

「起業」という軸だけでなく、「地域おこし」というもうひとつの側面も持ち合わせている礒野さんの事業。都市部でのテクノロジーを駆使した仕事とは対極にあるように思えますが、そこにはいまあるスキルや知恵を活かし、少ないリソースから多くの価値やつながりを生み出すという、ビジネスにおける普遍的な要素が含まれています。また、過疎化・高齢化の進む地方都市だからこそ礒野さんの存在価値がより輝いたのかもしれないという逆張りの価値観もあります。しかし、いずれにしろ彼女の持つ「とにかくやってみる」という前向きなマインドがなければなし得なかったこと。シンプルで楽観的な彼女の話を聞いていると「ない」ことや「わからない」「できない」ことって、さほど大きな問題ではないのかも、と背中を押してもらえるような気がします。

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