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イノベーションに必要な長期展望と暗黙知

公開日:2017.07.10

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GEのCEO交代とイノベーションの成果

GEのイメルト会長が7月末に退任します。

イメルト会長はGEの第9代目のCEOであり、2001年から16年にわたって経営責任を担ってきました。
16年という任期はGEとしては、決して特別ではなく、ウェルチ前会長は約20年間、CEOを担当しました。GEは40年間近く、2人のCEOにより長期展望に立って経営されてきました。

ウェルチ前会長はフォーブス誌の「20世紀最優秀経営者」に選ばれました。イメルト会長も同様に素晴らしい経営手腕を示してきています。
特筆すべき成果は「インダストリー・インターネット」を提唱するなど、事業構造の変革を成し遂げたことです。
イメルト会長が就任した当時のGEは売上の50%が金融分野であり、電力システムと航空エンジンの売上高構成比は2割未満でした。一方、昨年度のGEの売上高は電力システムと航空エンジンで4割以上の構成比を占めており、金融分野の構成比は1割未満にとどまっています。

この実績から、イメルト会長は、イノベーションによってIoTを中心とした第4次産業革命に対応できる事業構造につくり変えることに成功したと評価されています。GEがイノベーションで目に見える成果を生み出すことができたのは、ひとえにCEOの任期の長さが貢献しています。

 

オープンイノベーションの落とし穴

昨今、オープンイノベーションが脚光を浴びています。その論拠は、経営資源に恵まれている大手企業であっても、外部との提携を積極的に行うことでイノベーションを実現すべきであり、その結果として短期間で迅速にイノベーションを実現できる、というものです。
しかしオープンイノベーションが万能ではないことを裏付ける事例が存在しています。

例えばIBMは、今年1月から3月の四半期も減収となり、これで20四半期連続での減収と苦しんでいます。
IBMは1990年代に自前主義から外部提携を積極的に進めて、オープンイノベーションを取り組むことで業績をV字回復することに成功しました。ところが歴代のCEOは、好業績を背景に手にした資金を研究開発に積極的に投資するのではなく、自社株の購入に充当してしまいました。長期展望によるイノベーションの推進よりも目先の株価を重視してしまったということです。
企業組織を研究しているマサチューセツ大学のラゾック教授は、「オープンイノベーションはアメリカ企業の短期主義を増長させる可能性が高い」と警鐘を鳴らします。

 

長期展望による暗黙知の重要性

イノベーションと長期展望の関係は、京都大学武石教授、一橋大学青島教授と軽部准教授の共著「イノベーションの理由」で確認することができます。本書で採り上げられている23件のイノベーション事例が平均で9年以上の期間を要していることから、イノベーションにおける長期展望の必要性が実証されています。

イノベーションと長期展望の関係を理解する上では「暗黙知」が重要です。これは一橋大学の野中郁次郎名誉教授が使い始めた言葉です。
経営において必要不可欠なノウハウは「形式知」と「暗黙知」に分類されます。「形式知」とはマニュアルに代表される目に見えるようにまとめられたノウハウのことです。一方、「暗黙知」とは、目に見えるようにはまとめられておらず、経験を共有したメンバーの間でのみ活用できるノウハウのことです。

イノベーションの源泉としてのノウハウは、最初の段階では「暗黙知」として生み出され、その後、試行錯誤を経て「形式知」としてまとめられます。
重要なのは、イノベーションに取り組むメンバーが1年や2年といった短い期間、一緒に働いただけでは「暗黙知」を生み出せないということです。つまり、長期展望のもと、イノベーションに挑戦するメンバーが知恵を出し合うことではじめて「暗黙知」が生み出されるのです。

また「暗黙知」の重要性は、アップルのイノベーションに貢献した「デザイン思考」が、トヨタの「暗黙知」、具体的には主査制度を研究することから生み出されたと言われていることからも確認できます。
イノベーションを目指す経営者には、長期展望のもと、意欲的な人材を集めて「暗黙知」を生み出すことが期待されます。

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山田 豊文

山田 豊文

1960年1月13日生まれ、1985年に株式会社日本能率協会コンサルティングに入社して以来、30年以上、経営コンサルティングと人材育成に従事。得意なテーマは営業力革新、事業計画立案、コーチング。2012年1月に独立、現在は株式会社プロセスイノベーションの代表取締役。中小企業診断士、キャリアコンサルタント。

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