日本の産業を盛り上げて、誰もがその人らしく生きられる世界を―機械学習の啓蒙に注力する若き起業家の想い【起業インタビュー第43回】|起業サプリジャーナル

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日本の産業を盛り上げて、誰もがその人らしく生きられる世界を―機械学習の啓蒙に注力する若き起業家の想い【起業インタビュー第43回】

公開日:2017.10.16

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自分のクライアントにだけにしか届かない、それでは世界は変わらない、と思ったからです。
もともと「日本の産業を盛り上げたい」という想いがありますので、自分のクライアントさえ良ければいいとは思っていません。

あまりにさらっと言われたので、その言葉のインパクトの大きさが一瞬わからなかった。

吉崎 亮介(よしざき りょうすけ)氏

株式会社キカガク代表取締役社長。舞鶴高専本科・専攻科卒、京都大学大学院情報学研究科修了。画像処理(AR)、ロボット工学、機械学習による製造業のプロセス改善に従事。修士課程在籍中に、化学工学で世界最高峰の国際学会ADCHEMにて最優秀若手研究賞を受賞。
大学院卒業後、株式会社SHIFTに入社し、新卒1年目から日本最大規模のゲーム開発者カンファレンスCEDEC2016 の招待講演。株式会社Caratを共同創業した後、2017年1月、人工知能の一種である『機械学習』を現場で導入するための教育サービスを提供する株式会社キカガクを設立。2017年6月に日本マイクロソフト・Preferred NetworksのAI人材育成トレーナーに任命。

 

キカガクの「キ」

吉崎氏の会社「キカガク」の名前には、文字の1つ1つに意味がある。

  • 「キ」=教育(Plan)
  • 「カ」=課題設定:コンサルティング(Do)
  • 「ガ」=学習モデル構築:データ解析(Check)
  • 「ク」=組み込み(Action)

アルファベットの頭文字を繋げるとPDCA(事業の管理業務を円滑化するための手法の1つ)になるという、何とも洒落た命名だ。
今回は、その中でも今最も注力している「キ」に特にフォーカスしてお話を伺った。

 

機械学習セミナーなのに、受講対象は経営者層?

人工知能(AI)の一技術である機械学習をサービスに実装するためには、数学(微積分・線形代数・確率統計)とプログラミングの知識が必要とされるという。

であれば、エンジニアを対象とした機械学習セミナーを開催するというのは腑に落ちる。現にキカガクもそのようなセミナーを主催しているし、近時はパソコンスクールも同種の講座を開講しているようだ。
のみならず、経営者層を対象とするセミナーを開催しているその理由とは。

もちろん経営者層が実装レベルの知識まで取得する必要はありません。経営者層を対象とするセミナーを開催している理由は、機械学習をサービスに実装するためのコストや工程の相場感覚を知っていただくためです。

例えば、囲碁でAIがトッププロの人間に勝ったことが大きなニュースになりました。
そのような事実から、一般には「AIは万能だ」「AIは人間を超えた」と誤解されがちですが、決してそうではありません。世界的な大企業の精鋭が集まって作り上げた最先端のAIが、囲碁という限定的なゲームに特化して人間に勝った、というだけの話です。AIを知れば知るほど、人間ほどすごいものはないのだということを実感します。

素人の私も「AIは人間を超えた」と誤解していた1人である。吉崎氏の話は続く。

今の技術だと、AIが人間を完全に再現できれば100点満点です。しかし、それを認識しておられない経営者層は、今の人間を「最低限」として、人間を上回るAIの開発を要求してしまいます。そして、経営者の期待値が高すぎることによって、エンジニアが潰れてしまうのです。
そういう事態を回避するために、経営者層が「技術的にどの程度のものまでが制作可能なのか」というボーダーを知っておくことは大事だと考えています。

また、プロダクトが実体化するハードウェアと異なり、ソフトウェアの場合は制作過程で数字しか出てきません。完成までの過程が可視化できないというのは、AIをわかっていない経営者の方にとってはストレスが溜まります。
その点でも、経営者層がAIについての一定程度の理解を有してことは必要であると思っています。

 

教育というアプローチ

仮に自分がAIについて習熟していた場合、キカガクでいうところの「カ」「ガ」「ク」の3事業は思いつくことができるだろう。
逆の言い方をすると、おそらくはキカガクの「キ」(教育)にまで思いが及ばない。吉崎氏が教育に着目したのはなぜか。

教育システムの不備に起因するのではないかと思いますが、高い学歴を持っていても「自ら考えることができず、何の疑問も持たずに指示に従うだけの人」や「お題(指示)が与えられないと自発的に動けない人」が少なくないように思います。
日本人はKPIの設定をすると強い、と言われることもありますが、社会に出るとそもそもそのKPIの設定さえできない人も多いのです。

その状況を批判し、愚痴をこぼすだけなら簡単ですが、私はそれで済ませるのが嫌なのです。「批判するなら自分で改善策を実行すればいいじゃん」と思うクチでして(笑)

ですから、「AIをわかっていない人が多い」と嘆くだけではなく、その状況を改善しなければ、AIをもっとわかってもらわなければという想いで、AIを実現するための手法である機械学習についての教育・啓蒙活動に着手した、というのが経緯です。

 

啓蒙というメソッド

教育というアプローチが定まったとしても、その手法はいろいろある。顧客にコンサルティングを行なってソフトウェアを導入してもらい、その顧客の「AI認知度」を高めることだって、立派な教育活動の1つだ。
だが吉崎氏は、ソフトウェア開発やコンサルティングに留まらず、リアルセミナーを開催して登壇するという手法をも選択した。多忙な中なかなかに骨が折れる講師業も手掛けて啓蒙に腐心するその理由を伺った。

自分のクライアントにだけにしか届かない―それでは世界は変わらない、と思ったからです。

もともと「日本の産業を盛り上げたい」という想いがありますので、自分のクライアントさえ良ければいいとは思っていません。
日本の産業を良くするために効果的なのは自分が手を動かすことなのか、あるいは多くの方々を啓蒙して回ることなのか、と考えた場合、今のフェーズでは後者が効果的だと判断しました。

自分が手を動かしてソフトウェアを作って、パッケージツールとして企業に導入していただくことは可能です。
しかし、そのツールが意味をなすのは、「収集したデータをどう扱えば会社のためになるのか」ということがわかっている方に対してのみです。問題設定の切り分け方さえ理解していない方には、そのツールは意味をなしません。
ですから、今はまず問題設定の切り分け方を多くの方に理解していただくべく、啓蒙活動に力を入れています。

 

「微分・積分」で赤点ギリギリ?

バリバリの理系としての経歴をお持ちの吉崎氏。学生時代の成績もさぞかし優秀だったのだろうと思いきや、そこには意外な一面が。

高校の時の数学の先生は、京大数学科出身で頭の切れる方でした。頭は切れるので数式をさらさらと解いて教えては下さるのですが、その数式にどんな意味があるのかは全く教えてくれません。
結局、私の中で「数学は要らないもの」「勉強しても時間の無駄」という認識になり、いつも赤点ギリギリでした(笑)
研究を始めてから初めて微分・積分の必要性に気づき、真剣に数学を勉強したのはそれからですね。

数学が得意で、数式を解くことには長けていても、例えば「微分・積分を学んだら実社会で具体的にどう活かせるのか」という問いに答えられる学校の先生が果たしてどれほどおられるでしょうか。
「どうして微分・積分を学ばなければならないのか」と問うた時、「センター試験で必要だから」という以外の回答をしてくれる高校の先生が多いとは考えにくいです。

私が注力しているAI・機械学習の啓蒙活動の対象は、今はビジネスパーソンの方だけですが、ゆくゆくは大学生や高校生にも広げていきたいと考えています。
もっとも、学生より前に、学校の先生にわかっていただく方が先決かもしれませんね。

「センター試験で必要だから」という回答は、換言すれば「疑問を持つな。思考を放棄しろ」という意味である。
「自ら考えることができず、何の疑問も持たずに指示に従うだけの人」が少なくないという吉崎氏の指摘が正しければ(それはきっと正しい)、まさにそれは悪しき教育の産物であろう。

 

その人らしく生きるために

「どういう世界を目指されていますか」というこちらの問いかけにも、氏は澱みなく答えてくれた。

人生=労働、ではないと私は思っています。ですが、週5で働き週2で休む、というサイクルを確保するので精一杯という方が多いのが現実です。学校を出て、生活のためになんとなく働き、子孫を残し――
楽しむこと、社会に貢献をすること、何かを達成すること・・・何でもいいですが、その人にしかできないことにもっと時間を割いてほしい、専念してほしい、と思うのです。

ですから、私の目指す世界は「人がその人らしく生きる世界」であり、そのための環境を整えることが私のミッションだと考えています。
世の中の仕事は「作業8割、本質2割」と言われることもありますが、前者をシステム・プログラムの自動化やAIによって削減することで、目指す世界の実現が近づくと信じています。

 

編集後記~Done is better than perfect

キカガクの門を叩いたインターン学生の話が印象的だったので、編集後記としてご紹介する。

皆さん真面目で優秀だったのですが、「教えてもらおう」という受け身な姿勢が気になりました。彼らの「頑張ります」を翻訳すると、「頑張り方を教えて下さい」ということなんですよね。

そんな中、唯一内定を出したのは、いい意味で諦めが早い学生でした。「やらない」という選択肢を採ることを早々に諦める、という意味で。
例えば、人前で話す自分の代役を急遽頼んだ際、ほとんどのインターン生が尻込みした中、彼だけは「とりあえずやってみます」と答えました。もちろん未熟ですから点数にすると60点ぐらいかもしれません。そこから提供するための及第点まで引き上げるサポートをするのは私の役目ですから。
最初から満点をとろうと思わなくていいのです。Done is better than perfect. ザッカーバーグが言ったか言わないかを問わず、その言葉は真理だと思います。

 

株式会社キカガクのWebサイトはこちら↓
https://www.kikagaku.co.jp/

株式会社キカガク主催の人工知能・機械学習セミナー一覧はこちら↓
https://www.kikagaku.co.jp/services/seminars/

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