【起業インタビュー 第5回】「もっと風景を楽しんでほしい」現代の飛行石?Compass Stone(コンパス ストーン)生みの親からのメッセージ|起業サプリジャーナル

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【起業インタビュー 第5回】「もっと風景を楽しんでほしい」現代の飛行石?Compass Stone(コンパス ストーン)生みの親からのメッセージ

公開日:2016.12.28

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「この石を見たときに『もっと風景を楽しんでほしい』という私たちのメッセージを思い出していただければうれしいですね」

都心の瀟洒な街を背に、素朴な名残のある起業家は、小さな石のようなものを手にしながらそう語った。

 

森 圭司(Mori Keiji)氏
1978年長崎県生まれ。 特許事務所にて特許・商標・著作権など知財関連の経験を積み、インターネット企業の法務部門でグループ全体の知財業務を実施。その後、コンサルティングファームにてメーカーやIT企業の組織開発、マネジメント革新に従事する。 2016年に株式会社YEAAHを設立。同社代表取締役に就任。

 

最先端なのにどこか懐かしいナビゲーションデバイス

ひょんな縁から「おもしろいプロダクトを作っている起業家がいるので話を聞いてみませんか?」というお誘いをいただき、私たち起業ジャーナル編集部は、森氏にインタビューさせていただくことになった。

森氏の運営する株式会社YEAAHが世に出そうとしているプロダクトの名は、Compass Stone(コンパス ストーン)。手のひらサイズで、白い石のような形状をしている。というより、ただのきれいな石にしか見えないのだが、これは…?

 

機能

Compass Stone(コンパス ストーン)の機能を簡潔に説明すると「BLE技術とLEDライトを用いたナビゲーションデバイス」ということになる。専用のスマートフォンアプリで目的地を設定すると、内蔵されている12個のLEDライトが目的地の方向を示し続けて到達を導く、というのだ。

「スマホに入ってる地図アプリと何が違うのだろう?」という私の懐疑は、Compass Stone製作のコンセプトを聞いて氷解することになる。

 

製作のコンセプト

初めての場所を訪れるって、貴重な体験のひとつだと思うんです。もしかしたらそこで、自分の人生を変えるかもしれない、転機となるかもしれない何かを目にするかもしれませんよね?

20代後半の頃、失意に沈んでいた私は北海道へ一人旅に出ました。澄み渡った摩周湖や、薄曇りの隙間から射す光の筋に照らされた釧路湿原を眺めて、「こんな風景が日本にもあったんだ」とすごく感動したのを今でも覚えています。

旅行から帰った後、私は変わりました。興味のあることを真剣に調べたり、自分の思いをブログで発信したり、数十人規模の飲み会を取り仕切ったり。北海道のあの印象的な風景に触れたことが自分の転機になったのです。

旅行先や非日常の世界だけでなく、日常の街並みにも、誰かの人生を変えるかもしれない、転機となるかもしれない風景があると私は思っています。でも、今の人は風景を見ないですよね?駅のホームでも電車内でも、時にはレストランで誰かと食事をする時でさえ、視線の先にあるのはスマートフォンの画面です。
そして、歩いている時は地図アプリとにらめっこです。街の風景には目もくれず、一目散に目的地を目指しますよね?もったいないなあ、大事な何かを見逃しているんじゃないかなあ、とずっと思っていました。

ですから、Compass Stoneは、目的地の方向を光で案内するのみです。目的地までの道筋を具体的に提示する機能は搭載しません。目的地までの想定所要時間もお知らせしません。地図アプリを凝視する時間を、風景を楽しむ時間に替えてほしいからです。

目的地まで一直線、がすべてではありません。寄り道したって、裏路地に迷い込んだっていいじゃないですか。そこで思いもよらない新たな発見があるかもしれないじゃないですか。今の人は、時間や機械に縛られ過ぎているんじゃないかと思います。

Compass Stoneは、人を縛るためのツールではありません。むしろ、「示された最短ルートで行かなければならない」という義務感や圧迫感のようなものから人を解放するためのツールです。この石を見たときに、「もっと風景を楽しんでほしい」という私たちのメッセージを思い出していただければうれしいですね。

 

地上波で放映すると今なお高視聴率を叩き出す名作アニメ「天空の城ラピュタ」の中に、飛行石というアイテムが登場する。飛行石には「モノを宙に浮かせる」機能の他に、「光を放ってラピュタの方向を指し示す」という機能がある。
もしかしたらCompass Stoneは現代の飛行石なのかもしれない。シンプルな外観もあいまって、BLE技術やLEDライトを駆使した最先端のプロダクトでありながらどこか懐かしい気がするのは、古き良きアニメを彷彿とさせるからなのだろう。

 

Compass Stoneを生んだ土壌

企業のコンセプト

特徴的な名前、株式会社YEAAH(ヤー)の由来について伺った。

「いい人生とは何か?」これが私たちの会社からの問いかけです。
もちろん、答えは人それぞれだと思います。毎日が楽しいこと、やりたいことを全部やれること、家族と一緒に平穏に暮らすこと…いろいろあるでしょう。

私たちの答えは「死ぬ瞬間に『生まれてよかった』と思える人生がいい人生だ」、です。
では、そういう人生を送るためには何が必要なのか。人生を終える間際に走馬灯のように巡ると言われている思い出、つまり印象的な体験が必要だと思っています。

このような印象的な体験を私たちは「YEAAH体験」と定義付けました。この「YEAAH体験」を実現・増幅・記憶するための事業をやっていく、というのが私たちの会社のコンセプトです。Compass Stoneは、「YEAAH体験」を実現するためのプロダクトという位置づけですね。

 

「Project We Love」

もう1つ特徴的なのは、米国の大手クラウドファンディングKickstarterに出品しているという点だ。国内ではなくなぜ海外なのか?

自分のプロダクトを全世界に向けて売り出したい、という強い思い入れがありました。
自分の交友関係などを考えると、国内のクラウドファンディングで支援を募る方がリスクが少ないかもしれません。ですが、そもそもは、やりたいことをやりたいようにやるために独立起業したのですから、やりたいことをやるという選択をしました。リスクは承知の上です(笑)

日本人(日本企業)がKickstarterに出品するためには、海外拠点があること、海外銀行口座を有すること等、なかなか高いハードルがあるそうだ。
そのハードルをインキュベーターと連携することでクリアし、なおかつプロダクトの審査も通過した「Compass Stone Project」は、先日Kickstarterの「Project We Love」(運営元直々の推薦)を得たことも、ここで特筆しておきたい。

サムネイル画像左下に「Project We Love」との表記が。Kickstarterサイトより。

 

Compass Stoneの先にあるもの

私たちがKickstarterで成功して収益を上げることができるようになれば、ハードウェアスタートアップの新しいモデルケースになれるのではないか、このプロジェクトの成否次第で、今後の起業に至るマイルストーンや起業支援の機運がガラッと変わるんじゃないか。そういう思いも持っています。

最近、日本のメーカーは元気がないですよね?ですから、Compass Stoneが日本の製造業の復権のきっかけになればいいな、と思っています。
それともう1つ、地方の活性化につながればいいな、とも思ってるんです。WEB系の仕事というのはやはり最先端の都会で日々直に触れていないとすぐに置いて行かれるような気がするのですが、プロダクトを創り出す仕事は地方でも十分成立すると私は考えています。ですので、Compass Stoneを機に、日本各地から続々とハードウェアスタートアップが出てくればいいですね。

 

編集部後記

携帯電話の登場で、誰かの電話番号を覚えるという習慣を失くした。
家庭用プリンターの高機能化により、誰かの住所を手や指が覚えるということが無くなった。
カーナビの流通に伴い、道を全く覚えなくなった。
ICカードの普及によって、電車代がいくらかかるのかわからなくなった。

そして地図アプリの台頭は、視界から風景を消した。

 

一度手にした便利さを放棄するのは難しいし、その必要はないかもしれない。
だが、ハイテク機器への依存度が高ければ高いほど、それを失った時の不便さは増大する。

とりあえず地図アプリの起動はなるべく控えて、街の色や音、匂いをもっと意識してみようと思う。街並みに潜んでいるかもしれない大事な何かを見つけるために。

 

この記事に関連するサイト

Compass Stone オフィシャルサイト
Compass Stone 感性を豊かにするポケットナビゲーションデバイス

Kickstarter Project page (English)
Compass Stone: A Pocket Navigator for Mindful People

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