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【起業インタビュー第12回】「ポケットに、いつも弁護士を。」 中小企業のための無料アプリ「ポケ弁」に込められた弁護士たちの熱意

公開日:2017.02.15

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今回、起業サプリジャーナル編集部は、中小企業の法律支援に尽力されている4人の弁護士の先生方(役職は、取材時のもの)に取材させていただいた。

田島 正広 弁護士
東京弁護士会中小企業法律支援センター 本部長代行

菅沼 篤志 弁護士
東京弁護士会中小企業法律支援センター 広報部会長

安井 之人 弁護士
東京弁護士会中小企業法律支援センター 広報部会アプリPT座長

関 義之 弁護士
東京弁護士会中小企業法律支援センター 嘱託 兼 名簿研修部会長

 

「ポケ弁」とは

「ポケ弁」とは、東京弁護士会が提供する中小企業のための無料アプリである。
配信記事は全て弁護士が執筆する。タイトルの一例を挙げると、

  • 会社のホームページを丸ごとコピーされた場合の対処法
  • リース契約の中途解約はできますか?
  • 中小企業が特許をとるメリット
  • 任期途中の取締役を解任することはできますか?

など、多岐に渡る。

 

高い信頼性

昨今の大手キュレーションサイトを端緒とする騒動を機に、巷はWebに氾濫する専門的情報の精度について疑心暗鬼になっているといえるだろう。
しかし言うまでもなく、東京弁護士会が提供する「ポケ弁」の記事の精度・信頼性に疑いの余地はない。取材を通じて改めてそう確信した理由を3点述べる。

【理由1】全てが弁護士の署名記事であること

下図のように、全ての公開記事には、東京弁護士会に所属する弁護士のフルネームが付されている。この点で、匿名もしくは専門外の人間が書いた真偽不明の記事とは、厳格に一線を画す。

執筆弁護士を記事ごとに明記。(アプリより一部スクリーンショット)

【理由2】記事に対する厳重なチェック体制が敷かれていること

記事は、執筆者以外の複数の弁護士の審査と理事者の決裁をクリアして初めて公開される。真のプロフェッショナルはここまで徹底するのだ。

【理由3】内容に対する配慮

菅沼弁護士は、記事の内容についてこう語る。

執筆内容を弁護士に一任すると、実際の中小企業のニーズと乖離するおそれがあります。
ですから、コンシェルジュ(後述)が受けた具体的な相談の中から、事実を特定されないように気をつけながら、比較的相談の多いテーマを抽出してニーズにかなった内容にするなどの工夫をしていければ、と考えています。

 

「中小企業をしっかり支えよう」

そもそも弁護士会が中小企業支援に注力している趣旨は何か。田島弁護士が詳解する。

市民や大企業の相談には乗ってきたが中小企業だけぽっかり穴が空いていた、というのが、かつての弁護士会の実状でした。
2010年より日弁連が中小企業専用相談電話「ひまわりほっとダイヤル」を設け、全国的に運用を開始したのですが、当時、東京弁護士会においては、受付の職員が企業の所在地や相談分野等の基本情報を基に名簿順に担当弁護士に依頼していました。
この制度の下では、相談を受けるまで弁護士は詳細な内容がわからないため、相談内容と自身の精通分野が必ずしも一致しておらず、相談者の方にご迷惑をおかけすることもありました。
そこで、もっと適任の弁護士を迅速に紹介して中小企業のニーズに的確に応えなければならないのではないか、ということで、東京弁護士会中小企業法律支援センターを創設し、コンシェルジュ制度を設けたのです。

中小企業法律支援センターの相談の流れ。PDFは公式サイトへ。

もっとも、この制度は、あくまで中小企業からのご相談ありきの応答策に過ぎません。
世の中には「弁護士なんて裁判になるまで必要ないよね」とお考えの方々がまだまだ多いです。そういう方々にとっての弁護士は敷居の高い存在ですから、自ら弁護士にアプローチすることはありません。
そこで、弁護士側から「私たちの敷居は高くありませんよ。ちょっとしたことでもご相談いただいて結構ですよ」というアウトリーチ活動・広報活動が必要になるわけです。
その広報活動の一環として、私たちはポケ弁を、弁護士が中小企業の方々にとって支えとなる存在であること、また、その敷居は決して高くはなく気軽に相談できる存在であること、を知っていただくツールである、と位置付けています。

多くの法律事務所がホームページ等で独自にさまざまな記事を配信していますが、これまで弁護士会として積極的にそのような発信をしたことはありませんでした。
ですから、東京弁護士会のお墨付きで、ポケ弁で弁護士の署名記事を配信し、あるいはコンシェルジュを通じて精通弁護士への相談に繋ぐという取り組みは、従来より一歩踏み込んだ形で中小企業に寄り添うものであるといえます。質の高い、安心して接してもらえる情報提供こそが中小企業のニーズに叶う、と私たちは考えています。

 

ポケ弁誕生まで

実は、最初から中小企業を対象とするアプリを開発していたわけではなかったそうだ。
新規事業ならではの紆余曲折につき、安井弁護士が語って下さった。

まず、弁護士会の活動を市民の皆様に知っていただくための広報ツールの1つとして、アプリが適しているのでは、という案が出ました。
当初はその案に沿って開発が進んでいたのですが、市民全般が対象となると、コンテンツが漠然となってしまい何のアプリかよくわからない、という悩みが生じたのです。
そこで、目的・対象を絞るべきだ、という意見の下、中小企業支援に特化したのがポケ弁というわけです。中小企業支援に特化した理由は2つあります。

1つ目は、2008年に日弁連が実施した「中小企業の弁護士ニーズ全国調査報告書」によると、中小企業の経営者が、抱えている法的課題をそれと認識していないケースが多かったということです。
契約書のチェックなどの典型的な弁護士への相談事項であっても、2割程しか法的な課題と認識していないというのが現実でした。
2つ目は、時世柄、ビジネス情報の収集にアプリを利用したいという中小企業の経営者が多いとのアンケート結果があったことです。
ちょうどさまざまなキュレーションアプリが流行り始めた頃でもあり、そのような要望が多かったのだと思います。
これらの事情から、中小企業の方々をメインターゲットとし、その支援に特化することに決めました。

 

弁護士としての使命感

60人にも及ぶという弁護士チームの執筆、14人体制の記事審査、私たちのようなメディアへの広報活動。これらのアプリ運営に関わる全てが、報酬の発生しないボランティアだという。
多忙な執務の合間を縫ってまで、ボランティアとしての中小企業支援に取り組む熱源は何なのか。田島弁護士は力を込めて語った。

中小企業が日本の経済そのものだから、です。
事業承継ができない、後継者がいないという日本の中小企業が海外に技術を売却して廃業する、こんなことを繰り返していては日本の経済は凋落の一途を辿ってしまいます。そんなことがあってはなりません。
日本の経済が立ち行くためには、その大多数を占める中小企業が立ち行かねばならない。それを支えるのが弁護士であるという使命感が私の熱源です。

センターの運営を担当している関弁護士はこう語る。

記事を配信する、情報を発信するというのは、いわば啓蒙活動です。
情報を受けた中小企業の方々に「なるほど、こういう点が法的な問題になりうるんだな」と事前に気づいていただくのが最初のステップです。そして、もしその問題が顕在化したら、私たち弁護士に気軽に相談していただく、これが次のステップです。
おかげさまでポケ弁のダウンロード数は右肩上がりです。需要はまだまだあると思いますので、地道に啓蒙に取り組んでいきます。
多くの中小企業の皆様にこのアプリをダウンロードしていただき、中小企業をお支えしたいという我々の思いをお届けできればうれしく思います。

 

編集後記

会社が法的なトラブルに巻き込まれるのを予防すること、法的リスクを事前に回避・緩和する策を講じることを「予防法務」という。

風邪を引いて発熱して辛くなってから病院に行くよりも、手洗い・うがいやマスクで予防策を採る方が楽であるのと同様、会社に法的トラブルが発生した後の処理に奔走するよりは、それを予防しておくことの方が、特に起業家にとっては遥かに負担が少ない。
どういうことをしたら(しなかったら)会社が「風邪を引く」のか、について軽く予備知識を持っておくためだけでも、「ポケ弁」はスマホにインストールしておきたい。

アプリの向こうには、ポケットには、熱意溢れる弁護士がいつもいてくれる。

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